表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

152/195

第152話 四天王・智将ジェスターク


※三人称視点



 魔界の四天王が一人、ジェスタークはゲートを通り、人間界を訪れた。

 彼がまず降り立ったのは、ユーラゴビス帝国という場所だ。

 ユーラゴビス帝国といえば、元ヨルガストン帝国(現アルトヴェール帝国ヨルガストン)と国境を隣接する大国だ。

 軍事力に秀でた大国で、多くの騎士を備えている。


 ヨルガストン帝国がロインの傘下に下ったのも、このユーラゴビスが原因の一つであった。

 ユーラゴビスの王、ユィン・ユーラゴビス23世はかねてからヨルガストンの地を狙っていたのだった。

 テンペストテッタ防衛戦にて消耗したヨルガストンを、ユーラゴビスが狙っていたのを、戦争を回避するため、アルトヴェールに併合された形であった。

 当然、そのことは魔界側にも水晶を通じて知れていた。


 ジェスタークはそれを利用しない手はない、と考えたのだった。

 うまくユーラゴビスをたきつけ、アルトヴェールに進軍させる。

 そうすれば、なにもわざわざ魔界のゲートからモンスターを送り込まなくても、現地で兵をそろえられるというわけだ。


「まったく、デロルメリアも馬鹿な男だ。私のように人間を駒にしてしまえばいいものを……っくっくっく」


 人間の姿に変装しながら、ジェスタークは不敵な笑みをこぼす。

 彼の姿はほぼ人間と相違なかったが、頭の角だけが目立った。


「デロルメリアめ、魔物製造に魔力をまわしすぎて、ぬかりおったな……。あそこでロインを始末できていれば、今頃こうはならなかったというのに……ふん。まあいい、ここで私が活躍し、魔王さまに認めてもらうチャンスだ」


 ジェスタークは旅の吟遊詩人兼占い師のふりをして、ユーラゴビスの王城へ潜入した。

 そういった客人を招くのも、多くの王のささやかな楽しみであった。

 もちろん最初は警戒されたが、彼の類まれなる人心掌握術の前では、人間など他愛もなかった。

 あの手この手をつかって、ジェスタークはユーラゴビスの王に取り入った。


 魔族である彼からすれば、人間程度にできる占いなどとは比べ物にならないほどのさまざまな呪術を使える。

 何も知らないユィン・ユーラゴビス23世からすれば、ジェスタークは突如降って湧いた優秀なるメンターであった。

 あっという間にユィンは心を許し、周りの臣下たちが不思議に思うほどにジェスタークとの仲を深めていったのだった。

 ジェスタークに男色の気はなかったが、そのくらい、まったく抵抗のないことだった。

 ユィンは人間としても美しい美男だったし、拒む理由は特になかったのだ。

 その辺の感覚は、魔族界で暮らすジェスタークと、普通の人間とではまた違うのかもしれなかった。

 とにかく、ジェスタークはまたたくまにユィンの右腕として、ユーラゴビスに欠かせぬ人物となっていった。

 この間、わずか半月ほどである。

 その間に、ロインのほうはさして進展もなく、情報を集めるだけの日々が続いていた。

 ロインは魔王軍が最近攻めてこないことを疑問に思っていたが、特に問題視はしていなかった。

 平和であるなら、それが一番だと言う風に。

 だが、それが嵐の前の静けさであったことなど、まだ彼は知る由もないのだ――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

《▼カクヨムで新連載はじめました▼》
  【続編】『アイテム至上主義!』~近未来のダンジョン都市NEOトーキョーで俺だけ【確定レアドロップ】な探索者生活~
ぜひ応援よろしくお願いしますね!確定レアドロップの精神的続編です!
  ▼▼▼ 大好評発売中 ▼▼▼
    ★画像タップで購入ページへ飛びます★
html>
《▼カクヨム版はこちらです▼》
スライムすら倒せない無能と罵られた俺のスキルが《確定レアドロップ》だった件。ようやく倒せた初めての一匹がきっかけで、ハクスラの連鎖が止まらない!世界最速で世界最強の勇者を追い抜きます
コメント欄解放中!先行公開!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ