69 ウィル教官の暴挙?
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こいつ何を急にイカれたことを言ってやがるんだ?
俺の隣って言ったら・・・ゴクリ。
いやいや、それはマズいって!
ティナだぞ! 女の子だぞ!
な、なんて破廉恥なんだ!!
俺は内心の動揺を気づかれないように全力で平静を装いつつ、さりげなく隣をチラリ。
ひぃいいいい!
これは今までに見たこともないほど強烈な殺気だ。
絶対に触れてはいけない危険物である。
おぃいいいい!
どうしてくれるんだウィル教官!!
しかし、ウィル教官は全く気にしたふうもなく言葉を続ける。
「いいか貴様ら! 騎士たるもの、常に仲間を助け、協力して任務をこなさなければならない。そのためには回復魔法を習得しておく必要がある」
そしていきなり質問をぶん投げてきた。
「なぜだか分かるか?・・・・ジェフリー・カーティス!」
俺かよ!!
「え? あ、はい! 王国騎士は遠征中、必ずしも補給を受けられるとは限りません。なので、回復用の魔法薬が無くなった場合でも、自分たちで回復する手段を持っている必要があるからです」
あっぶねぇ。急に振ってくんなよ。
「そうだな。今、ジェフリーが言ったように遠征任務中はもちろん、急な災害時にも回復魔法が使えるかそうでないかで救える命の数は大きく変わってくる。人々を守り、導く王国騎士になるには回復魔法が必須ということだな。というわけで、今から隣の奴と二人一組になってもらう」
なるほど。回復魔法の授業か!
・・・いや、でもなんで服を脱がす必要があるんだ?
カフスも疑問に、というかサーヤがどこの馬の骨とも知れぬ輩(実際にはクラスの仲間なんだが)に脱がされるというのを想像し、我慢ならなかったのだろう。物凄い剣幕で怒鳴り散らした。
「ウィル教官! 回復魔法の訓練ということは分かりましたが、なぜ隣の人の服を脱がす必要があるのですか!! 僕の妹に手を出す輩は決して許しませんよ!! 大体、サーヤの服を・・・」
それから十分少々。
流石に怒鳴り疲れたのか、カフスが静かになった。
ようやくできたこの一瞬の隙を見逃さず、ウィル教官が早口で説明(弁明?)する。
「ま、待て待て! カフス、違うんだ。服を脱がすと言ったのは言葉の綾で、決して裸身を晒せと言っているわけではないんだ! ほら、剣術の摸擬戦なんかでできたちょっとした打ち身が腕や足にあるだろう?それを治療するだけなんだ。裾をちょっとだけ捲るだけでいい」
どうやらカフスの剣幕にそうとう焦ったようだ。
まあ、いくら学校の中は等量斉視、学生皆平等だと言っても、今の発言をキルトン兄妹の実家に報告なんてされたら流石にヤバいもんね・・・。
ティナのほうも今の説明で落ち着いた様子だし、助かったよ。
いきなりぶっこんできたウィル教官の自業自得だけど。
きちんと猛省してくれ。
そうして生徒たちが落ち着いたことを確認し、ウィル教官が指示を出す。
「そ、それじゃあ。とりあえず二人一組になってくれ。これから回復魔法の使い方を教える」
指示通り、各々隣の席同士でペアを作る。
俺の相手はティナだ。
「ティナ。よろしくね!」
「う、うん・・・」
なんだろう。ティナの様子が少しおかしい。元気がないような、何かに悩んでいるような、そんな悶々とした感じだ。
「ティナ大丈夫?」
素直に聞いてみるが、ティナは、
「な、なんでもないわよ!」
と言って、すぐにそっぽを向いた。
残念ながら俺は、これがティナが嘘をつくときの癖であることを知っているのだ。おそらく目が泳ぐ癖を隠すためだろうと思われるが、バレバレである。
やっぱり何かあったみたいだ・・・。




