28.薬草採取だよ〜!
おっと、忘れるところだった。
「姉上、時空間魔法使えましたよね?」
「ええ、テテ。使えるわよ」
「マジックバッグとか作れませんか?」
「テテ」
「ばーちゃん、何? 薬草を収納するのに便利じゃん?」
「テテ、だからお前はまだ自分の出来る事を把握してないの?」
え、なんだよ。ばーちゃん。何が言いたいの? 僕、変な事言った?
だって、薬草を収納するのも、便利じゃん。たくさん入るし重くないしさ。時間経過がないから薬草も新鮮なままじゃん。
「だからね、テテ。テテの能力ならマジックバッグどころか、そのまま亜空間も作れるだろう」
え? マジ? 僕、そんな事できんの? てか、亜空間とマジックバッグの違いは何?
「テテ、勉強したんだけどね」
「はい。ばーちゃん、ごめんなさい。教えてください」
マジ、全然覚えてないや。エヘッ。
それから、またばーちゃんに教わってマジックバッグと亜空間を作った。
「で、できちゃった!」
「テテ、できちゃったじゃねーぞ。しっかり覚えな?」
「うん、ブラン」
マジックバッグは僕が持っていた肩から斜めに掛けて使っている鞄にエンチャントして作った。
ついでに、ばーちゃんのポーチもね。
空間拡張と、時空間魔法、重量軽減と物理耐性強化をしてあるので、沢山入るのに重くなくて丈夫。生物は入れられない。だけど、時間経過がない。だから、薬草を入れたらそのままの鮮度で持って帰ってこれる優れもの。
亜空間は、空気も重力もあるので生物を入れる事が出来るんだ。マジックバッグとは違って、時間経過があって空間そのものに出し入れする。魔力量に因って中の広さが変わる。
これってさぁ、中で薬草を育てたり樹木を育てたりできる、て事だよね。凄くない?
「テテ、そんな怪物級の魔力量を持つ人はいないぞ」
あら、ブランそうなの?
「まあ、俺くらいは入っていられるけどな」
そう言って、ブランは俺の作った亜空間にひょいと入って顔だけ出している。
「え……マジ? ブラン、どんな感じなの?」
「中か? 中はテテの魔力が充満しているんだ。俺は加護を与えた事で繋がりがあるから快適だぜ。それに、この中だと本当の大きさに戻れるしな」
広いんだね。じゃあ、ブラン以外はどうなんだろう?
「テテ、領地で教えたはずなのよ」
あら、ばーちゃん。ごめんなさい。
なんでも、テイムしているかいないかなんだそうだよ。要は繋がりがあるか無いかだね。
テイム……魔物を手懐ける事だよね。繋がりができて意思疎通ができる様になる。基本、名付けが基準なんだって。
テイムしていない魔物を入れると反発があって魔力をガンガン削られるらしい。だから、入れてはいけない。
「ブランはテイムになるの?」
「ならねーよ! 俺がテテを加護してんだからさ」
へぇ〜、不思議。よく分かんないね。まあ、便利だからいいや。
作りたてのマジックバッグを肩からかけて、薬草採取に出発だ。
「ん〜! ひろ〜い〜!」
細々した王都から出ると、ただただ広い草原が広がっている。今日はいい天気だしね。採取日和だよ。
邸から王都を囲んでいる防御壁まで結構な距離があるんだ。貴族の邸が並んだ貴族街は王都の中央にあるからね。その中心に王城がある。
貴族街のすぐ外側に、僕が通っている学園や図書館、役所など公の施設がある。
そのまた外側に、商店や食堂、宿屋があって冒険者ギルドや、商業ギルドもある。残念ながら、錬金術ギルドはないんだ。錬金術が使えて生業にしている人があんまりいないんだよ。てか、殆どいない。僕は聞いた事がない。
ギルドがあるから、武器や防具屋さん、ポーション屋さんもある。
商業施設がまとまっている感じ。民家もあるよ。ただし、商人のね。店から近いところに家がある方が便利だもんね。
商業施設を囲いながら、普通の、民家が沢山ある。その外側には畑もある。
1番外側に、ぐるっと大きな防御壁があるんだ。この防御壁の中は結界で守られている。初代聖女が構築した結界なんだ。代々の聖女が管理、保守、メンテナンスをしている。この結界に守られているから王都の中には魔物は入ってこられないんだ。
王都に出入りするには身分証明証が必要なんだよ。僕なら学生だから、学生証。ばーちゃんや姉上はギルドに登録しているから、ギルド証。
それもない人は、役所で身分証を発行してくれる。有料だけどね。
その防御壁の出入り口から、普段使っている僕の家の紋章の入った馬車じゃなくて、普通の馬車で外に出る。
服装も普段とは違って、冒険者っぽい格好をしている。動きやすいからね。
「テテ、サーチしておいてね」
「うん、ばーちゃん」
領地では、よくばーちゃんと剣の師匠マフォスと一緒に薬草採取はもちろん、魔物討伐にも出ていたんだ。
僕がサーチして、周辺に魔物がいないか気をつける。薬草も探す。
「ばーちゃん、やっぱ森近くに行こうよ。その方がたくさんあるよ」
「そうね。この辺だと魔物も小物だから大丈夫ね」
うん、そうそう。領地で出る魔物は大型もいるけどね。ここら辺は大丈夫だよ。
森に入ってすぐの場所で薬草採取を始める。
「テテ、結構あるわね。採られてないのかしら?」
「姉上、そうですよね。沢山ありますね。」
「森の小径から逸れているからじゃない?」
ばーちゃん、そっか。ほんの少し逸れただけなのにね。
「皆、出来るだけ近場で、て思うのよ」
そりゃそうだよね〜。あ、スライムだ。
僕は、サクッとウインドカッターでやっつける。
「まあ、スライム。なんか懐かしいわね。冒険者の初歩中の初歩ね」
姉上、冒険者ギルドに登録してるもんね。ランクは何だっけ? 忘れちゃった。魔術師として登録していて、高ランクだったと思うよ。
「テテ、スライムの核も取っておくのよ。お小遣いになるわ」
はいは〜い。スライムがまたポヨポヨ出てきた。楽勝だね。
「あ、姉上。ホーンラビットですよ」
「まあ! 美味しいのよ」
あらあら、食材扱いですか。
姉も、魔法でサクッと仕留めている。
お昼のお弁当も食べて、また薬草を採取して大量だよ。マジックバッグに沢山入れた。
邸に戻ったら仕分けしてクリーンして……と、考えながら馬車で戻った。
学園に通うよりズッと気楽で良いや。




