表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/47

ネットカフェの夜

こりゃあひでぇな


くしゃくしゃ頭を掻きながら男はポツリと呟いた。

部屋の中は血塗れ。至るところに飛び散った血痕がある。おぞましい光景が相まって血の臭いが鼻を突く。男は部屋を後にした。


ネットカフェの店員が警察を呼び、たちまちのうちに駐車場は警察車両と野次馬でいっぱいになる。秋保ICに続く道路に面していて仙台副都心が近いとは言え、ここは山に近い。夜になれば人通りはおろか、車通りも寂しい田舎だ。そんなところで凄惨な事件現場があれば噂も広まりやすい。野次馬も警察も、どこからともなく押し寄せるようにそこに集まった。有名アーティストのライヴ会場のように押しくらまんじゅう状態で、規制線を張るにも思うようにいってないようだ。


現場検証を終え警察がネットカフェの店員と何やら話している。そしてまた店内に入っていった。

ライヴ会場と化した駐車場では、マスコミ関係者が動き回っている。写りが良い場所を探しているのかカメラや折り畳みのステップ等を携えて各局派遣されてきているようだ。こんな現場でもカメラに写りたがるピース小僧は、お構いなしにカメラの前に前にと陣取ろうとする。それが更にライヴ会場の熱気を煽った。


規制線から救急車両迄の道がブルーシートで覆われた時だった。一瞬にしてそこに視線が集まる。隣にいる他人の生唾を飲む音が聞こえてきそうな程の静寂。その静寂こそ、その場にいた誰もが待ち焦がれた瞬間のように思える程、皆の鼓動は爆発しそうな程に踊っていた。


救急車両が静寂に包まれた空間を突き破りその場を出ていく。と同時に各々皆の口が開き熱気が再加熱していく。まるでライヴ会場でアンコールを希望するかのように。

熱気は、救急車両の音が静かになっていくと共に離散していった。駐車場からは野次馬が引き、警察車両の真っ赤なランプが闇に動いていたが、それもやがて消えていった。


各局どこでも臨時ニュースとして一報を報じた。マスコミ関係者は近年、テレビやラジオでの稼ぎは少なく、躍起になってこのニュースを地上波で伝えていく。ネットニュースにもなるが、ネットではすぐに有名人の速報等に飲み込まれていく。こういうニュースをじっくりやるのは地上波の方が良いという判断だったのだろう。予想通り、この凄惨な事件はネットニュースでは一時的なトレンドにもならず消えていった。と同時に、地上波のニュースでも進展を逐一報道することはなくなり、夕方には地元のニュース扱いになっていった。

人々の記憶に一時的な熱気を帯びさせたこのニュースは、現場にいた野次馬と警察、マスコミ各社の人々の限られた熱気へと沈静化していった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ