逃亡先
逃亡先の大型スーパーでは、毎日のように試食が並ぶ。ここを選んだのは、もし私が無意識に放浪するゾンビのごとく彷徨った場合、最悪、試食していたと言えばなんとかなるかと思った。あと、単純に小腹が空けば試食で我慢できるからだ。駐車場の位置も端の方に停め、なるべく目立たぬようにする。夕方の4時を回っていた。朝起きてから何も口に入れてないので、少々小腹が空いた。実際には夜中食べてるのだろうが、無意識だけに食べた感じはしないのだ。試食コーナーへ向かう。
各部署毎に試食がある。入ってすぐの青果コーナーではみかんの試食がある。少し行くと肉のコーナーでは実演販売をしている。豚肉とニンニクの芽の炒め物だ。白飯が欲しくなる。新米の試食等ないか探したが残念ながら無かった。
お惣菜コーナーとパンコーナーでは、各々新作の味見が楽しめますってサンプルがあったので食べる。
一切れずつでは、まるで満腹にならなかったのでもう一週することに。
何も買わずに帰車。
時間を持て余すので、スーパー巡りをしようと思い付き行動することにした。
副都心に位置する居住地は、大型スーパーの乱立する地域に近い。近くのスーパーを巡るにも車で2~3分くらいか。何といっても駐車場がやたらでかい。駐車場から出る方が時間がかかったりする。歩いていけば良いのだが、買い出しした荷物が重いとか多いとか次の場所の方がメインだとか色々理由を付けて結局皆歩かないので、皆歩かないのに自分だけ損してるようで嫌なので歩かない。結果、スーパーの出入り口はいつも込み合っている。
そんな激烈に混んでいるスーパーに割り込み、闊達に歩く私は試食コーナーに向かった。
やはりこの時期はみかんである。こちらではMサイズ、さっきのとこはLサイズだった。好みはMサイズだ。次の試食はウインナー。よくあるやつだ。つま楊枝いっぱいに刺して頬張る。この背徳感。パンコーナーでは、パン屋がテナントとして入っているので、焼きたてのパンが試食できる。しかし、店員に感想を求められ買えばいいじゃないかとこちらの気持ちを分かろうともせず営業をかけてくるので苦手である。しかし、背に腹は変えられぬ。暫く様子を伺っていると数人がパン屋に入っていく。この流れに身を投じて私も中に入る。他の者が店員に捕まっている間、試食だけして脱出。見事焼き立てパンを試食することができた。天晴れと自分を褒めてあげたいと思った。