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プロローグ③ 絶望、希望、また絶望

「今からまこぴょんには【異世界転移】してもらうから。【ダンジョンマスター】としてね」


 ギャル神の言葉に俺は首を捻った。流石に古くてもギャル語はよくわからない。優香も不思議そうな顔だ。


「ギャル語じゃねーし!」


 ギャルはケラケラと笑った。


「いい? 【異世界転移】っつーのは簡単にいえばまこぴょんがいた世界とは別の世界に飛ばされるってこと」

「別の世界?」

「そう、文明も言語も生態系も常識もまるで違う世界よ。そこにまこぴょんには今からぴょーんと行ってもらうわけ。そこでアーシの指定する10人の異世界転移者を殺してくれたら、ユリアンヌ――妹ちゃんと一緒に元の世界に生き返らせてあげるよ」


 ギャル神はパチリとウインクをした。


「人を殺してこいって事か」

「有り体に言えば」

「異世界転移者ってのはなんなんだよ」

「普通生き物ってのは死んだら転生するんだよね。転生する先は今まで自分たちが生きていた世界かもしれないし、全く異なる世界かもしれない。とにかく、新しい肉体を手に入れてまっさらな状態で生まれ落ちるって訳」

「それが輪廻転生ってことか」

「そそ。でも稀に転生することなく……転移する奴がいるの。それまでの体を保持したまま別の世界に生まれ落ちる。まあ、1000年に1ぺんくらいはそんなことがあっても良いんだけど。ここ10年で急増して、別世界のバランスが崩れてんのよ」


 はは、まるでアニメの世界だ。しかしこのギャル神は困ってるらしい


「だから、まこぴょん。アンタは【ダンジョンマスター】って言う種族になってもらうから。アーシみたいに全知全能とはいかないけど、大概のことはできるべ」

「ダンジョンマスター?」

「色々詳しく説明しなくちゃなんないんだけどさ、アーシも予定が色々ある訳。今日中に天罰下さないといけないのが6人もいんのよねー」


 ギャル神はピッと優香の方を指さした。


「だからユリアンヌに異世界の情報とか全部教えちゃうね」

「わ、私に!?」

「そうそう。巻き込んじゃったのは悪いんだけどさ、アンタもお兄ちゃんの事助けたいっしょ? アンタも異世界に飛んでお兄ちゃん助けてあげてね」

「……わかりました」

「ゆ、優香!」

「お兄ちゃん、私は大丈夫だから」


 真っ直ぐに優香が俺の目を見つめる。優香は案外こう見えて頑固だ。一歩も引かないと言う意思が読み取れる。


「分かったよ。無茶するなよ」

「うん!」

「はーい。じゃ、設定するからちょいまちー」


 ギャルはポケットからガラケーを取り出すとぽちぽちと何かを打ち込んだ。ガラケーにはアホみたいにでっかいぬいぐるみが括り付けてある。


「で、話は戻るけど【ダンジョンマスター】ってのは簡単に言えば【モンスター】を生み出して人間と戦う職業ね」

「人間と戦う?」

「そーそー。まあ、RPGとかで言う魔王みたいな? そんな感じ? それで異世界転移者を殺しまくってもらうんだけどさ。マコぴょんって人殺したことある?」

「ある訳ないだろ!」

「100年くらい前は結構いたんだけどねー。ま、【倫理観】弱めとくから。ポッチっとね」


 ギャルがポチッとガラケーのボダンを押す。


「な、何が変わったんだ」

「まあ、精神的な問題だから」


 ギャルは言葉をつなぐ。


「あ、あとあっちの世界で言葉通じないと困るっしょ。二人とも【言語能力LV10】つけとくから」


 ギャルはまたポチりとボタンを押した。


「で、ユリアンヌは……【異世界知能LV9】つけとくね。これで異世界のことに関してほぼ全ての情報が得られたはず」

「うっ……」

「優香!?」


 優香が頭を押さえる。俺は肩を支えた。


「アハ、大量の知識をアップロードしたから脳に負荷がかかるかも。気をつけてね」

「さ、先に言ってください」


 頭を振りながら優香は文句を言った。どうやら頭痛は一時的なものだったらしい。


「本当は色々チートスキル付けてあげたいんだけどさ、あんまり介入しすぎると超次元審査委員会の監査に引っかかっちゃうからできないんだよねー。ごめぽよー」


 パチンと音を立ててギャル神はガラケーを閉じた。


「ただ、他の異世界転移者は【チート能力】とかふつーに持ってっから。気をつけてね。油断したら殺されっからな」

「それは具体的にどんな能力なんだ?」


 ギャル神は首をすくめた。どうやら彼女の知るところではないらしい。


「ま、多分見ればわかるよ」

「おいおい、顔に能力が書いてあるのかよ」

「【鑑定】を使えってことですよね」

「そういうこと」

「かんてい?」


 何故か優香にまで話の置いてきぼりにされている。


「【鑑定】っていうのはお兄ちゃんがこれからなる種属【ダンジョンマスター】の固有スキルのこと。固有スキルってのは生まれつきできる技みたいなものね」


 立板に水の如く優香が解説し始めた。そうか、【異世界知能】とか言う能力で異世界のことな大体わかるとか言ってたな……。


「【鑑定】生物の能力やスキルみたいなデータを数値化できるの。ダンジョンマスターはモンスターを使役するから必須の能力なの。お兄ちゃん、試しに私を鑑定してみて」

「鑑定してみてって言われても、どうしたら……」

「私を視界に入れて【鑑定】って唱えるだけでいいから」

「そんなに簡単なのか……。えーっとじゃあ、【鑑定】」


 その瞬間、目の前に半透明の板が現れた。


「なんだこりゃ!?」

「それがステータスボード。お兄ちゃんにしか見えてないから。私の情報が載ってるでしょ?」


 優香に促されるまま、ステータスボードに目を落とす。


―――――――――

名前 鍵山優香

種族 人間

レベル1

体力 95/95

魔力 15/15

筋力 60

知力 205

速力 115


スキル

【言語能力LV10】

【異世界知能LV9】

【プロレスLV4】


―――――――――


「こりゃわかりやすい。お前筋肉もう少しつけた方が良いんじゃないか。他の数値に比べてちょっと低いぞ」

「そう言う話をしてるんじゃないの。ほらスキルとか色々あるでしょう。それをみて相手の危険性を判断しろってこと」

「なるほどな。たしかに今もらった【言語能力】とか【異世界知能】とかあるな。この【プロレスLV4】ってのはなんだ?」

「なにそれ……しらん……怖……」

「ええ……」

「あーそのスキルはユリアンヌの【ユニークスキル】だね。後天的に手に入れたスキルのことよ。今までの人生で培った特殊技能ってわけ」

「優香はプロレスが好きだからなぁ。もう少し大人しいスポーツに興味を持ってもらいたいんだけど」

「は、恥ずかしい……」


 まあ、俺も人の趣味にどうこう言えた立場ではないが。ギャルは満足そうに鼻を鳴らすと、長い付け爪のついた手をひらひらと降った。


「じゃあ、頑張ってね〜。グッバイ♡」

「ありがとうございました」

「約束、忘れるなよ!」


 視界が徐々に暗くなり……やがて意識が途切れた。

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