やはり女が絡むと碌なことが起こらない
「だ、誰か助けてぇっ!!」
悲痛な女の叫び声、不良たちが女の腕を掴み離さない。しかし近くを通る者は誰も女の声や不良を気にも留めず、ただ流れる日常を繰り返すのみだった。
「うるせぇぞ女ァ!おいお前ら!さっさと女を車に乗せるんだよ!」
ただ1人、この男を除いては。
「おい‥‥‥放してやりな」
男は静かにそう言う。しかし不良は男の言葉などまるで聞こえないとばかりに力づくで女を車に乗せる。
「ふん‥‥‥!」
男は指示を出している不良の頭を掴み、地面に叩きつけた。アスファルトに赤い筋ができる。
「こいつ‥‥‥っっ!!」
不良が一斉に男に向かってくる。中には金属バットなどの武器を持っている者もいるが、それらを軽くいなし、流れるような動作で全員を気絶させる。
「おい、女、怪我はないか?」
女は恐怖からか声が出ないようであった。見たところ目立った傷はない、男は自分が羽織っていたコートを女にかけてやった。
「あ、ありがとうございます‥‥‥・よ、よかったら私のうちに来てください。大したものはありませんがおもてなし致します」
男は女の言葉に甘えて女の家に向かった。道すがら女は彼女の生い立ちや世間話をした。男は適当に頷いて相槌を打っていた。
そんなこんなで2人は女の家に着いた。部屋に入ると女は男の下半身を弄る。
「私には何もありませんので……この卑しい身体であなたにご奉仕致します……」
女は突然服を脱ぎ、呆気にとられている男をベッドに押し倒す。
蜜壺は溢れ、紅潮した女の熱が男に伝わるほど、互いは密着していた。
「やめろ!暑苦しい!礼なんざ気持ちで十分だ!」
蜜壺はそそり立つ男のそれを今にも飲み込まんとしていた。男は女を拒絶するが、身体の力が思うように入らず抵抗もままならない。
そこから先は男の記憶には朧気にしか残っていない。女は何かに取り憑かれたように淡々と動作を繰り返す、その姿は飢えた獣のようであった。出鱈目に内臓を抉られる感覚、血液にも似た何かがねっとりと妙に熱く身体を包む幻覚、不思議な不快感が最後まで拒絶を許さなかった。
「‥‥‥っつ、っ!」
意識を取り戻した男は、女の気が一瞬緩んだのを見逃さなかった。女を押しのけ、服を取り、外へと向かう。下着とズボンだけを身に着け、ドアを開ける。外の光がやけに眩しい。
しかし、女はすぐ後ろまで迫っていた。背後に黒い煌めきが一瞬だけ見え、直後、先ほどのものとは違う不快感が体の奥底からこみ上げ、意識を奪う。視界が瞬き、最後は深い闇の黒へと変わった。冷たく固い地面の感触だけが最後に残り、すぐに消えてしまった。
薄れゆく意識の中で男は、明日の夕ご飯どうしようかなぁと考えていたのであった。