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第142話 唯一の手掛かり


【sideアレスター】



「うわあああああああああああああああ」


 俺は鏡に映った自分の醜い姿に絶句した。

 そこに映っていたのは、かつての若々しい金髪の好青年ではない。

 見知らぬ老人の姿が映っていたのだ。


「こ、これが……俺なのか……!?」


 いや、老人というのは違うのかもしれない。

 確かにそれは俺の身体だったが、ひどくくたびれたものだったのだ。

 しわや傷が無数にあり、背筋も曲がっている。

 顔もくまがひどくて別人のようだ。


「うわああああああ……」


 しばらく落ち込んだ後、俺は服を着替えてロインとの面会の準備をする。

 いつまでもへこんでなんかいられない。

 俺は、知らねばならないのだ。

 俺自身の身に起きたこと、それから、これからのこと……。





「よく来てくれた、アレスター」

「……ロイン……!」


 俺は、ロインへの謁見の間に通され、二人きりになる。

 くそ、あのロインのくせに、なにが謁見の間だ。

 偉そうに王様気取りで、癪に障る。

 しかし、そんな俺の反抗的な態度など意にも介さないロイン。

 ロインは俺の身体を気遣い、とことん世話してくれた。


「もう体は大丈夫か……? 長い眠りだったからな。体力も衰えているだろう。いろいろ、休養が必要だ」

「あ、ああ……その点は、感謝している……」


 思わず、俺はほだされてしまう。

 どこまでお人よしなんだこいつは……。

 これが、王者の風格というものなのだろうか。


「それで、知りたいことがたくさんあるだろう」

「ああ、俺になにが起きたのか、教えてくれ!」

「よし、まずは順を追って話そう」


 ロインは俺に、事の顛末を伝えてくれた。

 俺が魔王軍に挑み、死んだこと……。

 それから、俺の仲間もみな死んだこと。

 魔王軍はロインが退けたこと。

 それから、ロインが俺を、貴重なアイテムを使ってまで蘇生させてくれたこと。


「そ、そうだったのか……」


 俺は、感服する思いだった。

 身体中の力が抜け、あきらめがつく。

 最初から、ロインに勝てるはずがなかったのだ。

 彼はこんなにも偉大なことをなしとげ、そして俺に情けをかけてくれたのだ。

 そんな男に、俺がかなうはずもなかったということだ。


「そうとも知らずに……。俺はなんと無礼なことを……」

「いいんだ。なれあうつもりはない」

「いや……! ロイン……。いやロイン王! 俺を生き返らせてくれて、本当に感謝します!」


 俺はロイン王への忠誠を誓った。

 あれほど傲慢だった俺を救い、こうしてすべてを与えてくれた。

 そんなロイン王への対抗心や憎しみは、完全に消え失せていた。





【sideロイン】



「うーん、大げさだな。まあいいけど……」


 別に俺は、こいつに感謝されたくてよみがえらせたわけじゃないんだけどな……。

 まあ、こうやってしおらしくいてくれていたほうが、こっちも都合がいいか。

 また前みたいに突っかかってこられても面倒だしな。

 アレスターはああいう性格だけど、案外、恩義には報いるタイプなのかもしれん。


「それで、アレスター。お前を蘇生させたのには、理由があるんだ」

「はい……!」

「俺のために少し、力を貸してほしい。魔王軍に対抗するために、お前が手掛かりになるかもしれないんだ」

「もちろんです……! ロイン王。なんでもいたします!」


 よし、アレスターが協力的でよかった。

 これでなんとか聞き出せそうだ。


「魔王を倒すため、俺は魔界に渡る必要がある。なにか手がかりを知らないか……?」

「魔界……ですか……うーん、あ……!」

「なにか知ってるのか……!?」

「昔、うちの祖父が言ってたことがあります……。なんでも、【魔鏡デモンズペイン】とかいうレアアイテムを使えば、魔界へ渡ることができるとか……」

「おお……! それは知らない情報だ!」


 アレスターの情報がどれほど確かかはわからないが、少なくとも今は他に情報がない。

 だが、そのアイテムを手に入れるにしても、どうすればいいんだ……?

 アレスターはそこまでは知らないというし……。

 そんなレアアイテム……魔物からのレアドロで手に入るのかも怪しい……。

 これは八方ふさがりだぞ……。


「とにかく、情報ありがとう」

「いえ……こちらは命を蘇生させてもらってるので、このくらい」

「あ、そうだ。蘇生といえば……アレスター。あっちの部屋にみんな待ってる」

「え……? みんな……? それはどういうことでしょう……?」


 俺は、アレスターに指をさして隣の部屋に移動するよう促した。

 実は、彼が眠っている間にも、いろいろやっていたことがあるのだ。





【sideアレスター】



 俺は、ロインに促され、隣の部屋に移動した。

 なんとそこには、俺のかつての仲間たちがそろっていたのだ。


「ゲオルド……モモカ……エレナ……?」


 彼らは俺と同じく、かつての姿を失っている。

 みなやつれて、別人のようにしおれている。

 だが、間違いなく俺の仲間たちが、そこにはいた。


「「「アレスター……!」」」


 俺たちは涙して抱き合い、再会を喜び合った。

 振り向くと、ロインがそこにいた。

 俺は、この人に感謝してもしきれない……。


「ロイン王……本当に……なんといったらいいか……」

「いいんだ。世界樹の霊薬はまだ余ってるしな。生き返らせれる人物をほったらかしにしておくほど、俺は非道じゃない。それに、お前たち元勇者パーティにはいろいろしてもらうことがある」

「は、はい……! なんでもいたします……!」


 俺たちはロイン王への忠誠を誓い、何度も何度も感謝した。

 そしてかつての自分たちの行いを、恥じ、後悔した。

 これからは、この拾ってもらった命、ロイン王のために捧げよう。


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