ネーミング
19話 ネーミング
〘隊長、夕暮れとともにヤツは湖で動かなくなりました。作戦はどうします〙
「夜間でも準備が整い次第作戦は行う。早く住民を安心させたいからな」
〘了解!〙
秋は陽が落ちるのが早い。
避難所に一台のバイクが、森目純子のお兄さんたちだ。
「兄貴、どこ行ってたの心配したんだからね!」
「一度近くまで来たんだが、多摩湖の方にまた戻ったんだ。エクエスの怪獣攻防戦が大分撮れた」
「そういうの撮ってたの。あのさぁココに着いてから聞いたんだけど、白い巨人を知ってる?」
「ああ、知ってるなんてもんじゃない。見たし、撮影もした」
「兄貴スゴイ! 現れたのは短い時間だったし、ニュースとかでは画像は無かったのよね。あのとき、あたしたちバスの中で気絶してたからナニも見れなかったのよ。ね、枯木」
「え、ああボクは気がついてたけど、コトは上の道路で……ナニも見えなかった」
「そうなのか、あのバスの中に居たのは……」
「兄貴、画像見せてよ。見たいわ白い巨人!」
その動画はボクもはじめて見た。
あの一角怪獣と巨大化したマコトさんの闘いだ。コレがあのコスモフィスト。
威力はすごい。あの怪獣を数分でのした。
「あれ、一丈青さんは? まさかケガでも!」
「大丈夫よ、疲れたと寝てるだけよ彼女。ココに着いたときに一度おきたんだけど、また寝ちゃたの」
「オレたちも疲れたな森目。腹も減ったし」
「見て、この巨人は女よね。あたしのがオッパイ大きいけど」
「バーカ、何十メートルあると思ってんだ。巨人だぞ」
「違うわよバカ兄貴。あたしがこの巨人と同じくらいだったらよ」
「スタイルもイイしなぁ巨人は……お前と違うわ。なぁ橋本」
「まあたしかに、けど純子ちゃんの方がカワイイ。アレは顔が見えないしぃ……」
「え!」
「橋本ぉナニ突然告ってんだ……」
「いや、オレまえから森目の妹のコト……。今日さぁいろいろあって死んじまったらもう会えなくなると。だから言えるときに……怪獣出るの多くねぇ……ここんとこ。バイク、置いてくる」
「どうした橋本……」
うん、純子。
「純子、腹減った。何か食べられないか……おい」
「あ、あっちの避難所のボランティアの人に聞いてみて……兄貴、あの人は橋本なんてぇいうの?」
「橋本……。なんだっけ?」
〘多摩湖に落ちた隕石の中から現れた怪獣はタマトゲラという名に……〙
「また、まんまだな。ダサい名前ね。きっと名付けたの例の神居三平よ」
「でも、あんまり複雑にするとあとで思い出せないからな。あの先生の名前は、わかりやすい。なぁ橋本」
「だな……。でも、オレもダサい名だと思うタマトゲラ」
「あ、純子がさ、橋本の名前聞いてたぞ、なんだっけ?」
「兄貴……。あたしそんなコト言った?」
「え、オレの名前知らなかったの森目は」
「ミリタリーサークルで初対面のとき名前フルで言ってないよね」
「そうだっけ……。笑うなよ、オレのフルネームはな橋本万次郎だ」
「マンジロー!?」
「兄妹で笑うな。ジョン万次郎好きのジイちゃんがつけたんだ。そこのキミも笑わない」
「いや、ボクは笑っては……。万次郎はカッコイイですよ。ボクなんか枯木春樹で、ボッキーなんてあだ名つけられて迷惑してます」
あ、三人が笑ってる。
「アハハ枯木って……ボッキーなの」
むこうの森目と同じリアクションだ。
「そういや〜オレも森目の名前、読めない」
「ああ、よく言われるんだ橋本じゃないけど笑うなよ僕の名前は森目真久胤だ」
「マックイン? なんだそれ、マクドに入るのか? アハハ」
「笑うなと……。まあ僕ら世代じゃわからないけど。僕も祖母がつけた名だ。昔、外国人俳優でスティーブ・マックイーンという名の大スターがいて、祖母が大好きだったらしい」
「お兄さん、ボク知ってます『大脱走』とかに出てた俳優ですね」
「おおそうだ、よく知ってるな孤独くんだっけ」
「枯木です。ブロブというスライム系のモンスターが出る『マックイーンの絶対の危機』という映画があるんですよ」
「ソレは知らないなぁモンスター映画なの?」
「ええ、怪獣映画やモンスター映画が好きなんですボク」
「オタクだからね枯木は。兄貴の名が奇抜過ぎてたからか、二人目のあたしは平凡な名前なのよね。あたしもマリヤとかエリカとかが良かったなぁ」
「いやオレは日本的な純子がイイですけど」
「!……」
「橋本、一度告ったら全開だなぁ……あ、純子の返事はまだじゃないか。純子はどうなの橋本万次郎君は?」
「兄貴、ちゃかすなよ。あ、あたしは……ミリタリーオタクはイマイチ好かない。でも、バイク乗ってるミリオタならいいかな。ライダーは好きよ」
怪獣出現時の避難所でのひとときでした。
避難所の片隅で、毛布にくるまってるマコトさんの所へ。
ココは静かだ。
安心して眠ってるマコトさんの顔をボクは覗きこんだ。
目を閉じてると長いまつ毛が目立つというか、とある漫画のキャラクターみたいだ。
こんな可愛くて美しい人の寝顔をまじまじと見るなんて、生まれてきて初めてだ。
「あ、おはよう。枯木くん」
わっ突然目を覚ましたマコトさん。
「あの、まだ夜になったばかりだよ。おはようって」
「あ、そうなの……。よく寝たからつい。あの……今、わたしの顔を見てた?」
「あ、すいません。つい見とれちゃて。『眠れる森の美女』森じゃないけど。あまり寝顔が美しいので」
「やだな、枯木くんたら、お世辞言わないで」
「いや、お世辞なんてマコトさんは学校一番の美少女なんですよ」
「学校一番の美少女……。誰がそんなコトを……。あっ恥ずかしいヨダレが」
え、美少女がヨダレを。まつ毛ばかり見ていたから口の方は気が付かなかった。
マコトさんがヨダレをたらして寝てたなんて想像しがたい。
「ほんま、よく寝てたなマコちゃん」
「わあっいきなり現れますねゾフィーさん」
こいつもマコトさんの寝顔を見てたのか?
「わいは目立つさかいな隠れとった」
「ドコにです?」
「キミたちの見えないな世界にな」
「ゾフィーさん、そんな力があるのならボクらを元の世界に帰してくださいよ」
「自分たちとわいとはもともと作りが違うんでな、そう簡単には戻せないんよぉ。帰る途中また違う次元にでも落ちてしまったら二度と帰れなくなりまっせ。そうあせらずに少しはココで落ち着きしましょ」
「落ち着きって、ココでは、やたら怪獣ばかり現れて落ち着きませんよ」
「まあわかるけど、やれることやってしばらくこの世界で楽しんでちょ」
あっ消えた。
「楽しむって、いったいナニを」
「枯木くん、お腹すいたんだけどナニか食べる物ある?」
つづく




