夢遊病者、ネットカフェに入る
実は初めてのネットカフェ。
促されるまま個室へ。
陰気な奴らがいっぱい居るのかと思いきやそうでもない。若い女性客も何人かいる。コーヒーを啜りながら「夢遊病」と検索してみる。
「原因の多くはストレス」の連呼。
もう絶対奴のせいでしかない。しかし、ここで同じように考えてしまったら無になれない。無になるために入店したのだ。私は落ち着かせるために深呼吸をした。座禅を組み、深呼吸をする。怒りがスッと消えていく。
アロマでもあれば雰囲気出るな。明日にでも買いに行こう。時間は充分ある。
座禅を組んで深呼吸をして無になって、いつの間にか気を失っていた。
明くる日。まだ夜が明けないうちに、私はベッドから起きた。
ベッド?
そう。私はアパートに戻ってきていた。衣服もベッドもぬるぬるしていた。慌てて冷蔵庫を見る。
綺麗だった。
ではこのぬるぬるは?
私は暫く呆けて、昨日の記憶を辿った。
確かにネットカフェに入ったのは覚えている。無になろうと座禅を組んで...
ダメだ。思い出せない。
アパートの外は静かなもので、この前のような井戸端会議はしていないようだった。まだ、アパートの住人は外に出ていない。一応覗き穴から確認する。聞き耳を立てるが静かなものだ。どうやら遅くに帰ってきたらしかった。ところで今何時なのだと時計を見る。冬はとかく時間感覚が無くなる。時計の針は午前4時を過ぎたところだった。
私はぬるぬるになった服を洗濯機に突っ込み運転ボタンを押した。部屋に戻りベッドの敷物や掛け布団のぬるぬるを取ろうとした時、愕然とした。
ぬるぬるの正体は真っ赤な血だったのだ。