第59話 死者の森
俺とカナンとクラリスは、ギルドラモン近郊にある死者の森へやってきた。
目的は人食い植物の討伐だ。
やつらがごく稀に落とすレアドロップアイテム――ステータスの種。
それを目当てにやってきた。
「それにしても……無茶だと思うけど……。だって、私だって100回に一回出れば、いい方だ。ほとんどの連中が、冒険者人生で50回もお目にかかれないんじゃないか?」
とカナンが言う。
しかし、俺とクラリスは余裕の表情。
「まあまあ、とりあえずそのモンスターを倒そうぜ。問題はそれからだ」
「…………? あ、ああ……。なーんか、ロインもクラリスも……やけに自信ありげなんだよなぁ」
カナンは釈然としない感じで、歩いていた。
今からネタばらしが楽しみだ。
ステータスの種が大量に手に入れば、きっとカナンも大喜びするぞ……!
「…………っ」
急にカナンが立ち止まり。
――ッス。
っと、手で俺たちを制止する。
音を立ててはいけないらしい。
「ヤツだ……」
森の奥から、巨大な植物が顔を出す。
あれで本人は植物のつもりらしいが、どう見ても人を喰いそうな見た目だ。
腕によほど自信のある奴じゃないと、まず近づこうとも思わないだろう。
「ギュルルルル…………」
人食い植物は、そんな音を喉で鳴らしながら、よだれをだらだら垂らしている。
今にも、俺たちを食べたいという感じだ。
「アレ……どうやって倒すんだ……!?」
「まあ、見ていろ」
カナンはまず見本を見せると言って、一人前に出た。
――ッサ。
そして、何食わぬ顔で人食い植物を横切ろうとする。
「おいおい……大丈夫か……?」
まるで、人食い植物がモンスターであるということに、気づいていないかのように、無視して歩くカナン。
これは、人食い植物を油断させるためなのだろうか。
ついに人食い植物の口元に、カナンが差し掛かった瞬間。
人食い植物は大口を開けて、カナンへと襲い掛かった。
植物に擬態することを止め、完全に生き物然とした大口を開けて、食らいつく――!
「グアアアアアアアア!!!!」
「そこだ…………!」
それを待っていましたと言わんばかりに、カナンはその大口めがけて、剣を突っ込んだ。
――ズシャァアアアア!
「おお…………!」
カナンの剣は、人食い植物の喉から、首の裏――まあやつらの首を首と言っていいかはわかないが――まで貫通していた。
血が、吹きだす。
いや……血というか、植物の液……?
わからない。
――ドシャアアアアアアアアアア!!!!
そして得意げな顔で、引き返してくるカナン。
「ふっふーん。あいつらは、外皮は堅い植物で覆われているが、口の中は無防備なんだよ」
と説明する。
だが、カナンが殺してしまっては意味がないのだ。
あくまで俺が殺さなければ、レアドロップアイテムは確定ドロップしないじゃないか!
人食い植物を見ると、血はドバドバと噴き出ているものの、まだかろうじて息があるようす。
枝のような触手を、ぴくぴく動かして、なんとか血を止めようともがいている。
「うおおおおおおおおおおお! 絶対に俺がとどめをさす……!」
俺は、気がついたら走り出していた。
人食い植物は、俺が倒す……!
「ロイン……!?」
事情を知らないカナンは、俺がよほどの目立ちたがりだとでも思ったのだろうか。
「えい……!」
――ズシャア!!!!
俺は人食い植物に、最後のとどめをさす!
「おお…………! これがステータスの種か……!」
すると、すぐにステータスの種がドロップした。
「ええええええええええええええええ!!?!?!?!?!?」
その様子に、カナンは度肝を抜かした。
まあ、そりゃあそうだろうな。
特級レアアイテムが、一発でドロップするなんて。
「どどっどおどっどどどどど、どういうこと…………!!?!?!?!」
「ああ、俺……そういう体質なんだ」
「………………?????」
なおも信じられないという顔のカナン。
クラリスも、それを見て面白がっている。
「あはは! まあ、慣れるしかないよ。これがロインだから」
「うぅ…………とんでもない男だな。ほんとうにお前は……」
なんだかカナンに呆れられてしまう。
俺はそんなに、変なことをやっているだろうか。
「よし、それじゃあさっそく、このステータスの種とやらを見てみよう」
俺は、手に握っているその種を確認した。
《攻撃アップの種》
レア度 ★8
ドロップ率 0.001%
説明 食べると攻撃力+10





