一丈青真
1話 一丈青真
「あー良かった」
最新作ヒットのおかげでシリーズ第1作を劇場で観ることができたわ。
「『みなさん、さようなら』のアナウンサーの実況シーン。新作でも実況シーンあったけど、やはりアレには負けるわよねぇ〜純子ぉ?」
あれ、隣の席の純子ったら、寝てるじゃない。
「おい、おききろ。ナニ寝てるのよ。あんた観てなかったの?」
「ああ……終わったの?」
「ええ、出るよ。もうみんな出たわ」
朝の上映が終わり。
一緒に映画を観た親友の森目純子と、シネコンからちょっと歩いたファミレスに入った。
朝10時の上映でも時間は97分、予告もあったからちょうどお昼ね。
97分、怪獣映画は2時間は長くてだらけるのよね。長くてもギリ2時間かな。
なのに最近のは長いのよね、ハリウッド版とか長い。
「あんた1時間半の映画も耐えられなくて寝ちゃたの。なさけないわね」
「マコトねぇ、あの映画何回見てるの。あたしねあんたんチで10回は見せられてるのよ」
「まだ10回でしょ。ウチのプロジェクターなんて、今日の劇場の十分の一のスクリーンよ。迫力が違うじゃない、それをなぜ良しとして観ないの? もったいないじゃない」
「あたしは、あんたみたいな怪獣バカじゃないから……嫌いではないけど限度があるわよ。もう途中で爆睡したわぁストーリー単純だしぃ」
「あんた昨日寝てないの? 夜遊びはダメよもう若くないんだから……」
「まだ、高1よ!」
昼食とって、彼女の買い物に付き合うが。
ああ、でも良かった。
第1作目を大スクリーンで観れたということで興奮と満足でドコへ行ったかなんてわからなかったわ。けど、最後に大手中古書店に寄りDVDやブルーレイの出物がないかチェックしてたら。
映画は今では配信で、いつでも観れる時代だけど、わたしはソフトを持っていたい。
そして観たいときにすぐ観る。
ソレに映画はスクリーンよね。
「あつ、コレは!」
あ、先に取られた!
驚いた。
中古のブルーレイコーナーで見つけた「ゴジラ対ヘドラ」を取ると、隣に居たのが入学半年で学校一番の美少女と言われた一丈青真じゃないか!
そして、ブルーレイを取ったボクの手に触れた彼女の指先。
なんなんだ、この奇跡は。
「あ、コレを……」
「ああ……はい。欲しいなぁと思って」
え、学校1の美少女が「ゴジヘド」を。
欲しい?!
「あ、もしかして一丈青さんですよね」
もしかしなくても一丈青真だ。
そんなコトわかってるけど。
「え、わたしを知ってるの?」
ソレは、だって同じクラスですから。
「あのぉ……ボクのコト知りませんか?」
「ごめんなさい。誰かしら?」
ああ、同じクラスなのに知らないのか。しかも席は、あなたの列の一番後ろなんだけど。
ちなみに彼女は一番前。
「ボク、同じクラスの枯木春樹です」
「枯木……春樹。ごめんなさい、知らないわ。まだ入学したばかりだものね」
いえ、もう11月ですよ。
入学して、半年以上過ぎてますけど。
でも、覚えてもらってないとは、我ながら存在感なさすぎのボク。悲しい。
「あの、コレを」
「え、あなたが先に取ったのだから……」
「一丈青さんにゆずります。ボクDVD版を持ってるし」
「いいんですか……」
「一丈青さんも、観るんですねゴジラ。最新作がヒットしてアカデミー賞までとっちゃて。でも、コレはアレとは違いますよ」
「知ってますよ。一度見てますから、父とレイトショーで」
え、レイトショーで。劇場で見てるんだ。
いいなぁボクは自宅の29インチのテレビだ。
大きなスクリーンで観たのか羨ましい。
「父もコレ好きなんです。ゴジラが飛びますよね。アレ、カワイイですよね」
「あら、枯木じゃない」
隣のクラスの森目だ。
「純子とは違うクラスなのにカレを知ってるの?」
「幼なじみだからね。あたし転校したからね。高校が同じで、びっくりしちゃたわよ。アレ、もしかしてマコトと同じクラス?」
「モリジュンは、なんで一丈青さんと」
「同じ中学だったからよ」
「モリジュンって、あなたたち仲良かったのね」
「違うのそれほどは……。近所にね森かなえって子が居てね。あたしはモリジュンでそっちはモリカナって呼ばれてたのよ。あ、カレはね怪獣バカなんだよ……ああ、あんたと合うかもね」
「怪獣バカ……なの。この人」
「モリジュン、怪獣バカはやめてくれよ。ボクは小学生の頃から怪獣博士ちゃんとか怪獣オタクと……。バカよりはいい」
「あのね、一丈青真はこう見えて怪獣映画マニアなのよ」
学校1の美少女の一丈青真が、怪獣マニアだって!
つづく




