自棄
明くる日。
以前よりはマシだが、やはりぬるぬる気持ち悪くて起きる。夢遊病でも何でもいいが、せめて箸を使って欲しい。自分のことながら素手で喰うなと思う。
しかし、昨日より汚れていない。綺麗な状態ではある。今後も作り置きにしよう。そう思った。
月日は流れ2ヶ月。遂に私は発狂した。
めんどくさいことこの上ない。何故自分のために飯を作らねばならんのだ。調理師ではあるが、それは、好きな女の子に振る舞うためモテるためである。何を自分自身のために誰よりも気を遣った料理を毎日毎日作らねばいかんのか訳が分からない。
めんど。
一言キッチンに残し、私はどうにでもなれと寝た...
明くる日
何やら外が騒がしい。覗き穴から見てみる。しかし、何も見えない。どうやら向かい側ではないようだ。私は部屋に戻り、人前に出てもいい格好にしようと着替える。いつものようにぬるぬるである。手を洗い、顔を洗い、準備は整った。外に出ようとドアノブを掴んだ。
待てよ。
違和感と恐怖が私を包んだ。
私はキッチンに向かった。
冷蔵庫周りは綺麗であった。
中を覗く。やはり何も荒らされていない。
昨日は何も準備していない。夢遊病が治ったのか?いや、ぬるぬるしていた。では、あのぬるぬるの正体は?
...
最悪の事態が頭を駆け巡った。
そして、私の直感が外に出るなと言っている。
私はすぐに洗濯機にぬるぬるの部屋着を突っ込み洗った。
洗っている最中、外の騒ぎは少し静かに治まっているように思えた。
部屋に戻りベッドに横になろうとすると、そこにはまだぬるぬるがあった。マヨネーズとソースの匂い。若干の鰹節。たこ焼きかそれともお好み焼きか。この際食べものなどどうでも良い。それどころではない。
私は風呂場に行きざぶざぶと布団カバーを洗った。染みと匂いは若干残ったが目立つほどではない。ギリギリと絞り、ベランダに干す。洗濯機も終わり、すぐさま干す。
暫く窓を開け呆けていた。乾いた風が部屋に残った微かな臭いを消していくのを感じた。