17.イデス視点だよ〜!
私はお祖母様の話を聞いて、直ぐに父に相談した。そして、2人で陛下に報告に行った。
父が陛下に報告をしたら陛下は驚いて暫く声も出ない様だった。
「エーピオスがそこまで……」
「これ以上干渉されない様に、今からでも精神異常を完全防御する魔道具を持たれる方が宜しいかと思われます。エーピオス殿下だけでなく、王族全員です」
「ああ、直ぐに魔術師団に要請しよう。それで、精神干渉は防げるのだな?」
「はい。義母が作った精神異常を完全防御するネックレスで息子は防御しております」
「テティスか」
「はい」
「テティスはこの事を予測しておったのだな。だから、ソフィアを遠ざけた。半信半疑でレウスの願い出通り、ソフィアに婚約破棄を宣言させたが。テティスに守られていたか」
「兄上……」
「神童は健在だったのだな」
「……」
「レウス、どうした?」
「テティスの気持ちだと。ソフィア様をお守りしたい一心だと思います。その為にテティスは10歳から準備をしていたのでしょう」
「私の甥は健気で良い子だ。有難い事だ。本当にソフィアの事を思い大事にしてくれる。ソフィアも何かあると気付いている様だが」
「陛下、今しばらくソフィア様には静観して頂けますよう」
「ああ、分かっている。ソフィアに言い聞かせておこう」
「ありがとうございます。」
「聖水の件は隊員に王都民に紛れさせて行かせるのが良いだろう。ただし、その隊員にも精神異常を完全防御する魔道具を持たせよう。直ぐに魔術師団に申し付ける」
「はっ」
「それから、レウス達も持つ方が良いだろう。今回の件に関わる隊員を決めてくれるか? その隊員達の分も用意しよう」
「畏まりました」
「これ以上、被害者を増やしてはならない。解呪方法も同時に調べさせよう」
「はっ」
陛下への報告は終わった。
帰りの馬車の中で父は黙っていた。
「父上。他に出来る事はありませんか?」
「イデス、私はお前が調べた村の事が気になる。聖女候補の家系を遡って調べられないだろうか?」
「父上、やってみます」
「頼んだ。だが、イデスも完全防御の魔道具を貰ってからだ。義母上に頼む方が早いかも知れないな」
「そうですね。帰ったらお願いしてみましょう」
精神干渉……目に見えないものだから、余計に厄介だ。
オマケに魅了でもない。なら、何なのだろう? 単純に魅了なら解呪できるのだが。
お祖母様の調べを待つしかないか? 何かないだろうか?
「父上、聖水が手に入ったら姉上に見てもらいましょう」
「ああ、もちろんだ」
「成分が分かれば良いのですが」
「ラティアの鑑定で判明するだろう」
「そうですね」
帰ったらお祖母様に完全防御の魔道具を何個か作れないか相談してみよう。
守りがないと、こちらも手を出せない。歯痒い事だ。
私は邸に着いて早速お祖母様に相談してみた。
「テテに持たせた魔道具ね」
「ばーちゃん、作って!」
――バシッ
また、テティスがお祖母様に叩かれている。テティス、学習しなよ? 本当に。まあ、いいコンビなんだけどね。お祖母様もテティスが可愛くて仕方ないのだろう。
「イテッ! ばーちゃんなんだよ!」
「作ってよ! じゃないでしょう? テテだって作れるでしょうが!」
なんだって!? テティスも作れる!?
「あ……そうだった。忘れてた」
「テテ……」
「兄上、僕が作りますよ!」
「テテはどうしてそんな大事な事を忘れるのかな?」
「え? 兄上? どうしてでしょう?」
「ブヒャヒャヒャ!」
また、ブランが笑っている。どうしてテテはこうも抜けているんだろう?
剣だって、魔法だって素晴らしい才能を持っている。実力もだ。努力もできる。
お祖母様が羨む程の魔力量だと言うのに。自分には大した事は出来ないと、テテは言う。
今回の事だって、テテが些細な事に気づけていなかったらどうなっていたか分からないと言うのに。
テテは自己評価が低いんだ。
どうしてだ? 多分だが……小さな頃に出した改革案が前世の記憶だと思い出したからだ。
自分が考えたのではないと。自分の力ではないと思っているのだろう。
しかし、子供が言った事で改革できる程容易くはない。テテの話で実現できるだけの詳しい知識を持っていたと言う事だ。
それも、テテの実力だと私は思う。
ソフィア様の為に10歳から準備する。ソフィア様が巻き込まれない様に、自分の気持ちを抑えて遠ざける。
そんな事、普通できるか? 10歳の子供が思いつくか?
「兄上、何個要りますか?」
「ん? テテ、何かな?」
「兄上、魔道具ですよ」
「ああ、何個なら作れそうだ?」
「そうですね。10個位なら。それ位なら材料があります」
なんだと? 材料なのか? 魔力量ではないのか?
「イデス、言いたい事は分かるわよ。でも、材料なのよ。魔力量じゃないの」
「お祖母様、私は常識と言うものが分からなくなりそうですよ」
「ブヒャヒャヒャ! テテだからな!」
ブラン、笑ってばかりだな。本当にドラゴンなのか? らしくないんだけど。
「イデス、正真正銘のドラゴンだ!」
本当かよ。
「マジだぜ!」
胡散臭いなー! 小さくなっている時しか見た事がないからな。
「なんだったら今すぐ大きくなってもいいよ?」
「ブラン、それはやめて。邸がなくなるよ」
「ブヒャヒャヒャ! それもそうだ!」
もう、ブランは放っておこう。
翌日、しっかり10個の精神異常を完全防御するネックレスが出来上がっていた。
本当に普通はどこへ行った?
これは普通じゃないよな? だって完全防御だよ? 普通、10個も一気に作れるもんなのか?
「材料が足らなかったから、ばーちゃんと姉上、母上にはブローチにしました。なかなか可愛いでしょ?」
え……? テテ、ブローチも作ったのか?
「父上と兄上には、ハットピンです」
なんだって? 父上と私にも? いやいや、父上と私の分はネックレスに入っていたんだよ?
結局、何個作ったんだ?
「イデス、驚く気持ちはよく分かるわ」
「お祖母様、私は普通ですよね?」
「普通よ、安心して」
良かった……のか? もう訳が分からない。
「え? 僕、こう言うの好きなんです。作ったりするの。あと、錬金術も好きです。なんかちょっとカッコいいでしょ? エヘヘ。」
はぁ!? 錬金術だって!?
「お祖母様!」
「イデス、テテは出来るのよ」
姉上と言いテテと言い。私は基準が分からないよ。
「あ、そうそう。ついでに状態異常の完全防御と、物理攻撃耐性と魔法攻撃耐性もつけておきましたから。多少の事は大丈夫ですよ」
ああ、もう考えるのはやめよう。
私の姉弟は普通ではない。それで良いや。
「ブヒャヒャヒャ! イデス、テテは最高だろ!?」
「そうだね、ブラン。本当に。」
「え? 兄上、何ですか? これ、フレンチトーストめちゃ美味しいですよ」
そうか、テテ。それは良かったな。




