遠藤平吉、再び。
山下はまずネットカフェの防犯カメラ、顧客名簿、利用者を徹底的に洗った。その中で、ふと見覚えのある人物を発見した。
これは...?
盛岡~宮古間を快調に進み、遠藤の実家に着いた。表札は佐々木とある。遠藤平吉のイメージが強いが、戸籍上、佐々木史郎だったことを思い出す。
呼び鈴を鳴らす。
子供の声が聞こえる。
遠藤はどうやら家庭を持ったようだ。
はい?
出てきたのは白髪混じりではあるが、調書で見た遠藤平吉もとい佐々木史郎だった。
え...佐々木史郎さんですね?
危なく遠藤平吉と言うところだった。妻子ある男にその名はさすがに失礼だ。
はい。そうですが...
署までご同行願いたい。
はい?何故ですか?
とにかく
いや、納得いきません!理由を述べて下さい!
言う通りだ。さすがにそれでは失礼だ。
後藤は事のいきさつを説明する。
実は、10年前と同じような事件が起きまして...一応、お話を聞きたいと思いまして。
それなら妻と一緒でも構いませんか?私の行動の一切は妻と共にあるので。何か不都合があれば妻が私の行動を把握しています。
奥さんもですか?
遠藤の妻が何事かと奥から出てきた。警察だと分かると、遠藤の妻が自主的に同行するという。
お子さんは大丈夫ですか?
託児所がありますか?一家全員で夫の無実を証明して見せます!
勢いのある声だ。これは絶対的な信頼がある。そう感じた。
それでは、皆さんで。と言いたいのですが、車両人数をオーバーしてます。奥様方は自家用車で来て頂く形になりますが?
それでも行きます!
遠藤は良い伴侶と出会えたようだ。そして、ここまで信頼関係があると、立証するのは難しい。後藤は直感的にそう思った。
では、前の車両についてきて下さい。行き先はまず、宮古の警察署です。
15分ほどで宮古警察署に着いた。取調室は貸し切りにしてある。ここで本部と連携しながら事情聴取する旨を伝え、遠藤、嫁共々聴取することになった。
遠藤は、出所して1年で結婚。同時に息子をもうけている。でき婚というやつだが、家庭を大事にしているようだ。そうでなければ任意同行にわざわざ嫁まで自主的に来ることはない。
嫁の方の聴取も取り終えた。アリバイはない。彼らはここ3ヶ月ほど宮古から出ていない。仕事も自営業で2人で商店を経営して細々と暮らしていることが分かった。
その時、本部の山下から電話があった。どうにも見覚えのある人物を発見したという連絡だった。データで送られた防犯カメラ映像を佐々木史郎と嫁、後藤チームで見ることになった。
すると、ネットカフェを彷徨く男に焦点が当たった。
皆目を丸くした。
それは紛れもない、遠藤平吉だったのだ。