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吸血公女に拾われた  作者: bea_shigureni
第2章 思い出のスコーン
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第16話 暫定《うさぎ》

「それで、どうするんですか?そのカーバンクル」

「どうしましょう」

「どうしましょうって、飼う気がないなら放せばいいじゃないですか」

「私もそう思ったのですが、なぜか逃げていかないのです」


 庭でこのうさぎを見つけた後、うさぎの方も私に気づいたのだが、逃げていく様子はなかった。特に害のある様子もなかったため、しばらく放置して庭仕事の道具の片付けなどを済ましていたところ、気づいたら後ろをついてきていた。


「懐かれたということですか?」

「懐かれるようなことしてないのですが……」

「髪とか目の色が似てますし仲間と思われているのでは?」


 メアリーにそう言われて近くの姿見を見る。確かに髪色は似てはいるが、私の目の色は暗めの赤なのに対し、うさぎのは鮮やかな赤。どちらかといえばフレアの目の方が似ている。


「それで、どうしますか?放せないとなれば後は飼うか食べるかですけど」

「食べるって……」

「カーバンクルの肉は高級品ですよ?」


 本当にカーバンクルはいろいろなことに使えるらしい。もしかして毛皮とかも売れるのだろうか?そんなことを考えていると窓の外、屋敷の裏手から物音がする。


「一度お嬢様に相談してみます」

「そうですね、ちょうど帰ってきたようですし」


 私たちはうさぎを連れて今度こそ帰ってきたであろうフレアの元へ向かった。


 **


「売ったらいいんじゃないの?毛皮にしろ剥製にしろ高値で売れるわよ?」

「お嬢様もその考えですか……」


 吸血鬼界ではカーバンクルは売り物という考えが一般だそうだ。本当に余すとこなく売れるらしい。


「どうしますか?売るなら私が町まで売りに行きますよ?」

「いや、やめておこうかな」

「いいのですか?」

「はい」


 私はもともとうさぎを売る気も食べる気も無いので断りを入れておく。というか自分に似てるって言われた手前で食べるとか考えられない。それに売るにしても私には使い道がない。


「私ってあと十年で食べられますし、お金あってもここから出られないので使えないです」

「そういえばそうでしたね」


 使い道がないのにお金を稼いでも意味がない。クライムに渡せば死ぬまでの間働かなくても良くなるかもしれないがそうなると逆にやることがなくなって暇になる。

 

「というわけでお嬢様、このうさぎ飼ってもいいですか」

「なんで私に聞くのよ。あなたが見つけたのだからあなたの好きにすればいいじゃない」

「許可とか必要ないのですか?」

「マシロ、旦那様もお嬢様もうさぎ一匹紛れ込んだくらいじゃ何も言いませんよ」


 元から私はこのうさぎを飼うつもりでいた。森へ返そうにも離れてくれないし、私も動物は好きだし。フレアにはもともと飼う許可を貰いにきた。

 

「あなたたちさっきからカーバンクルをうさぎ呼ばわりって、一応森の精霊って呼ばれるくらいには珍しい魔物なのよ?」

「だって全然見えませんもん」

「……まあ確かに」


 私の胸に抱かれているうさぎは外気が少し寒いのか時々身震いしながらも、いまだにグースカ眠っていた。


「まるで警戒心がないわ、よく今まで狩られなかったわね」

「普通なら数十メートル以内に他の生命体が近づいたら一目散に逃げるはずなのですが」

「安心し切ってますね……」


 私たち三人に囲まれていながらもうさぎは我が家かのようにくつろいでいる。


「マシロ、私は旦那様に報告に行ってまいりますので私たちの部屋に毛布でこの子のベットでも作ってあげてください」

「わかりました」

「で、このうさぎなんていうのよ」


 私たちに続き、うさぎ呼びを始めたフレアが私にたずねてくる。


「名前ですか?」

「そうよ。飼うなら名前が必要でしょう?」


 確かに動物を飼うなら名前が必要だろう。何がいいだろうか。


「なんなら私が決めてあげてもいいのよ?」

「……いえ、私が飼うのですから、責任を持って私が決めます」


 少し悩んでからなぜか少し目を輝かせているフレアに断りを入れた。やはり飼い主となる以上名前は自分でつけなければ。それを聞いたフレアは「そう、ならいいのよ」っといって少ししょんぼりとした様子で自室へと帰っていった。吸血の時もあれくらいおとなしかったらいいのに……


 **


「旦那様から許可をいただけました。注意点として応接室など他の貴族の目につく可能性がある場所と厨房には連れていかないようにとのことです」

「わかりました。ありがとうございます、メアリーさん」

「それと旦那様からうさぎにはこれをつけとけと首輪を」


 そう言ってメアリーが真っ赤な首輪を渡してきた。それを受け取った私はうさぎの首へそれをつける。首輪を装備したうさぎは完全に野生の牙など抜け落ちたように見える。


「それで、名前はどうするのですか?いつまでもうさぎと呼ぶ訳にはいかないでしょう?」

「うーん」


 先ほどフレアからも聞かれたことを聞かれる。いつまでもうさぎ呼ばわりでは確かに可哀想だ。まあ当の本人は気にしなさそうだが。


「……もう少し考えてみます」

「そうですね、急いで適当な名前をつけるのも失礼ですし」


 というわけでカーバンクル、暫定うさぎがペットになった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


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