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社名
フロアの廊下の曲がり角で足を止める。モモさんの声だ。
「社名の由来ってなんでしたっけ?」
「アビステックコープトランジョン……技術の会社としての深い挑戦と革新、だったかな」
答えたのはモモさんを推薦した営業課長か。180cmをちょっと超えた長身にいかにも営業らしいもてそうなシルエット。
それをそこにいたもう一人が鼻で笑った。
「何言ってんすか。アビステックコープストランジョン……奈落から出現するゾンビによる混乱、でしょう!」
どっと笑いが起こった。
おどけた風にゾンビのジャエスチャーをする社員が、廊下のガラス壁に映っている。
「……」
俺は彼らの気配がなくなるまで、無言でその場に佇んでいた。