悪魔との出会い
魔法学園は図書室の書庫。カナタは泣いていた。今日もゲルム達に虐められたからである。
カナタは魔法が使えない。いや嘘。少し使える。ほんの少し。ゲルム達はファイアーボールを簡単に発動できるけれど、カナタにはせいぜい蝋燭の火をやっと付けられるほどの魔力しか使えない。
だから教師からは『魔法学園始まって以来の劣等生』と言われる。
だからクラスメイトから虐められる。
お昼休みが終われば、次に待っている授業は魔術戦闘訓練である。
通常、四人一組で行う戦闘訓練。ペアを変えながら行われるはずの授業。カナタはいつもゲルム達と組まされていた。理由はもちろん訓練と称して一方的に暴力をふるうためだ。
体育などは得意なゲルム達だが、魔術理論などの理系科目の成績は雨が降る直前の燕より低空飛行である。
そんなストレスのはけ口に使われるのが魔術戦闘訓練。ゲルム達はその度にカナタを傷だらけにするのであった。
もう痛いのは嫌だ。
苦しい
死にたい
……おかしいじゃないか、なんで僕だけ。
おかしいじゃないか。なんで魔法が人より劣っているからってだけで皆ボクの事をからかうんだ、馬鹿にするんだ!
悲痛な叫びは救世主には聞こえない。天使にも届かない。
けど、
だけど、
悪魔になら
書庫の一角が光った気がした。
ぼんやりと、一冊の本の背表紙が光っている。
気のせいじゃない。
カナタは恐る恐る近づき、そおっと本を抜き取った。
「何だろう…この本。タイトルが付いてない…?それに中は………っ!」
びっしりと書かれた魔法陣。その一つが光りを放ちながら回りだす。
光はどんどん大きくなっていく。あまりの眩しさに目を瞑る。
「うわっ!!」
空中に多重になって浮かぶ魔法陣。溢れだした光が収束していく。
形が作られる
人の形
「………え?」
胸は大きく、人の姿カタチをしているのに頭には角が生えている。尻にはしっぽが付いている。最後に顔。思わず息を吞む。カナタがいままで見てきたどの女性よりも美しかった。
「こんにちは!私はリリー。君は何を望むの?」