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第185話 アレスターの決意


 ロインがアイヴェツリークの元へ戻り、塔へはアレスター、エスレ、カナンの三人が残される。

 塔には結界も張ってあり、安全かと思われたが……しかし。

 ロインが去って数分すると、事件が起きた。

 アレスターが塔の上から視察していると……なんと遠くから、魔物の大群がこちらへ向かって、一直線に迫ってきているのが見えた。


「まさか……! ここももうバレているのか……!?」


 しかし、ここに頼れるロインはいない。


「くそ……! なんとかロインさんが戻ってくるまで、この塔を死守しなきゃ……!」


 アレスターはそう決意する。


「そうだね。でも、どうやって……!」


 カナンが不安を口にする。

 なんといったって、塔は完全に包囲されていて、逃げ場がない。

 ひとたび塔の中に侵入を許すと、塔もろとも破壊されてしまう恐れもある。


「俺が……出る……!」

「そんな……! 危険です……!」


 塔から出て行こうとするアレスターを、エスレが止める。


「しかし、俺はロインさんから君を託された。なんとしても、守り抜く必要があるんだ!」

「なら、私も行きます……! 魔法で援護します……!」

「それはダメだ。君はここにいないと。万が一にも、君に怪我をされるわけにはいかない……」


 アレスターはどうしても、単独で塔を出て行こうとする。


「なら、私もいくよ……!」


 しかし当然、カナンも心配して名乗りを上げる。

 だが、アレスターはそれをも拒んだ。


「だめだ。エスレにはカナンさんがついていないと。この塔の中も安全とは限らない……」

「でも、アレスターが一番危険だよ……!?」

「俺はいいんだ。一度は失ったこの命、ロインさんのために仕えるなら、どんな危険でも……!」

「アレスター……」

「大丈夫、俺に考えがある」


 アレスターは単独で、塔を出て行く。

 そして、塔に群がってこようとする魔物たちの前に、立ちはだかる。

 カナンにはああは言ったものの、アレスターにこれといった考えはなかった。

 ただ、ロインが戻ってくるまでの間、気合だけで耐えるつもりだ。

 最悪、自分は死んでもいいと思っていた。

 エスレとカナンが塔の中で無事でいさえすれば、自分の役目は終えたも同然だ。

 ロインのために、この命を使いたい。

 そのために、魔界にまでついてきたのだから――!


「ここまでロインさんが強すぎて、俺はなにもできなかった。足をひっぱってばかりだった……。だが、なにかロインさんの役にたてるとしたら、今だ……! 今しかない……!」


 アレスターは自分が死んでも、時間を稼いで、ロインの帰りを待つつもりだった。

 だが、むろん死ぬつもりはない。

 アレスターは信じていた。

 ある程度の時間さえ稼げば、すぐにロインはガストロンに勝利し、戻ってくると――。


「うおおおおおおおお!!!! どこからでもかかってこい……!」


 アレスターは単独で、モンスターたちの前に立ちはだかる。


「うおおおおおお! ドラゴンブレイド――!!!!」


 アレスターの剣が、モンスターたちをばったばったと切り倒す。

 これでも、元勇者だ。伊達に剣は振っていない。

 ロインに出会うまでは、これでも負け知らずだったのだから。


「くそ……! きりがない……!」


 だがここは魔界。モンスターならいくらでも湧いてくる。

 さすがの数に、いくら斬ってもきりがない。

 次第に、アレスターが斬り倒すよりも先に、モンスターたちが押し寄せてくるようになった。

 アレスターはどんどん、じりじりと下がらざるを得ない。前線を下げられてしまう。

 塔をまもるためには、これ以上は下がれない。


「っく……ここまでか……!」


 モンスターの牙が眼前に迫り、あきらめかけたそのときだった。


 ――キン!

 ――ズバ!!!!


 アレスターの目の前のモンスターたちが、一瞬にして消え去った。

 いや、葬り去られたのだ。

 そして、アレスターの目の前に、信じていた待ち人が現れる。


「アレスター、待たせたな……! 大丈夫だったか……!?」



「ロインさん…………!!!!」



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