7 摸擬戦~カイル視点~
父カイル視点です。
今朝、ジェフの素振りを目にしたときは驚いた。
身体に一切無駄な力が入っておらず、それでいて流れるような鋭い振り下ろし。
足の運びも次の攻撃を意識した良い動きだったし、前後左右に緩急をつけた鋭い斬撃は舞を踊っているかのようだった。
5歳の時、俺を訪ねて家に来た元部下ギルバートに憧れ、騎士になりたいと言い出したジェフは、あれから一日も休まず鍛錬し続けていた。
9歳になってからは体力もついてきたため、少しずつ摸擬戦もするようになった。
初めのうちこそぎこちない動きだったが、すぐに慣れたのか本気で打ち込んでくるようになった。
何度か摸擬戦をしているうちに気づいたことだが、ジェフは目がいい。
おまけに反射速度がとても速く、勘も鋭い。こちらから攻撃しようとするとすぐに反応し、受け流してくる。
ただ、やはりまだ子供。不意をついた攻撃でもいちおう反応はできているが、咄嗟に身体が硬くなり、上手く受け流せない様子だった。
しかし、今朝の動きを見て思った。
何かがハマった。と
おそらくあれがジェフの理想の剣技だ。
午後になり、ジェフとの摸擬戦の時間になった。
「ジェフ!準備はいいか?」
「いいよ。父さん!」
「よし!じゃあかかってこい!」
ジェフは一直線に俺に向かってくると、上段からの振り下ろしを繰り出してきた。
「!!」
想像以上の鋭さに思わず後退しそうになったが、なんとか受け流すことができた。
それから何度か打ち込んできたが、俺の方も慣れてきたため、容易に受け流すことができた。ジェフもそれに気づいたのか、仕切り直そうと後退の動きを見せた。
ここだ!
俺は一瞬の隙をついて踏み込み、横薙ぎの斬撃を繰り出した。
ジェフは一瞬驚いた顔をしたものの、身体を硬くすることはなく俺の横薙ぎを見事に受け流した。
さらに驚いたことに、俺の力をいなしながら木剣をからめとり、宙へ放ったのだ。どうやったのかは全くわからなかったが、とにかく凄かった。
ジェフは天才だ。その才能は俺を軽く凌駕するかもしれない。
まあ、負けたのは悔しいが、ジェフは俺の自慢の息子だ。
ただ誇らしく、嬉しかった。
顔がにやけて全く締まらないが、
「よく頑張ったな!ジェフ!」
とりあえず今は息子をひたすら褒めてやりたい。