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第131話 覚醒の秘薬


「そうか……なら、それ以上のパワーで打ち砕くだけだな……!」

「え………………??」


 俺は先ほど手に入れていた勇者の遺物アイテムに手を伸ばした。


――《覚醒の秘薬》


 それは、攻撃力を一時的に倍にするアイテムだ。


「あ…………そ、それは…………!? くそ……! 本来なら数周しないと手に入らないアイテムなのに…………! っく…………! ぬかった……」


「っふっふっふ……! これさえあれば……!」


 今度はネファレムが悔しそうな顔をする。

 さすがに攻撃力を倍にすれば、この魔力障壁とやらも打ち砕けるだろう。

 俺は、その《覚醒の秘薬》を思い切り口に含んだ。


「あ…………!」

「え………………?」


 俺が秘薬を飲んだ瞬間、ネファレムが非常に嫌な反応を見せた。

 それはまるで、毒キノコを口にしてしまった人を見たかのような……。


「な、なにかまずかったのか…………?」


 まあ確かに、味はまずかったが……。

 なぜネファレムはあんな反応をしたのだろうか……?


「ろ、ロイン……非常に言いにくいんだが……その……それは……」

「ん…………?」


「そんな一気飲みするようなものではないんだ…………」



「なんだってええええええ………………!????」


 もしかしてこれ、あれか……少し肌に塗ればいいとかそういう使い方のやつだったのか…………?

 それか、瓶一本飲み干すのではなく、一口でよかったとか?


 てっきり普通のポーションと同じ意識でがぶ飲みしてしまった。

 まあ、それもそうだ。

 覚醒の秘薬とまでいうようなアイテムなんだから、それをこんなに飲んでしまったら……いったいどうなるんだ????

 覚醒しすぎて、俺はおかしくなってしまうのだろうか…………????


「きゅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 そうこうしているうちに、トレントの腕(枝)が回復して、再び俺を襲う。


 しかし、覚醒によって研ぎ澄まされた俺の身体は――勝手に動いた。


「え…………?」


「ロイン…………!?」


 再びクラリスの声。

 しかし――。


 ――ドン!


 なんと俺の素手で繰り出した手刀が、トレントの腕を斬り裂いた。


「うおおおおおおおおお!?」


 覚醒のせいか、俺の攻撃力はすさまじいまでに膨れ上がっているようだ。

 よし、このままトレント本体も倒してしまおう……!

 俺は剣を握りしめ、トレントの身体に向けて放った。


斬空剣(エアスラッシュ)――!」


 ――ズドドドドドド!!!!


 すさまじい轟音とともに、トレントに向けて放たれる斬撃。

 さきほどはびくともしなかったのに、トレントの魔力障壁をいとも簡単に突き破る。

 どうやら魔力障壁とやらは、耐久値以上の攻撃を当てれば関係ないようだな。

 俺の攻撃は大木をまっぷたつにし、みごとボスを討ち取った。


「よし…………! なんとかなったな……!」


 一時はどうなるかと思ったが……。

 覚醒の秘薬のおかげで、なんとか倒すことができた。

 しかし、ネファレムも驚かせすぎだ。

 俺が覚醒の秘薬をがぶ飲みしたくらいで大騒ぎをして……。

 このとおり、俺はちゃんとパワーアップし、なにごともなく……って。


「ろ、ロイン……ど、どうしたの……!?」

「ん…………?」


 クラリスに言われて、俺は気づいた。

 自分の身体が真っ赤に興奮していることに……!

 しかも、それだけではない。

 俺の体中の血液が、ある一点に集中してしまっていた。


「おいおいおい……覚醒って、そういうことかよ……!?」


 これが覚醒の秘薬を飲みすぎたことによる副作用なのか……?

 だとしたら、先代の勇者もこの副作用にお世話になったに違いないな……なんて、邪推してしまう。


「と、とにかく……このままじゃ戦うこともままならん。いったんアルトヴェールに帰るか……」

「そ、そうね……」


「はぁ…………あきれた…………。それでも魔王を倒して世界を救おうという男か……?」


 ネファレムは俺のことを心配して損したといわんばかりに、大きなため息をついた。

 まあ、英雄色を好むというじゃないか。

 それに、こんな副作用の薬物を用意したのはほかでもない先代の勇者なんだ。

 文句なら先代勇者に言ってほしいところだ。


「まあ、そういうわけで俺たちは一度休憩に戻るよ。すぐに戻ってくるけどな」

「ああ、わかった……ま、500年もまったのだから数日くらいなんてことはない」


 ネファレムはそう言って俺たちを見送った。

 どうやらネファレムは着いてくる気はなさそうだった。

 俺たちがこのレジェンダリーダンジョンをクリアするまでは、ここから離れるわけにはいかないそうだ。


 ちなみに、トレントから手に入れたドロップアイテムがこちら。


《世界樹の霊薬》

レア度 レジェンダリー

ドロップ率 ???

説明 一定期間以内に死んだ人間を蘇生することができる。


「ま、まさかの蘇生アイテム…………! さすが先代勇者……どれだけ規格外なんだ……!?」


「その規格外のレアアイテムを一回で手に入れるお前もどうなのだ……?」


 と、ネファレムに言われてしまった。

 一定期間というのがどのくらいのものかはわからないが、これで死の心配も少しは減る。

 まあ、できればもう死ぬのはごめんだが……。

 以前にも不死鳥の首飾りで死の淵から蘇ったことがあったが……あれはもう二度と経験したくない。

 だがこれさえあれば、俺も安心して戦うことができるというわけだ。

 万が一にも死ぬつもりはないし、味方を殺させるつもりも、もちろんない。

 しかし備えあれば患いなし。

 これがあるだけでお守りのような効果もあるのだ。


「ようし……! じゃあしばらく休憩して、覚醒が治まったらさっそく、次の階層に進むぜ!」


 アルトヴェールに帰還した俺は、決意を新たにした。


「でもその前に……この覚醒を治めないとね……!」

「私たちに任せてよ……!」


 アルトヴェールについてすぐ、俺はクラリスとカナンに押し倒される。

 そして強引に服をはぎとられてしまった。

 どうやら二人も覚醒した俺に負けず劣らず、いろいろと溜まっていたようだ。


「ネファレムには悪いが、戦いの中にも息抜きは必要だよな……!」


 その晩、俺はめいいっぱい楽しんで、リフレッシュした。

 これで明日からまた、あのバカげた難易度のレジェンダリーダンジョンに挑むことができそうだ。

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