83 サプライズ
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――会場に入った瞬間。
ピタリと拍手が止む。
静けさの中に漂うのは熱を帯びた溜息。
きっと会場の花たちがクリスのイケメンオーラにあてられたに違いない。紅潮した顔は、まさに太陽の光を浴びて熟れた果実のように甘い香りを振りまいているようだ。我が親友ながら恐るべしである。
会場に入って三歩。タイミングを揃えて一礼し、そのまま背後の扉が閉まるのを待つ。
――数秒後。
俺たちは、扉の閉まる音と同時にゆっくりと顔を上げ、会場の奥へと歩き出した。
そこでようやく目を覚ました者たちが、チラホラと歓迎の拍手をくれる。全員が戻って来るにはもう少し時間がかかりそうだ。
そのまま周りに軽く手を上げて挨拶しながら、揃って会場の奥まで歩いていく。
ゆっくりと歩きながら会場内を見回せば、何人か見覚えのある顔、騎士予備校のクラスメイトたちがいるのが見えた。
おっ! あれはキルトン兄妹だな。流石は高位貴族の子供たち。カフスもサーヤも実に堂々とした立ち姿である。
二人の着ているドレス。デザインはもちろん、その濃い青と淡い水色の髪が綺麗なコントラストを与えていて、とても気持ちがいい。同じ色のドレスを着ているところ、やっぱり仲が良いな。あの兄妹。
そうして奥まで歩いていくと、一段高くなっている部分が用意されており、クリスはそのままそこへ上がっていった。
俺は手前で歩みを止め、クリスの様子を眺める。
壇上に上がったクリスは軽く一礼してから、
「本日は、我がマグズウェル家主催のお茶会へお越し頂きありがとうございます。当主に代わり、マグズウェル家次男である私、クリス・マグズウェルがご挨拶をさせて頂きます」
と簡単な自己紹介をした。
そして同時に俺のほうに手を向けながら、
「既にお気付きの方もおられるでしょうが、本日はサプライズゲストをお迎えしております。こちら、我が親友にして、なんとあの英雄カイルのご子息! ジェフリー・カーティス殿です!!」
と、俺の紹介をしてくれる。
一瞬で会場は喧噪に包まれ、そこかしこから黄色い声が聞こえてくる。これが世に言うモテ期ってやつなのだろうか・・・?
色とりどりの美しいドレスに身を包んだ、花の妖精(のように可愛らしい女の子)たちが俺の名を呼ぶさまは、どこかむず痒く恥ずかしい。
正直言って違和感しかないというか、俺の完璧な作り笑いが早くも剥がれ落ちてしまいそうである。
などと、辛うじて維持している笑顔で手を振りながら内心焦っていた俺だったが、ここであることに気づく。
・・・・・・ん? いや、ちょっと待った。
なんであいつが父さんのこと知ってんの?!
今までそんな素振り見せなかったじゃん!!
しかもあっさりバラしちゃうし!
実は俺へのサプライズだったとか?
いや、そんなはずないよな・・・。
もしかして貴族の間では有名な話なのかも?
まあ、国王様から直々に爵位を賜ったのだから、カーティスという名前が貴族社会で広く知られていてもおかしくはない・・・のかもしれない。
俺の困惑をよそにクリスは話を続け、
「それでは最後に。皆様に良き出会いが訪れますことをお祈りし、開会の言葉と致します」
やがて挨拶を終えた。
俺はとりあえず満面の笑顔でクリスが戻って来るのを待つ。
さあ説明してもらおう。あの紹介は何なんだ!!




