呟き
春は別れの季節です。旅立つならば懐を希望で満たすことでしょう。けれど、別れの記憶だけ、私は抱いてまた春を迎えることになりましょう。
深く沈んだ夜の闇に 昇る月さえない夜は
星のかすかな瞬きが 囁くように思われて
しばし佇み、目を閉じて 耳を空へと傾げます
静かな夜の足元を 満ち来る時の潮騒が
むかし亡くした言の葉を 浚うが如くもてあそび
わたしは、ひとり、夜の底を 盲いたように迷います
いっそ、夢にも垣間見て
いまの、あなたのしあわせを 信じることができたなら
この苦しさも虚しさも 瑣末なことと諦めて
静かに生きていけるのに・・・
暗く滲んだ夜の闇に つつまれ、ひとり佇めば
遠い星さえ掌に 触れられそうな気がします
なのに、忘れぬあなただけ なおさら遠く感じます
ここは、桜並木の多い場所です。咲き始め、七分咲き、満開、そして、風に惜しげもなく花弁を散らす頃。桜ひとつをとってみても、春の中で、様々なうつろいがあります。
僕は、その時々で、きみを想います。春は別れの季節です。どうしようもないほどに。