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謎の男

9話 謎の男


「いててっ」


 いったい何段落ちたんだ。

 男女の階段落ちって、まさか!

 ボクは左手で股間を。


 有る。


 入れかわってはいない。


 男女の階段落ち、映画「転校生」で男女の心が入れ替わるというネタだが。

 さすがにソレは、ないようだ。


 あっ、マコトさん。

 右手にあのちょっと冷たくて柔らかな手の感触。

 ボクたちは手をつないだまま落ちたんだ。


 少し体のあっちこっちが痛いがドコにも激しい痛みはない。


 なんとなく落ちたとき、マコトさんがボクを抱き寄せてたような。

 マコトさんはボクをかばって落ちた。


 おあっ、またスカートがめくれてる。


 ボクは起きて、彼女のスカートを直した。


「ん、ん〜ん。枯木くん……大丈夫ぅ」


 倒れたまま彼女はボクを見た。


 美しい。


 石段落ちして、枯れ葉や土で汚れてるのに彼女のボクを見る顔。

 ボクには彼女を天使のように美しく見えた。


「大丈夫です。マコトさんは?」


 上半身を起こした彼女は、肩や腕を触り、足を上げた。


「大丈夫みたい。あの玉のおかげかしら……わたし玉に守ってって……」


 立ち上がった彼女は、格闘中のブルース・リーのようにとんとんと跳ねて。


「なんともないわ。よっ!」


 横蹴りをはなって。そのまま軸足をまわしてボクの方に。

 あのパンツ見えてるんですけど。


「師匠のコスモフィストのおかげみたいね。なんともないわ。枯木くんは?」


「ボクは少し身体のあっちこっちが痛いですけど大丈夫です。かすり傷程度だと。マコトさんのおかげですよ……」


「ちゃんと目の前に枯木くんが居る」


 マコトさんは、自分の胸を掴んで。


「入れかわりは、ないわね」


 マコトさんも「転校生」を。


「それもナイようで、なにより」


「枯木くん『転校生』知ってるのね。わたし、お父さんと何度も見てさぁわたしも一度誰かと入れかわりたいなぁとか小学生の頃に。ちなみにアレは原作は小学生なのよね」


「ボクみたいのはダメでしょ。入れかわるのなら猪馬みたいな男らしいのが」


「そうかなぁ〜わたしは枯木くんでもイイわ」


 でも、でもイイ、なんて嬉しいコトを言ってくれるんだマコトさん。

 よく考えてみたら、もし猪馬がマコトさんと入れかわったら。

 奴は変なことしそうだ。絶対あってはならない。ないとは思うが。


「ねえ、ところでココ何処かしら?」


 言われるまで、気にしてなかった寺への石段から落ちたのなら、ココは森の中だが違う。


 目の前には山が見えるけど。

 ここはドコの原っぱ?


「もしかしてあの山、富士山じゃない」

「もしかしなくても富士山だよね……あの山」


 なんでボクら。こんなトコに。


「うっ、君たちは?」


 原っぱからヘルメットをかぶった男が顔を出した。


「え、と言われてもボクらは、ただの高校生ですとしか」


「高校生? 君たちは人間だよな」


「そうですけど……」


 ヘルメットをかぶった男の全身が見えた。


 ヘルメットと、言ってもゴーグルを上げてて、バイク用のでも工事現場のでもない。


 見ようによってはカッコイイ。

 ウルトラマンシリーズのなんとか隊のような、ヘルメット。初めて見たタイプだ。

 服装も兵隊さんのようなグリーンではなく身体にフィットしたロボットアニメのスーツのような。オレンジ色が主色になってる。

 初代ウルトラマンに出てくる科学特捜隊みたいにも見えるが、帰りマンのМATマットに近い黒の部分も。

 色は違うがウルトラ警備隊のソレにも見える。

 素材がイマイチわからないけど、まあカッコイイ制服だ。この人は何者だろう。

 サバゲーのコスプレイヤーかな?


「あの……わたしたちを人間かって、あなたは、なんなんです?」


「え、オレは見たとおりだ。知らないのか?」


「知りません? なんかのコスプレですか?」


「コスプレなんかじゃないよ本物だ」


「本物って……」


「ウチの隊もメジャーだと思ってたが、高校生が知らないのか、まだマイナーだなぁ。が、ウチは特殊部隊だからな、あまり知られない方がイイのかなぁ」


「特殊部隊? なんのです」


「本当にわからんのか? 怪獣退治のだよ」


「怪獣退治? 映画かドラマの撮影ですか?」


   ゴゴゴゴ


 飛行機の音?


「攻撃が始まる。助かるぞ君たち」


 なんなんだ。助かるって、うわぁなんだアレは。


「アレはナニ? おじさん!」


 富士山の横からサイコロのような形をした生き物? が現れた。

 サイコロの数字にあたるところには口をつぼんだような、お尻の穴に似たモノが。


 サイコロのようなのの頭? に、爆撃が。

 奴の上の部分に何度も小さな爆発が見えた。

 ドコからか爆撃をうけているようだ。


 すると液体のような物のせいかサイコロのような怪物は溶け始めた。


「ヤロー。薬品が効いたようだ溶けていく。おあっ! オレが……」


 ウソだろ、目の前に居る男の姿が下から消え始めた。


「ナニが起こってるのかしら?」


「あのサイコロみたいなのが溶けて、男も同時に……あの人、助かるとか言ってたけど。ボクらはナニも変わらないよね」


「ええ……なんなのかしら。あっ頭が!」

「マコトさん、うっボクも……」 


 目の前が縦回転して、気持ち悪くなり思わず吐いてしまった。


「ウゲッロロロ」


「大丈夫? 枯木くん……」


「ああ、大丈夫です……。マコトさんは?」

「わたしはなんともないわ……でも、ここは何処かしら……なんとなくわからなくもないけど。来たことない? ココ」


「え、あたりを見まわすと、ここは街中」


 ボクは街中の歩道で吐いてたのか。


「たしかに見覚えのある……」


「ここは、新橋の駅前じゃない。ほらSlが見えるわ」


 なんだつてボクらはこんな場所に。さっきまで居たのは富士山が目の前にでーんと見えた原っぱだった。


 ボクらはとりあえず駅前のSL広場まで来ると、近くにあるビルの大型ビジョンからニュースが流れた。


〘国際防衛軍の怪獣溶解作戦が成功し、怪獣ジゲンは溶解し撃退に成功しました。ジゲンにより行方不明になっていた特殊部隊の隊員や一般市民の皆さんも元の世界に戻ってこれました……〙


「なに、このニュース? 怪獣撃退とか、真面目に言ってるよ。行方不明の特殊部隊の隊員って原っぱで会った人かしら」 

「怪獣ジゲンって、あの溶けた怪獣? 四次元怪獣ブルトンみたいな奴かなぁ……。あいつは。いつニュースになるほどの騒ぎが起きてたんだ?」

「四次元怪獣ブルトンってナニ? 枯木くん」


               つづく 

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