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吸血公女に拾われた  作者: bea_shigureni
第2章 思い出のスコーン
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第14話 メイド修行、改めレシピ研究①

「では本日も講習を始めます。よろしくお願いします、マシロ」

「はい、よろしくお願いします、メアリーさん」


 今日はメアリーから料理を教わっている。四季の結界の修復が終わっていないので庭仕事がほとんどなく、空いた時間を当ててもらっているのだ。いつもアドバイスをくれるフレアは月花樹の元へ行っているので調理室での講習だ。

 以前までのフレアは毎日のように月下樹の元へ通っていたが、ここ最近は3から4日に一度ほどのペースまで落ちていた。そのため基本的にはフレアの部屋で裁縫の練習をするのだが、今日のようにフレアがいない日はメアリーに教わっている。


「では今日はお嬢様の好物のスコーンを作っていきます」

「よろしくお願いします」

「ではまずそちらのボウルに薄力粉、塩、砂糖、ベーキングパウダーを入れてください」


 メアリーの指示をもとに調理を開始していく。この二ヶ月でメアリーからはお茶の淹れ方を始め、メイドとしてやっていくための色々なことを教わってきた、その中でも料理は特に力を入れていた。


「お嬢様は料理が苦手ですからね。お嬢様に使えるなら特にできなければいけません」


 なんでもできるお嬢様も料理は苦手らしい。


「奥様から教わらなかったのですか?」

「そのようです、なんでも奥様はお嬢様にはまだ早いって台所には上がらせなかったようです」

「お嬢様は大事にされていたのですね」

「ええ、しかしそれからしばらくして、お嬢様に料理を教える前に奥様が亡くなってしまいました。使用人たちも奥様から教わったものはおらず、奥様の料理のレシピは誰も知らないのです」


 どうやらフレアの母、エアリスはフレアにレシピを伝える前になくなってしまったようだ。


「どこかにレシピ本とかないのですかね?」

「確かに奥様の性格ならレシピ本を残していそうですが、奥様の部屋を探してもそう言ったものは1つも出てこなかったのです」

「そうですか……」


 レシピ本は無く、レシピを知っている人もいない。そうなるとその味を再現することはできない。


「どうにかして奥様の味を再現できませんかね?」

「こればっかりはお嬢様に食べていただいて総当たりで試すしかありません。せっかくですし料理修行をする時はいろいろ試してみますか?」

「いいのですか?ただでさえお時間をもらっているのに」

「いいのです。四季の結界が治るまでは暇ですし」


 メアリーが笑みを浮かべて私にそう答える。しかし、あんまり迷惑をかけすぎるのも申し訳ないと思い断ろうとすると、私のなかの『何か』がそれを押し止める。

 

「……ではお願いできますか?」

「はい、一緒に頑張りましょう!」


 私のメイド修行は一転して、エアリスのレシピ探しへとなったのだ。


 **


「全然違うわ。というかまずい。なんかジャリジャリしてる」

「そこまでボコボコに言われなくても……」

「事実じゃないの」


 とりあえず1回目の挑戦を終えた私とメアリーは帰ってきたメアリーに試食をしてもらった。のだが私のスコーンはボコボコに酷評だった。


「それでは私の方はどうですか?」

「……美味しいけどこれも違うわね」

「一緒に作ったのになんで……」

「分量とか間違えたんじゃないの?」


 メアリーの作ったスコーンはエアリスのものとは違うものの、概ね好評だった。見た目は同じなのになぜこうも差が出てしまうのか、レシピも比較的簡単なのに……


「まあマシロはどうも全体的に不器用ですからね。裁縫は長年やってきたからかかろうじて実用可能な仕上がりですけど貴族令嬢が持つものとしたら落第もいいところですね」

「あと詰めが甘すぎるのよ、だから端の方で歪みが出るの。こんなもんでいいかじゃ無くて完璧を目指しなさい。私のメイドでしょう?」

「う……」


 孤児院じゃ使えればよかったんだよ。いきなりそんなレベルの高いこと求めないでほしい、全く。


「何?何か文句がありそうな顔だけど」

「いえ、なんのことやら」

「……お二人はなんがか仲良くなられましたね」

 

 どうやら顔に出ていたようでフレアから訝しまれてしまった。私が目を逸らし誤魔化しているとその様子を見ていたメアリーがそう一言呟いた。


「仲良く、ですか?」

「ええ、なんというか……お互いの腹の内を知っていると言いますか……互いに安心感を持って会話しているように見えます」

「……なんのことだか全然わからないわ」


 心当たりがありすぎることに、私とフレアは顔を赤くしてメアリーから目をそらす。あの嵐の日の出来事は互いに黒歴史となっていた。そのおかげで一歩前進できたのでもあるが。


「それにお嬢様先ほどおっしゃられたではありませんか」

「……?何よ?」

「マシロのことを《《私のメイド》》と、今までのお嬢様ならそんなこと絶対におっしゃらなか――」

「ッ!?もう部屋にもどるわ!あなた、スコーンもらっていくわよ!」

「お嬢様、私のスコーンは――」

「いらないわよそんなの!!」


 メアリーの指摘を受けたフレアは顔を赤くするとメアリーのスコーンをものすごい勢いでひったくると部屋へとかけていってしまった。そんなのとはひどい。


「そんなの、ですか。果たしてどう言う意味なんでしょうね」

「まずいってことに決まってますよ。と言うか直に言われましたし……それよりメアリーさん」

「なんですか?」

「このスコーンの処理をてつだ――」

「旦那様にお使いを頼まれていたのを忘れていました。失礼致します」


 ……やっぱまずいんじゃん、ひどい。


 私の朝食はしばらく失敗したスコーンになった。

 

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