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吸血公女に拾われた  作者: bea_shigureni
第一章 忌み子の少女
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第3話 吸血鬼の結界

なろうで投稿している作品はカクヨムの書式に合わせているためルビなどの設定が反映されていない可能性があります。気になる方はカクヨムでの閲覧をお勧めします。

本日は初回記念で12話同時投稿です。

ぜひお楽しみください

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「屋敷に着いたようだ。今から一旦君を客室に案内する。着いてきてくれ」

「食糧庫でなくていいのですか?」

「……君はこの状況をたのしんでないか?」

「いえいえ気のせいですよ」


 日傘をさしながら馬車から出たクライムに私は屋敷の案内を受けることになった。すっかり威厳などなくなっていじりがいのあるおじさんになってしまったクライムに軽口を叩きながら私は彼に着いて行った。

 門をくぐると急に空気が変わったような気がした。屋敷までの道には孤児院よりも大きな敷地目一杯に庭が広がっていた。庭にはいろとりどりの花が咲いており、その中では私が孤児院で育てたことのある種類もあったのだが、おかしなことに咲く時期がバラバラなはずのそれらの花が私の前で咲き誇っていたのだ。


「この屋敷は吸血鬼の結界で覆われていてその中に存在するすべての動植物にそれぞれ最適な環境に調節されるようになっている。故に季節関係なくすべての植物の花を見ることができる」


 私の様子に気づいたクライムがそう説明する。試しに夏に咲く花に手を添えるとその周辺だけ暖かいように感じた。


「この結界の中ならば我らは昼間でも活動できる。と言うよりは結果以内は常に夜になっている。私もある程度耐性はあるがあまり長いこと日の下にいたくないからな」


 結界内が夜なのは伝承通り吸血鬼の弱点だかららしい。とはいえクライムは日傘を刺していたとはいえ普通に外出していたし、個人差というのは結構あるようだ。


 屋敷の入り口に辿り着くと大勢のメイドや執事が私たちを――いやクライムを出迎えた。私へ向けられる視線はよくてクライムの荷物程度のようだ。クライムはおそらく執事長と思われる男に話しかける。


「彼女が例の少女だ。役目が来るまでは客人として丁重に扱う。彼女を客室に案内してくれ」

「食糧庫で十分では?」

「ふふっ……ですってよ、クライム様」


 私と同じ考えであったクライムの執事に思わず笑ってしまった。そんな私をみて不思議そうな顔をする執事長にクライムは答える。


「出かける前にもいったはずだ。彼女は丁重に扱えと。今すぐ客室に案内しろ」

「しかし、急に言われましても客室の準備が――」

「黙れ」

 

 うだうだと言い訳を述べる執事長に雰囲気が一変したクライムが一括する。直接言われた執事長でけでなくその周囲のメイドたちまでもがクライムの気迫に臆してしまっていた。


「彼女が吸血鬼だろうと人間だろうと、稀血だろうと食糧だろうと、私が客人と言ったのなら客人なのだ。お前らは意見せずに客人としてもてなせばいいのだ」


 そう言われ、動けなくなってしまったメイドたちにクライムはさらに追撃する。


「聞こえなかったのか?客人をもてなせと言ったのだ。さっさと客室を準備してこい!!」

「……っ!!。し、失礼致します!」


 クライムの号令にメイドたちが一斉に動き出した。しばらくすると怒りを抑えたクライムが苦虫を噛み潰したような顔で私の方を向く。


「……どうやら指示がちゃんと伝わっていなかったようだ。少しここで待っていてくれ」

 

 そういうとクライムは屋敷の中へ入っていってしまった。私は屋敷の前で完全に放置されてしまった。


 **


 放置されてしまった私は仕方がないので屋敷の庭を散歩することにした。半球状の結界は半透明なのに完全に日の光を遮断し、暗闇に染まっている。そんな無地のキャンパスの上に一つの大きな満月が浮かんでおり、星々が散りばめられている。数々の季節の花で鮮やかに染まった庭を月明かりがあたりを照らし幻想的な光景を生み出している。

 結界内の様子を眺めていると、背後から物音がした。そちらの方に振り向くが視界には花々と結界の端しか見当たらない。気のせいだと思い目を逸らすも何やら視線を感じる。もう一度目を向けると《《結界外》》の森の中から赤い髪の少女がこちらをじっとみていた。こちらも見つめ返すと少女は木々の中へ消えていってしまう。気になって結界の方へ歩みを進めると――


「――あだっ」


 結界の外へ出ようとした瞬間、その結界に頭をぶつけて倒れてしまった。屋敷前で放置してクライムも不用心だなと思っていたがどうやら結界の外には出れないようだ。彼らにとってはこの結界は身を守るためのものだが、私にとっては檻の役割を果たすらしい。

 私は立ち上がって結界の外を見たが、もうすでにそこには少女がいなかった。


「ここにいたのか」


 いつの間にか背後にいたクライムが私に話しかける。先ほどまでとは違い不機嫌な様子はない。


「結界の外に何か気になることでもあったのか?」

「……女の子が」

「あぁまたあの子が抜けだしたのか」


 どうやら先ほどの少女にクライムは心当たりがあるようだ。


「また後で叱らないとな。教えてくれてありがとう」

「……えぇ」

「それでは行こう。客室の準備ができた」


 そう言ってクライムは屋敷の方へ歩き始める。私もその後絵をおうが時々気になって結界の外へ目を向けてしまう。先ほどの少女は何者なのか。ばぜ私を見ていたんか。なぜ私から逃げたのか。なぜ結界の外にいたのか。あの時、私の目には吸血鬼の特徴的な《《吸血鬼の特徴的な》》尖った耳《《尖った耳》》を持った少女は日傘すら刺さず《《日傘すら刺さず》》に外にいたように映ったのだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


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