第7話 違約金が発生【side:グフトック】
翌日、俺たちがギルドへいくと、とんでもないことを言われた。
「その……昨日のクエストが途中でリタイアになっています……」
「は? それがどうしたというのだ? 俺たちはアイテムがドロップしなかったから、あきらめただけだ」
俺は事実だけを伝える。
なにも悪いことはしていないからな……!
しかし、受付の女は難しい顔をしている。
「その……それはけっこうなんですが……。それならそれで、その日のうちにリタイア申請をしていただかないと……」
「は……!? そんな制度が!? おい、誰かやってなかったのか……?」
「す、すみませんグフトックさま!」
「くそ……つかえねえ女どもだな」
俺は今まで、クエストを途中でやめるなんてあまりしてこなかったから、知らなかったのも当然だ。
なにせ俺は強いし、クエスト選びも慎重だからな。
そういえば……今まではそんなこと、言われたことなかったのにな……。
「制度が変わったのか……?」
「いえ……そういうわけではないですね」
おかしいな。
一体だれが今までこういった手続きをしてきたんだ?
前にも、いや……少し前にもこういうことがあったと記憶しているのだが……?
「その……グフトックさま。前回のときはたぶん、あのロインとかいう人がやっていたんだと思います」
「なんだと……!? ロインだと!?」
なんということだ……それなら俺が見落とすわけだ。
っち……あいつを追放したせいで怒られたじゃないか。
次会ったとき、もっと嫌がらせをしてやろう。
全部あいつのせいだ。
「その……グフトックさん?」
「あん? まだなんかあるのか……?」
俺は受付の女にガンを飛ばす。
「言いにくいんですが……その、こういったことをされる場合、違約金が発生します」
「は……? クエストのキャンセル料なら払うが……?」
「ええ、当日にリタイア申請する場合でしたら、キャンセル料だけでいいのですが。今回のような申告漏れだと、違約金が発生します」
「なんだと!??!?!?」
まったく、俺に吹っ掛けようなんて……とんだアバズレだな。
「おい! ふざけるなよ! こっちは客だぞ!」
「その……あくまで冒険者さんたちはギルドに登録されているだけの関係なので、正確には客ではないんですよ……」
「はぁ……!? てめえ舐めんのか!? なんで俺が違約金なんて馬鹿げたもん払わなきゃならねえ!」
「いちおう、それがルールですので……。みなさん払ってらっしゃいます。クエストリタイアの申請がないと、他の方がそのクエストを受けられません。その間、クエストのクリアまでの時間が伸びてしまうので……こういった制度になっています」
「クソ……! 俺は昨日からイラついてんだ」
「それは我々には関係ありませんので……」
なんということだ。
このギルドの女受付は、態度がなっていない!
俺は喚き散らし、机をバンバン叩いて威嚇した。
こうすれば、たいていのヤツは言うことを聞くのだ。
「あの……どうかされましたか?」
俺に後ろから声をかけてきたのは、ギルドの別の職員だった。
スーツを着た初老の男だった。
白髪と髭が特徴的な、ダンディなジェントルマンといった風貌の、いけ好かない親父。
「なんだてめえ!?」
「私はここのギルドマスターのシモンズです」
「おう、てめえがギルマスかよ! この女が違約金を払えとかぬかしやがんだ!」
「そうですか……。それで……?」
「は……?」
「それで……? 払うのか、払わねえで今すぐこのギルドから追放されてえのか、どっちだって聞いてんだよこの小童が!」
「ひぃっ……!?」
俺は思わず、おっさんの怒声に身震いしてしまう。
こいつ……こんな細身のくせして、けっこうヤれる奴だな……。
俺は相手の実力を一瞬で見抜いた。
「そ、そんなに怒鳴らなくてもいいだろ……」
「これは失礼……。それで……? 払っていただけるのですか?」
「わ、わかったよ……これでいいんだろ」
「では、受け取りました。今後このようなことのないよう。お願いしますね?」
クソ……!
俺の数少ない残金が……。
でもまあ、ギルドを使えないようになるよりはましか……。
「おい、行くぞ! 気分がわりい。飲みに行く」
「は、はい! グフトックさま……!」
俺はむしゃくしゃした気分で、ギルドを出る。
「……ん?」
「どうしたんですか?」
「いや……ちょっと……なんでもない」
俺がギルドを出るとき、妙な奴にすれ違った。
全身を聖騎士の鎧シリーズで固めた、見かけない野郎。
ふん……聖騎士だなんて、白馬の王子様気どりかよ……。
きっといけ好かないヤロウが着ているに違いないな。
「それにしても……あいつ、かなりのレアドロップ品を抱えていたな……」
景気のいい奴もいたもんだ。
俺は昨日から金を支払ってばかりだというのに……。
「くそおおおお! イライラするぜ!」
その後散々飲み明かして、さらに金を散財したのは言うまでもない。
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