行き先を決めてからが遠足
ちょっと遠出ということで、勉強も兼ねて他のダンジョンに行くことになった。
「マスターのダンジョンは特殊ですので、そのまま真似ることはできませんが、どんなモンスターやトラップがあるのか、実際に目で見て学べるところは多いでしょう」
だそうだ。
(マスターのステータスでも通用するダンジョンをいくつか見繕っておきました)
(助かる)
さて、どれにしようか。表面上はダンジョン名鑑を開いてどこに行こうかトーチと話しているように見せつつ、心の中で作戦会議を始める。
(せっかくスヴェンがいるし、物理攻撃が通る相手が良いな。このアンデッドダンジョンはなしで)
(俺も一応魔法は使えるが…)
(リビングアーマーが魔法を使っているのを他の冒険者に見られたら面倒です)
(だよなぁ)
(へぇ、リビングアーマーって魔法使えねぇんだ)
(はい、マスター。物を浮かすなどのポルターガイストは可能ですが、基本は剣のみです)
フィーリングと前世のラノベ知識でモンスターを理解してるから、こっちでどういう扱いされてるか知らんのよな。それも含めての勉強か。
(じゃあ、うち一層目でネズミ使ってるし、獣系のダンジョンにしようかな)
(ここですね)
トーチが『弄牙のダンジョン』と書かれた部分を指差す。表面上の会話と心の中の会議が合流したのを確認して、俺は頷いた。
「良し、じゃあここにするか」
「うん!トラップが多いって注意書きがあるし、気を付けていこうね!」
ニコニコとした少年たちを微笑ましげに見守る周囲。ちなみに一部はいつ爆発するか分からん爆弾を見る目をしてる。俺らの冒険者登録を目撃したやつらだ。顔覚えたからな。
周囲をそれとなく窺ってたから、近付いてくる人間にはすぐ気付いた。ただ、俺らから話し掛けるのが癪だから無視しただけ。
「君たちもそこに行くの?」
無視した意図は伝わらなかったみたいだが。
(これ同行の申し出だよなぁ…)
(流れ的にそうだろうな)
(ですね。心も読んだので確定です)
(めんどくせぇ…)
「あぁ、ごめん。いきなり話し掛けて。僕はターフィ。斥候だよ」
聞いてもないのに男が自己紹介を始めてきた。せめて女だったらなぁ…
「普段ソロでやってるんだけど、ちょっと限界が来始めてさ。良かったら、僕と臨時でパーティー組んでくれないか?」
(断って良いやつ?)
(良いと思います)
「イヤです」
「ええ!?そんな…!僕、自分で言うのもなんだけど役に立つよ?ほら、"弄牙の"はトラップが多いって知ってるだろ?でもモンスターもいるから、トラップを回避するだけじゃ奥まで進めなくってさ。僕を助けると思って!ね?」
良く喋るやつだな。
(俺は賢いから知ってるんだ。この手のやつは断るのがめんどい)
(俺も賢いから知ってるんだが、この手の輩は了承以外の返事を聞かない)
(私も賢いので知っています。この手の者は了承が下るまで話を続けます)
「ワカリマシタ、ヨロシクオネガイシマス」
「ありがとう!君たちの名前は?」
せめてもの抵抗でカタコトにしたが、全く伝わらなかった。クソが。
「…エルガーです」
「トーチです」
「よろしく!エルガーくん、トーチくん!」
ウザくて耐えられなくなったらモンスターの餌にしよう。




