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第2話 せめてスライムだけでも倒したい


 俺はとにかく、生きていかなきゃならなかった。

 そのためには金がいる。


 俺は、冒険者を続けることにした。

 もちろん他の仕事をやった方がいいだろうが、どのみち見知らぬ土地で職を探すのは大変だ。

 だったらいっそ、スライムくらい倒せるようになってから、冒険者をやめようと思ったのだ。

 それだけ、俺は悔しかったのかもしれないな。


「うおおおおおおおお! くらえ!」


 そうやって威勢よくこぶしを振り下ろすも、スライムはまったく動じない。

 俺がいくら攻撃しても、スライムには効かないのだ。

 骨折で片腕が使えないせいで、さらに苦戦を強いられる。


「くそ……せめて、武器さえあれば」


 俺は非戦闘員だったし、武器などは持たせてもらえなかった。

 もちろん俺には金なんてないから、買うこともできない。

 食事だけは残飯をあさったり、草や木の実を食べることでなんとかしのいだ。

 なんで俺がこんな屈辱的な目に遭わなければならないんだ……。


「やっぱり、スライムすら倒せないんだな、俺は……」


 夕方になり、あきらめてギルドへ戻る。

 用もないのに、クエストボードとにらめっこする。

 俺もスライムさえ倒せれば、クエストが受けられるのにな……。


「おい、ロインじゃねえか。まだスライムすら倒せないのか?」


 そう言って近づいてきたのは、俺を追放した憎き男。


「グフトック……」


 もう俺には用などないはずなのに、わざわざからかいに来たのか……?


「あんた攻撃力0なんでしょ? 向いてないのよ」

「そうよそうよ! あほくさ、辞めたらこの仕事?」


 取り巻きの女どももイチイチ癇に障るな……。

 パーティーを抜けたというのに、まだ付きまとわれるのか。

 結局のところ、こいつらは虐める対象が欲しかっただけなのかもな。

 実際に俺が役に立つかは関係なく、ただ憂さを晴らしたかっただけなのだ。

 俺が役に立てばそれでいいし、役に立たなかったら追放すればいい。

 はなからそのつもりだったのだろう。

 つまり俺は……騙された。


「もういいから、ほっといてくれよ! これ以上俺になにかしないでくれ!」


「おお……! こわ……! やればできるじゃん、おチビちゃん。その調子でスライムも倒せば? あ、ムリかー! ごめんごめん、力弱いもんな、お前」


「っく……」


 なにか言い返してやりたいが……。

 ギルドにこいつらを報告したが、まともに取り合ってはもらえなかった。

 こんな大都会ではよくあることなのだろう。

 俺は、こんな都会じゃ、誰からも必要とされていないんだ……。


 それでも、せめてスライム一匹倒せるようになりたい!

 これは、俺の唯一貫きたい意地だった。


「みてろ、近いうちに、スライムくらい倒してみせるさ」


「……っぷ……! くぷぷぷぷ……! 聞いたかお前たち!」


 グフトックは笑いながら、ギルド中に聞こえるように問いかけた。


「こいつは、このロイン・キャンベラスは! 冒険者ランク万年最下位のくせに! スライムくらい倒してみせるとさ! スライムだぞ! あのスライム! そんなの倒せないの、お前しかいねーよ! ぎゃっはっはっはっはっは!」


「ぎゃっはっはっはっはっは!」


 ギルド中から嘲笑される。

 ああ、受付のお姉さんすら笑っている気がする。

 俺は、そんなにおかしいか……?


 たしかに、今はまだ弱い。

 けど、きっとスライムくらいなら倒せるようになる!

 俺は、あきらめないから!



――――――――――――――――

《冒険者ランク》

 ・

 ・

 ・

1678位 ヨグソ・ソーマン

1679位 ダン・シルベスター

1680位 ロイン・キャンベラス

――――――――――――――――



 それからも俺は、何度も、何度もスライムに挑んだ。

 泥水をすすりながら、残飯をあさりながら。

 スライムを倒せるまでは、俺は家に戻れない。


 服もどんどんすり減っていき、心もすり減った。

 でも、俺は決してあきらめなかった。

 なんど笑われ、なんど倒れそうになっても、俺は毎日スライムを倒しに向かった。


「お、今日も倒せなかったのか?」


「まあな」


 門番の人には顔を覚えられた。

 今では俺はちょっとした有名人だ。

 まあ、悪い意味での……だが。


 でも、味方もできた。

 諦めの悪い無様な俺だが、そんな姿を応援してくれる人たちだ。


「ようロイン、今日もがんばれよ! まあ、ムリだろうがな!」


「うるせえよ! でも、サンキュー」


 そう言って、果物なんかをくれる人。


 それから、ギルドの受付のお姉さん。


「ロインさん。頑張ってくださいね! スライムさえ倒せれば、念願だったクエストが受けられるんですから!」


「ありがとうございます」


「それと……この毛布、使ってください。外は、寒いですから」


「受付嬢さん……ありがとうございます!」


 そんな感じで、月日が過ぎた。

 そして、ようやくその時が訪れる――。


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