第173話 いざ、魔界へ
俺はさっそく手に入った上級鑑定の書を読み込む。
もしかしたらグフトックしか覚えられないのかと思ったが、俺でも使えるようになった。
ちなみに、使う前にはちゃんと複製の魔眼でバックアップをしてある。
だからもし俺になにかあっても、一応は大丈夫だ。
「よし、これでドロシーの鏡を鑑定できるな」
ドロシーの鏡も念のために複製の魔眼でコピー。
まずはオリジナルの鏡に向けて上級鑑定を使う。
《魔鏡デモンズペイン》
レア度 ???
説明 この世とあの世をつなぐ魔鏡。
死者の魂をつなぎとめておくことができる。
「おお……! これが魔鏡……!」
上級鑑定を使うと、ドロシーの鏡はその姿を変えた。
なんともまがまがしい、異質な鏡がそこにあらわれたのだ。
「上級鑑定ってのは見た目までも変わるのか」
これを使えば、ついに魔界に行くことができるのか……!
なんだかワクワクしてきたな。
それと同時に、少しだけ怖くもある。
「ロイン、どうするの……? すぐに魔界に行くの?」
クラリスが不安そうに尋ねてくる。
「いや、とりあえず準備をすることからだ。まあ今の俺なら難なく魔王を倒せるだろうが、念には念を入れないといけない。できるかぎりの装備を整えていこう」
「そ、そうだよね……! 私も手伝う!」
「ああ、一緒に魔王を倒そう」
魔界に行くのはもちろん危険だが、クラリスとカナンもついてくることになっている。
戦争に駆り出すのはさすがに気が引けたが、魔界ならまあ絶対に俺が守るから、彼女たちは大丈夫だ。
「よし、とりあえず今日はいろいろと精神的にも疲れた……もう休もう」
「そうだね……」
疲れたのは主にグフトックのせいだ。
グフトックもどっと疲れたのか、はやばやと自室に戻って眠ってしまった。
俺もこれからの戦いに備えて今はゆっくりするとしよう。
もう敵は目の前まで追いつめている。
◇
翌日になって、俺たちは改めて魔界へ向かう準備を始める。
魔界へ向かうメンバーは、俺とクラリス、カナン、アレスターの4人だ。
アレスターはどうしてもというので連れていくことにした。
まあ、元々はこいつが勇者なんだから、最後は一緒に戦ってくれなきゃな。
グフトックもぜひ俺の力になりたいといってきたが、さすがに戦力外だ。
色々とアイテムを与えて鍛えれば可能だろうが、それならある程度戦闘経験のあるアレスターのほうがいい。
グフトックには悪いが留守を守ってもらうことにした。
残りの勇者パーティのメンバーも、アルトヴェールを守ってもらう。
俺たちが魔界に行ったとたんに、入れ違いで魔族が攻めてくることだって十分に考えられるからな。
というか、俺が敵なら絶対にそうするだろう。
だからアルトヴェールの防衛も決しておろそかにできないのだ。
「よし、じゃあさっそく魔王を倒しに行ってくるか……!」
俺たちは魔鏡デモンズペインに魔力を通し、起動した。
デモンズペインからは真っ黒なゲートが顔を出し、俺たちを招き入れる。
「ろ、ロイン……私ちょっと怖いかも……」
「大丈夫だクラリス。俺がついている」
恐る恐る、ゲートの中へと手を伸ばす。
「ロインさん、気を付けていってくださいね……!」
「はい、サリナさん。必ずかえってきます……!」
愛する人たちに別れを告げ、覚悟を決める。
ゲートをくぐり、魔界へといざ旅立つ――。