91 継承Ⅰ
「いいか。お前はまず、剣の握り方からなってねぇ」
「いや、こっちの世界じゃ普通の握り方なんですけど」
「だからダメなんだ。そんなにガッチガチに握り込んでたら、瞬間的な衝撃に耐えきれねぇ上に手首の柔軟性が激減して技のキレが悪くなる。強くなるためには剛の剣だけじゃなく、柔と剛、両方を瞬時に使い分けることが必要なんだ」
「なるほど。だからあえて利き手のほうは添えるだけなんですね!」
「そうだ。こうすれば手首の返しがしやすいし、瞬時に力を込めるのも容易だからな。ああ、それから握る位置と両手の間隔も気を付けろ。一番力がのりやすい位置かつ瞬間的に力を込めやすい位置がいい」
「こう、ですか?」
「それでいい。特に攻撃は一瞬。この一瞬で、最大出力を絞り出す必要があるからな。一撃で確実に敵を殺せなければ、死ぬのはお前だ。よく覚えておけ」
俺は彼に言われた通りに剣を握り、軽く振ってみる。
「ふっ! はっ!」
凄く軽く感じる。これだけでも大分変わったのでは?
と思ったが、
「あ~それから、お前、緩急の付け方が下手くそ。ダメダメ。そんなんじゃ蚊も斬れねぇわ」
彼にはまだまだのようだ。
っていうか蚊を斬るとか無理じゃね?
「緩急・・・ですか?」
「戦闘中、ずっと動き続けられる奴なんかいない。そこには必ず隙間がある。これをドンピシャで狙えれば確実に勝てると思わないか?」
「でも、その“間”は相手の呼吸によりますよね?」
「違うな。その“間”を狙い通りのタイミングで作り出せるかどうかはお前の技量次第だ。攻防の中で緩急をつけることによって相手をコントロールする。これが自分のペースで戦うってことなんだわ。で、そのためには・・・」
彼は剣を持ち、素振りをはじめる。
「いいか? 緩急っていうのはな」
そのまま物凄くゆっくりとした動作で剣を上段に構えた。
「!?」
と思った瞬間にはすでに振り下ろされていた。
なんだこの人。レベルが違う。剣の神様か何かなの? 俺でも剣の動きが全く見えなかったんですけど・・・。
「こういうことじゃねぇ」
違うんかい! 今のめっちゃそれっぽかったじゃん!!
「え~と、すみません。意味わかんないです」
「あん? わかんない? まあ、要するに、緩急っていうのは一辺倒じゃダメだって話だ。どんなに鋭い緩急をつけても、それが同じような動作とスピードの繰り返しじゃあ意味がねぇ。縦、横、斜め、色んな角度からの斬撃。そして、ゆっくりとした動作と早い動作にスピードのバリエーションを持たせるのが重要だ。組み合わせ次第で予測不能な緩急の付け方ができる。分かったか?」
「つまり、色んな緩急の付け方で自分のペースを作り、相手の隙を誘って倒すってことですか?」
「まあそういうこった。なかなか物分かりが良いじゃねぇか」
「ありがとうございます」
そうしてしばらくの間、俺は彼に剣術を教わった。
色々と新しい技も見せてもらったし、起きたら修行しないとな。まあ、起きられるのかすっごく不安なんだけど・・・。




