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思い出したこと

着々と貯まるダンジョンポイントを、預金通帳を見るような気持ちで見つつ、何か目ぼしい物がないかと探していると、あるスキルが目に止まった。


「そういやさ」


「はい」


「心を読むってどうやんの」


「覚えておいででしたか」


今、≪読心魔法の指南書≫ってアイテム見て思い出したんだよ。


「そのような物がなくとも、マスターは人間よりも上位の存在ですので、大抵の生物の心を読むことはできますよ」


「へー」


お前の心も読めるんだっけ。


「はい、私はマスターより力量的には格上ですが、現在はあなたに仕えている形となりますので、私の心も読めるのです。訓練をいたしますか?」


する。


「かしこまりました」


(では、始めさせていただきますね)


あ?


(今、私の思考をマスターに流し込んでいます)


あー、確かに。何かそっちから来てる感覚するわ。


(掴むのが早いですね、マスター。本来はこのようなことはできないのですが、私が思考をわざと悟らせるようにしているのと、マスターの読心の素質によりなされています)


で、こっからどうするんだ。


(心を読むと言っても、ダンジョンマスターにとってはそんな大層なことではありません。今からこの繋いだ道を辿っていただくだけです。感覚をなぞってください。幼い頃、自転車のサドルを親に持ってもらい、補助輪なしで漕ぐ感覚を身に付けたことがあるでしょう)


そんなこともあったな。小学生に入ってからだったか?懐かしすぎる。


(そうしたら、後は実際に親の助けなしに漕ぐだけです。まぁ、いきなりは難しいでしょうし、多少手助けはいたしますよ)


「では、私は適当なことを考えておりますので、どうぞ読み取ってください」


とりあえず、スライムの方から放たれているような、真正面から浴びせられているような不思議な感覚に意識を集中させてみた。


(さて、何から話しましょうか。せっかくですので、魔法の話でもいたしましょう)


するすると滑り込むように、脳と心に思考が届く。


(先ほど、読心魔法とあったように、『◯◯魔法』と称される物は、その名の通り魔法です。体内に宿る魔力を使い、思うままに行使することができます)


言葉にすれば「丸々」と言われるであろう空白すらも知覚できる。


(対して、『◯◯の力』は神術と呼ばれております。祈る力、信仰心が強いほど、気分が良くなった神が力を与えてくださるのです)


反響したような声が、情報となって頭を巡る。


(後は…そうですね。私の話をしましょうか。私は分裂──分身することができるので、ダンジョンマスター一人につき一体配備しております。ダンジョン自体に干渉したり、ダンジョンモンスターとして戦うことは禁じられていますのでできません。それと──おや、)


言葉を分かりやすいように訂正したところまで読み取れたところで、スライムが口を開いた。


「流石マスターです、読心をもう覚えましたね」


「ヤ、まぁ、これはお前が読ませてくれてるからだろ」


「ふふ、何をおっしゃいますか」


普段無表情の美女が、珍しく愉快そうに、いたずらっぽくころころと笑った。



「途中から、手助けはしておりませんよ」



「…さっきの自転車の例えだけどさ」


「はい」


「親は『絶対手離さないから大丈夫』って言ってたのに、しばらく漕いで止まって後ろ振り向いたら、とっくに手離しててギャン泣きしたの思い出した」


「泣きますか?今のマスターも子供ですよ」


(なかみ)はおっさんだわ」

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