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第二話② 勇敢で愚かな侵入者

「か、勝ったのか……」


 俺はダンジョンコアを食い入るように見つめた。

 地面に倒れる野盗達の亡骸。それを見下ろす妖怪達。俺が長年研究した、理想の【妖怪】の姿がそこにはあった。


「優香、もう良いぞ」


 部屋の隅っこでぎゅっと目を瞑り、耳を塞いでいる優香の肩を揺する。


「うぅ……終わったの?」

「ああ、もう大丈夫だ」


 お凛の薙刀が野盗の胸を貫いた時、ビャッと悲鳴をあげて優香は逃げ出してしまった。それもそのはず、ダンジョンコアを通してみれるダンジョンの映像は非常に高画質だ。噴き出る血液も溢れる臓器もそのまま映される。普通の神経の人間ならとてもみれた物ではないはずだ。


「戦法と武器が功を制したみたいだな」


 そんなことを言いながら優香の背中をさする。そう言えば、俺はなんで大丈夫なのだろうか。そりゃ優香より耐性はあるのかもしれないが、こんなに何も感じない物だろうか。


「あ」


 ふと以前のことを思い出した。


『ま、【倫理観】弱めとくから。ポッチっとね』


 そう、ギャル神と会った時だ。俺と優香は色々なスキルをもらったが、俺は【倫理観】を弱められたのだった。なんの影響も感じられなかったので放っておいたのだが、何かしらの影響があるのかもしれない。


「どうしたの?」

「いや、なんでもない。お凛達のとこに向かおう」


 気にするほどのことではないだろう。俺たちは小部屋を出た。


●○


(あるじ)よ。お主の指示の通り、侵入者を撃破したぞよ」


 お凛は鼻の穴を膨らませて言った。グッと胸を張っている。


「お凛さん、無事でよかったです。お疲れ様」

「当然じゃ」


 お凛は口元を隠して笑う。不思議と一つ目小僧達の表情も明るい。


「ところで……盗賊たちはどこだ?」


 俺は周囲を見渡した。先ほどダンジョンコア越しに見通した様子では盗賊たちはこの辺りの床に転がっていたはず。にもかかわらず今は死体どころか血しぶき一つ残っていない。


「ダンジョンが【吸収】してくれたんだろうね」

「吸収?」

「うん。ダンジョンの性質の一つに生物の死体を吸収するというものがあるの。前にも説明したけど、DPは侵入者の死体を吸収することで追加されるの。

「そういうわけか。ちなみにこの盗賊たちでどれくらいDPはどれくらいだ?」

「えっと……侵入ポイントと撃退ポイント、合計で6565DPの増加。現在保有DPは6775DP」


 確か現在の総戦力は750DP分。8、9倍くらいの戦力を増やせることになる。


「解放すぐに人間を倒すダンジョンなんて、ほとんど例がないよ。すっごい幸運だよ」

「そうだよな」


 俺はそう言いつつも俺は一つ気がかりな点を尋ねた。


「解放すぐに人間が乗り込んでくるってあり得るのか? 待ちわびたかのように現れたが……」

「私もそれ気になってた。たまたまダンジョンの前を通りかかったのか、それとも……」

「それとも?」

「相当交通量の多い場所にダンジョンが出現してしまったか


 優香は神妙な面持ちでそう告げた。


「前者だった場合は別段問題ないけど、後者だった場合はかなり大変だと思うよ」

「何となく予想はつくな……。人がなだれ込んでくるんだな」

「うん、アクセスが良いダンジョンは冒険者たちにも好まれるし、国としても早急に対処しなければ治安の悪化に繋がる。数に物を言わせてダンジョン踏破を狙ってくるだろうね」


 今の敵はたった5人だったからよかったものの、相手が10や20だったらわけが違う。


「お兄ちゃん。外の探索をしてみない?」

「探索? そんなことできるのか」

「うん。ダンジョンの外にモンスターを使役し、辺りの様子を探ってくるの。場所によってダンジョンの作りを変える必要があるし」

「分かった。じゃあ戦闘直後に申し訳ないが……」

「待って。ここは留守番組と探索組に分けた方が良いよ。探索している間に直接ダンジョンを襲撃されれば元も子もないからね」

「あ、そうだな」


 俺は周りを見た。お凛と5人の一つ目小僧。


「分けようにも頭数が少ないな」

「うん。最低でも今と同規模の戦力は待機班に割きたい」

「じゃあ、他の妖怪を呼び出してみよう」


 俺はダンジョンコアの置いてある小部屋に戻った。


○●


 とりあえず頭数を増やしたいので一つ目小僧を新たに15人呼び出す。ざっとステータスを見ると新しいスキルを見つけた。【空手術】【弓術】【合気道術】【居合術】どれも日本の伝統武術だ。

 弓術は文字通り弓を持つ一つ目小僧。飛び道具が出来たのはありがたい。


「それと、新しい妖怪も召喚するか。もう少し強い妖怪を呼び出してみよう」

「そうだね。人間には盗賊以上に強い者もゴロゴロいるはずだし。ちなみに残りDPは5925」

「結構余裕があるな……だったら……」


 俺は妖怪辞典を取り出し手頃な妖怪を探す。


「こいつかな。【鬼】」


 俺がそう言うとダンジョンの中心に2.5メートルほどの大男が現れた。

 腰に黄色と黒の布を巻き、皮膚は赤く短い髪の中から尖ったツノが生えていた。


「お、お兄ちゃん! これって……」

「ああ、こいつは【鬼】だ。俺の世界に伝わる伝説の種族で、伝承によれば人間を圧倒する力を持ってたとか……」

「ま、まあ、圧倒するだろうね。これで圧倒できなかったら腐った世界樹(うどの大木)だよ」

「なんだそりゃ」

「こっちの諺」

「いやいや、俺に対して使わないでくれよ」


 優香は目の前にそびえる筋肉の巨頭を半ば呆れたような顔で見上げていた。


「ちなみにステータスはどんな感じ?」

「えっと……【鑑定】っと」

—————————

種族 鬼(赤)

レベル1

体力 871/871

魔力 0/0

筋力 534

知力 82

速力 741


スキル

【金棒術LV4】

【収納LV2】

—————————


 俺はステータスを読み上げる。


「すごいね。魔力と知力は低いもののその他は使用DPに比べて高すぎる」

「金棒術ってのは……やっぱりあれか」


 俺は頭の中にイボイボのついた真っ黒なバットのようなものを思い出す。鬼と言ったらあの武器だよな。

 俺は更に2体の鬼を呼び出した。体色はそれぞれ青色と黄色。どちらもかなりの巨漢だ。


「よし、人数は揃ったな」


 俺は人員を4グループに分けた。お凛とそれぞれの鬼リーダーにし、5体ずつ一つ目小僧をつける。黄鬼グループがダンジョンに残り防衛、残りのの3グループが探索に出てもらう。


「ダンジョンコアを通してそれぞれのモンスターの視界を確認することができるよ。有効範囲は限られるけど」

「便利だな。じゃあよろしく頼んだぜ、みんな。くれぐれも無理はしないように」

「安心せえ。そこんじょそこらの生物に遅れは取らぬわ」

「ウガー」

「ガウ」

「ガー」


 お凛と鬼たちが返事をする。


 そして、探索部隊は意気揚々と外に出て行った。

妖怪豆知識コーナーNo.3 【鬼】


「このくらいだったら私でも分かるよ。妖怪の中じゃ一番有名なんじゃない?」

「そうだな。昔話じゃ引っ張りだこの人気者だもんな」

「節分とかもあるし、かなり人々の暮らしには根付いているよね」

「そんな鬼だが、その発祥は『バイキング』と言う説がある」

「バイキングっあの海賊の?」

「ああ。日本からは遠く離れた場所で活動していたがな」

「へ異国の乱暴者を鬼として扱ったと。バイキングが活動してたのって8〜11世紀だから外国人を見たら妖怪だと思っても不思議じゃないのかもね」

「バイキングは特徴として頭にツノのついたヘルメットのような武具をつけていたらしいしな」

「あ、鬼にも角がある! それっぽいね」

「とまあ、ここまで解説はしたが、実際はバイキングが登場する前から鬼伝説らしきものはあった。距離も流石に遠すぎるし、専門家の中ではバイキング説はほとんど否定されつつある」

「時間返せこら」

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