74 不審な男
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ブクマ、評価、感想は気が向いたらで。
ティナと仲直りをしてからは、回復魔法の練習も定期的にするようになった。冒険者活動の時にもそこそこ使う機会があったせいか、自分でも驚くほどの上達っぷりだ。
都合の良いことに、回復魔法の練習をしていると魔力制御がより効率的に鍛えられ、いつの間にか身体強化も半日以上は継続使用できるようになった。これは中々の成果だろう。
まあ、これだけ鍛えても剣や篭手に魔力を通すことは全然できていない状況なので、【纏い】を使えるようになるのは、まだまだ先になりそうだけれど。もっともっと繊細な魔力制御が必要なんだろうな・・・。
そんなこんなで、騎士予備校に来てから早くも一年が経った。
俺たちのクラスは例年より結束力が異常に強いらしく、成績についても過去最高を叩き出しているという。
これなら来年の入試は上位独占だな、などとウィル教官が上機嫌に話していたので、まあ信じても良いだろう。
最初は貴族や平民といった身分差によりギスギスした雰囲気だったが、今ではそんなものは一切なく、お互いがライバルというか、切磋琢磨する仲間という感じで、とても良い雰囲気となっている。
放課後の居残り練習以外にも朝練や休日練などをしている生徒も多いらしく、それぞれができることを精一杯やっているという様子である。
そんな俺たちもすでに11歳となり、残すところあと一年なのだが、当然そうなると、新たな生徒たちが入校してくるわけで・・・。
実はこの新入生というのが、今俺を悩ませている原因であるのだった。
――出会いは数日前。
その日は新入生たちの交流会(去年俺が寝過ごしたやつ)だったため、学校も休校となっていた。
俺はいつも通りの日課を終わらせた後、これまたいつも通りザッシュを連れて冒険者ギルドに向かおうとしたのだが、不幸にも校門の前で右往左往する妙な男を発見してしまう。
何者かと尋ねると騎士予備校の新入生だという。
しかし、俺たちは思った。
「「こいつどう見ても学生じゃないだろ」」と。
なぜならこいつ、身長は170センチをゆうに超えており、服の上からでも分かるほどに盛り上がった立派な筋肉を持つ偉丈夫なのだ。
たしかに顔にはまだ幼さが残るものの、短く切り揃えられた黒と白の斑髪と尖った眉毛が、それを上回る圧倒的な風格を与えており、全く子供に見えない。若く見積もってもせいぜい童顔の青年くらいが関の山だ。
ちなみに俺は11歳となり、身長もだいぶ伸びて、今では150センチくらいである。このままいけば父さんと同じく、180センチくらいにはなれるだろう。そんな淡い希望を胸に、日々身体の成長を願っている青少年である。
目の前のこいつが十代、しかも俺より年下なのだとしたら、間違いなくやべぇ奴だ。身のこなしを観察しただけでもかなりの強さだというのが分かってしまう。
クリスやザッシュよりは確実に格上だな。
下手すると俺と互角かそれ以上かもしれない。
俺は相手の動きに警戒しつつ、話を進める。
「じゃあ、どうして入らないんだ?」
俺たちの剣呑な雰囲気に気づいたのか、男は慌てて答える。
「え、あ、いえ! 騎士予備校って本当にここで合ってますよね? 思ったよりも立派すぎて入り辛いというか、その・・・」
なんだろう。既視感があるというか、反応が一年前の俺とそっくりだなおい!
仕方がない、ここは先輩として後輩の背中を押してやろう。
「大丈夫! 間違いなくここが騎士予備校だよ」
言った瞬間、男は満面の笑みを浮かべて飛び上がった。
「本当ですか!? やった!! ありがとうございます!!」
笑うとめっちゃ子供っぽいな!
礼儀正しくていい奴っぽいし。
これは良い後輩が入って来たぞ。
そんなことを考えていたら、
「ところで、この学校にジェフリー・カーティスって人いますよね? 先輩方、ご存じですか?」
なぜか俺の名前が出てきた。
唐突すぎて内心焦るが、できるだけ平静を装って聞き返す。
「どうした急に。何か用でもあるのか?」
しかし、男は笑顔のまま特大の爆弾を投下してきた。
「ああ、いえ。大したことじゃないんですけど、俺の因縁の相手なので。ここに来たら絶対ぶっ倒すぞって決めてたんです!」
「「・・・・・ん!?」」




