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9.やってきたよ〜!

「お祖母様! いらしてたのね!」


 元気にやって来たのは、噂の姉だ。やっぱ走って来たんだ。後ろにいる付いてきた侍女が息を切らしているよ。

 僕の姉の、ラティア・エムリス。婚姻して、エムリス侯爵家に嫁いだ。すぐ近所なんだよ。姉の足だと、ドレスを着ていても10分もあれば余裕だよ。

 そんな姉に付いて行かなきゃならない侍女の方が大変だよ。ちょっと気の毒。


 姉は、ブロンドのサラサラロングヘアーに、藍色の瞳。弟の僕から見ても見掛けは超完璧な美女だ。ちょっと猫目気味の目尻の下に小さな泣きぼくろがあるんだ。それがまた、色気を醸し出している……と、男性貴族の間で静かな噂になっているらしい。知らないけど。

 僕は、実の姉だからね。唆られたりはしない。当然だよ。だって、性格も知っているし。いや、明るく活発で弟二人をこよなく可愛がってくれる良い姉だよ。



 で、先にも言った様にハイスペックなんだ。超がつく程にね。

 魔法だけでも、水属性魔法、風属性魔法、防御魔法、魔力感知、害意察知、時空間魔法、状態異常耐性、鑑定眼、精霊召喚と、凄いでしょ?

 本当、こっちはやってらんないよ。

 オマケに、超小型の刀剣を隠し持っていて投剣が得意なんだ。おっかない。

 姉も絶対に怒らせてはいけない。


「ラティ、久しぶりだわ。元気そうね」

「はい! お祖母様。毎日が幸せです!」


 はいはい。そりゃ、良かったよねー。僕は婚約破棄されちゃったけどね〜。


「あら、テテ。何か言いたそうね」

「姉上、そんな事はありません」


 大人しくしていよーっと。


「ラティ、聖女候補の現状は知っているかしら?」

「いいえ、お母様。今の家は情報に疎くて。何かありましたか?」


 姉の旦那様、侯爵家嫡男は国立図書館の副館長をしている。

 司書から副館長になった。司書時代に知り合い、姉の初恋で姉から迫ったらしい。

 そりゃ、こんな物騒な事には縁がないよね。

 母が聖女候補の現状を姉に説明した。


「そうですか。動き出したのですね」

「そうね。それでラティ」

「はい、お祖母様」

「一緒に大聖堂へお祈りに行きましょう」

「はい、お祖母様。行きましょう!」


 何だ? 姉が妙にやる気だね。即答だね。


「幸せなんだけど、刺激がなくて。退屈していたのよ」


 意味不明。どんな刺激を求めてるんだよ。僕は、こんな刺激は御免だよ。


「お祖母様、私が鑑定で見れば良いのね?」

「そうよ。今、大聖堂の中がどうなっているのか知りたいの」

「分かりましたわ。いつ行きます?」


 乗り気な姉と、イケイケな祖母であっと言う間に早速明日にでも大聖堂に行く事に決まった。

 僕は行かないから好きにしてくれれば良いよ。もう一つパイ食べよう。激うま。


「テテ、あなたも行くのよ」

「んあッ? 姉上、僕もですか?」

「だって明日は学園もお休みじゃない」


 いや、そうだけど。僕が行く意味なくない?


「何言ってるの? テテの愛しいソフィア様を守るためじゃない!」


 な! な! 何を言ってんの!? この姉は!


「あ、姉上。僕はもう婚約破棄されましたから」

「あら、関係ないじゃない。婚約破棄も想定内なんでしょ? それに、婚約破棄されたからと言って気持ちがなくなる訳じゃないでしょう」


 まあ、その通りなんだけど。


「でも、僕が行っても何の役にもたちませんよ?」

「テテ、よく見ておくのよ。どんな状態になっているのかね」


 コ、コエ〜!!


「そうよ、テテ。あなたの大事な人を守る為にね」

「ばーちゃん、姉上。分かりました」


 と、言う事でね、俺も一緒に行く事になったんだ。




「これはこれは、マーシア侯爵夫人。お久しぶりでございます。ようこそお越し下さいました」

「司教様、お久しぶりです。ずっと領地におりますのでご無沙汰してしまいましたわ」

「今日はこちらのお邸に来られているのですか?」

「ええ。孫の顔が見たくなりましたのよ」

「それはそれは」

「ご無沙汰しております。司教様」

「こちらこそ、お久しぶりでございます。ラティア様。お式の際は本当にお綺麗でございました」

「まあ、有難うございます。今日は弟も連れて来ましたのよ」

「こんにちは。テティスです」

「こんにちは。ラティア様のお式の時にお見かけしました。ご姉弟よく似ておられます。皆様美男美女ですな」

「あ、有難うございます」


 えー、僕前髪で半分顔が見えてないよ? それで分かるの?


「今日はお祈りさせて頂きますわ」

「良いお心掛けでございます。どうぞ、ごゆっくりと」

「有難うございます」


 祖母と姉と一緒に大聖堂の主礼拝堂の奥にある説教壇の前まで進む。

 何人かの司教や司祭とすれ違う。

 ベンチ椅子に3人で並んで座り、お祈りをしている格好をとる。


「ラティ、どう?」


 祖母が小さな声で姉に聞いた。


「お祖母様、ここまでの人だけですが、9割ですわ」

「え……」

「テテ?」

「お祖母様、僕はまったく分かりませんでした」

「入口で対応した司教様もよ」


 マジかー!? どうなってんの!?


「問題は、大聖堂の人間だけじゃない、て事ね」

「はい、お祖母様」

「え? ばーちゃん、何? 分からない」

「テテ『ここまでの人』とラティが言ったでしょう?」

「え? え? まさか、お祈りに来ている人もですか?」

「そうよ、テテ」


 なんて事なの!? マジ、洗脳じゃない!!


「これはこれは、お珍しい。マーシア侯爵夫人ではありませんか」

「おや、グリード。いえ、アロガン大司教様」


 出たよ。出た出た。白髪混じりの茶色の髪に茶色の瞳。お腹でっぷりのおデブさん。定番の悪人、タヌキ親父って感じの大司教だ。

 例の聖女候補を何処からか連れて来た張本人だね。僕は、この大司教が苦手なんだ。聖女候補程ではないが、ちょっと気持ち悪い。


「あなたが大聖堂に来られるとは、珍しい事もあるもんです」

「今日は孫と一緒に来たのですよ。ブリタニア王国の平和を祈りにね」


 うぅわぁ〜! ばーちゃん直球じゃん!

 喧嘩売ってんの!? て、感じだよ。僕は小さくなっておこう。僕はいない。僕は今此処にはいない。お願い、僕には振らないでー!!


「おや、それこそお珍しい。あなたは、祈るよりも実力行使かと思っておりました」


 うわ、ニヤニヤしてるよ。マジ、無理。僕は無理!


「もう、そんな歳ではありませんわ。そっちは息子や孫達に譲りましたのよ」


 いや、僕は譲られてないからね。あー、帰りたいー!



へなちょこキャラの主人公、慣れて頂けましたでしょうか?時々、心の中で毒を吐いてます。

頑張れよー!と、思って下さる方は是非、ブクマと評価をお願いします!感想もお待ちしてますー!

読んで頂きありがとうございます!

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