モモさんが採用資料を作っている
人事部の席で、PCに向かうモモさんが見える。
先日の社内勉強会を会社説明会の資料に反映しようとしているのかもしれない。
うーん、と目をすがめている。
顔に出さないようにしてるっぽいけど百面相だよ。
便所がてら立ち上がって、モモさんの後ろを通り過ぎざま、手元をちらりと見る。メモ用紙?
「っ……ちょ、それ」
「っあ!? 社長!?」
「もしかして、ウサギ?」
「〜〜〜〜、ヒトですっ」
耳まで真っ赤になって手元を隠そうとするモモさん。見ちゃったもんはもう遅い。
そこではっと気づく。
何か棒的なものを持って説明する図か。え、それつまりもしかして俺なの?
「……モモ」
「それ以上はダメです」
モモさんは珍しくむすっとしてそっぽを向いた。
†
モモさんの一日は長い。
朝一番に出社して、軽く清掃をしてから、手帳を開いてずっと何か考えている。
9時頃、出社してきた社員と挨拶を交わして打ち合わせ、昼食はいつも違う人と食べに行く。
午後はリモートの社員とずっとweb面談。
夕方デスクで決まって卵コッペパンを頬張り野菜ジュースを飲み干してから、黙々と作業を始める。
定時は18時、我が社は年俸制だけど、22時以降は手当がつく。とはいえ事前申請が必要なので、22時以降も会社に残ってる奴は滅多にいない。だからか、深夜のオフィスには毎日、申請義務のないモモさんだけが残っていた。