モモさんに社内勉強会を見せよう
スクリーンに映される「アビステックコープトランジョン」の社名。今日は隔月開催の社内勉強会だ。午後一日かけて実施される。営業含め全社員出席するルールだが、出張やら出向やらで参加人数は50%を超えるぐらい。さらに言えば案件次第でリモートワーク可のため、リアルの会議室にいるのは俺とモモさん、営業課長ほか数名。開発部長もリモートだ。
進行は初めに俺が挨拶、その後営業部の執行役員の話、有志社員の技術発表、最後に俺の総評。
モモさんはカメラの画角に入る社員数が少なすぎて、位置どりに首を捻っていた。なにせリモートメンバーもカメラオフでイニシャルのアイコンだけだから、モニターをギャラリービューしてみても盛り上がりがいまいち伝わらない。
一通りの進行が終わって、俺はぐっとのびをした。モモさんがいつものふんわり笑顔で歩いてくる。
「お疲れ様です」
「まあね。レベル低くてびっくりさせたかな?」
会議テーブルに肘をついて、浅く息を吐く。
二人目の発表は練習不足が見て取れたから、途中でやめさせた。なんで社会人相手にそんなこといちいち説教してやらないといけないんだ。
「……ここから変えていきましょう」
モモさんは何か言いたそうにしながらも、柔らかく笑って俺の背中をぽんぽんと叩いた。