第125話 謎の霧
「うおおおおおおおおおお!!!!」
俺が扉に放った一撃で、目の前に大穴が空く。
――ドカーン! ドドドドドドドドド!!!!
「やったぁ!」
「すごい、さすがロイン!」
俺自身も半信半疑だったが、まさか本当に扉を破壊できるとは……。
伝説級のサイハテダンジョンの、その扉をも砕く俺の一撃。もはや砕けないものなどないのではないか、そう思うほどだった。あの、スライムすら倒せなかった俺がだ。
扉を破壊した先には、下に続く長い階段があった。
そしてそこをさらに下っていくと、今度は霧のようなものでできた壁が現れた。
「これって……壁……? 扉……?」
「なんにせよ、不気味だな……」
俺たちは霧の壁の前で立ち止まる。
得体の知れない霧に、いきなり触れるのは危険だ。
霧は少し黄色がかった色をしており、まるでカーテンのようにこの先の視界を遮っている。
俺はためしに、剣の先を霧の中にくぐらせてみることにした。
いきなり腕を突っ込んだりして、腕が腐ったりしたらいやだからな。
「よっと……」
「どう……? ロイン」
横でクラリスが不安そうな顔で見ている。
しかし俺の剣はないごともなく、霧の中から抜け出せた。
こんどは指先を霧の中に通してみる。
指もなんともない。
腕を少し深くまで入れてみる。
霧の向こうにも確かに空間が広がっていて、ダンジョンは続いているようだった。
もしかしたらこの霧は、転移門になっているのかもしれない。
「どうやら……大丈夫みたいだ」
「でも……ちょっと怖いね……」
試しに、霧の向こうの空間をイメージして、そこに転移してみようと念じる。
しかし、俺の転移スキルは発動しなかった。
「だめだ……なにかバリアのようなものが張ってあるのかもな……」
とにかく、この霧の向こう側の空間が、特別な場所であることは確かだ。
わざわざ扉で守ってまで、かくしてあるんだから。
「行くしかないな……」
「うん……」「そうだね……」
クラリスとカナンは俺の手を握った。
そして俺たちは、一か八かの思いでその謎の霧をくぐった。
◇
目を開けると、そこは大きな広間になっていた。
さっきまでのダンジョンとは違い、壁や床の素材が変わっているようだ。
どうやらここは……サイハテダンジョンではないのか……?
そして――。
「よくぞ来たな……! 待ちわびたぞ!」
「え…………?」
霧を抜けた俺たちを待ち受けていたのは、謎の女の子だった。
紫色の髪の毛を束にして、偉そうに腕を組んでふんぞり返っている。
見たこともないような不思議な装備をしていて、明らかにこの世界の住人とは思えなかった。
なにからなにまで、謎の多いダンジョンだ……。
「遅かったではないか勇者よ」
謎の美少女は、俺に向かってそう言った。