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一丈青真の父

3話 一丈青真の父


 なんだか、とうとつな展開に。


 放課後、下校時に一丈青さんが話してくれた。


「わたしプチ登山が趣味で軽い山歩きをするの。で、中三の卒業式後の春休みにある山の山道を歩いてたら、人が倒れててね。びっくりして。通報しようとしたら、その人が顔を上げ水をくれと。わたしはあわてて飲みかけのペットボトルの水を」


 って、そいつ一丈青さんと間接キッスじゃないか。

 羨ましい。


「お水あげたら、ナニか食べ物が欲しいというから、持ってた一口羊羹をその人に……」

「『海底人8823』みたいな話だね」


「ナニ? それ」


「あ、昔の特撮ヒーローなんだ海底人8823は、8823と書いてハヤブサと読むんだ。コレは特撮物が好きだった祖父に教わった昭和のヒーローなんだ。ヒーローが道に倒れてて少年が救うと……」


「そうなのね。わたし特撮ドラマはよくわからないのよ。父は映画の怪獣マニアなのでドラマ物は、観ないの……」


「あ、ゴメン。話の途中で」


「でね、その人は一口羊羹食べたら。ウソみたいに元気になって立ち上がって」


『おおきにお嬢さん、助かりました』


「って、よく見ると顔は日本人ばなれしてて外国人みたいだっの。でも言葉は日本語で……」

「その山は関西だったの?」

「いえ、関東よ。ソレも東京都」


『お礼に私の奥義を授けたいから、コレから毎週ココに来てくれまっか』


「って……」

「その男が自称宇宙人の拳法の師匠? なんで関西弁……」

「そうなの……。よく見ると服装も変だったの。上着は普通のヨレヨレコートだったんだけど、その下は上下つながった銀色の全身タイツで……」


「銀色の全身タイツ。ソレには赤い線の模様とか胸に丸いランプとかはなかった?」


「いえ、銀色一色よ。下腹部のモッコリが少し気になったけど……」


 と、一丈青さんが顔を赤らめて。


「それで一丈青さんは?」


「まあ近くの山だったから春休みは、ほぼ毎日。高校に入学してから毎週通ったわ」

「そんな得体のしれない男の所へですか、大丈夫だったんですか」

「まあ不安には思ったけど、ナニも。なぜか足が週末になると」

「妙な術でも使ったんですかね」

「それは、わからないけど。行くと拳法を真面目に教えてくれたわ。で、聞いたのあなたは何者かと。そしたらM87星雲のとある星から来た宇宙人だって」

「なんだかあやしい出身星ですね」

「わたし、基本宇宙人とか幽霊とか信じないのよ。だから、カレを自称宇宙人と」


「名前は?」

「コレも自称だから本名とは……。ゾフィー・マックスと」

「名前も出身星並みにウソっぽいなぁ〜」

「でも、カレが教えてくれた拳法の奥義だけは本物よ……」

「ええ、猪馬を倒したのを見てますから、ソレはわかります。一丈青さん、ボクもその自称宇宙人の師匠に会えませんか?」


「枯木くん、一丈青さんでなくてマコトでいいわよ」


「いや、ソレは……じゃマコトさんで」

「友だちなんだから“さん”は、いらないわよ。師匠に……。なんで会いたいの? この話、人に話したのはコレ、はじめてなんだけど」

「どうしてボクに?」

「なんでかな……枯木くんなら大丈夫な気がしたからかな……」


「なぜボクなら?」


「普通の人にこんな話したら、ウソだと思われるでしょ。それならまだ。頭のおかしいヤツだと思われるし」


 ボクは普通じゃないのかな?


「まあたしかに。ボクは一丈青さんの話だからウソとは思わない」

「あ、マコトでいいと。で、なんで師匠に」

「ボクも強くなりたいんだ……そしたら一丈青さんをあんな奴らから……」

「わたしは、もう強いから大丈夫よ。次の日曜に山に行くから師匠に聞いてみるね」



 それからある土曜日にボクは一丈青さんの家に招かれた。


 家に。

 彼氏でもないただのクラスメイトのボクをなぜ?

 

 彼女の家は大きな家で一階は一丈青建設という会社で二階から居住階で三階建て。

二階に上がり広い玄関に入り驚いたのは玄関にゴジラの木像が。

しかも2メートルはあるデカいのだ。


「その木造ゴジラは、父の手作りなの」

「コレはモスゴジですね」


「おお、やはり通だね。君が枯木君か。マコトから聞いてるよ」

 

 と、現れたのはマコトさんのお父さんだろうか。口髭を生やしパイプをくわえたダンディなおじさんだ。


「どうぞあがって」

 

 と、マコトさんがボクにスリッパを。


「ゴジラはモスゴジですね、なんかこの悪役ヅラがイイとウチの叔父も好きです。ボクはストーリーはイマイチですけど造形は『ゴジラ2000』のゴジラが好きなんです」

「やはり若いねぇ。アレもカッコイイからね」


 さすがマコトさんの怪獣師匠だ。話がわかる。


 玄関からあがると木造の立派なドアが。

 開けると応接間で棚の海底軍艦に目が。

 マンダが巻きついたあのシーンのモデル化したやつだ。

 ホビー雑誌で見たことがある。本物は初めてだ。


 ソレに見惚れてると。


「ソレも玄関のゴジラと同じ作者の作品だよ」

「え、これはガレージキットじゃないんですか!」


 コレも木造なのか、てっきり。


 マコトさんのお父さんの手作りとは思わなかった。凄い人だ。


「実はねぇ父が、あなたにソレを、玄関のゴジラを見せたくて招いたのよ」


「わざわざわるいね。私の周りにわかる者が娘くらいでね。寂しいんだよ」


 娘さんが居るだけマシだウチには。

 おっと、叔父さんが居た。


「あの、ウチの叔父がお父さんと同世代くらいでしてボクに特撮作品の面白さを教えてくれた人です。良かったら紹介しましょうか」


「そうか、同世代で。今度は一緒にきなさい。面白い話ができそうだな」


 その日は、三階にある家庭シアターでお父さんがお気に入りだという「シン・ゴジラ」を鑑賞。


 ボクもウチのブルーレイで何度も見てるけど大きなスクリーンで見ると迫力がちがう。

 

 ゴジラのシッポが東京湾に出現するあたりが好きだ。

 見終わり、このコトをお父さんに言うと。


「そうだね、あのシーンはシン・ゴジラの特長というか、象徴みたいなのをあらわしたいい登場シーンだ」



「今日の父はスゴく上機嫌だったわ。枯木くん良かったわねソレ」


 ボクはお父さんにお土産と、お父さんが木彫りで作った全ゴジラの内の『2000ゴジラ〙をくれた。


 ウチの家宝だよ、コレは。


 そして、先週の日曜日に師匠に会ってきたマコトさんが師匠に会わせてくれると明日の日曜に山に行くことに。


             つづく

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