60 美味しい話?
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久しぶりに会ったパイさんが荒れている?
とりあえず何があったのか聞いてみよう。
「一体どうしたんですか?」
「いや~そのね、依頼の貼り紙を見ていたら突然声をかけられたのよ。俺とパーティーを組まないかって。いかにも下心満載で嘗め回すような目線を向けてくるから、気持ちが悪くって無視していたんだけど、そしたら急に掴みかかって来るから、つい・・・」
と少し恥ずかしそうに話すパイさん。
いや、だったら外套くらい羽織ったらいいのでは?と思うのだが、肩がこるから嫌なんだとか。ご立派なものをお持ちですもんね・・・。
それはさておき、久しぶりに会えたのだ。ここはひとつパイさんに相談してみよう。ああ、もちろん金欠のことは言わないぞ!恥ずかしいからね!
「実は、ちょっとこの辺の魔物でも討伐しようかなって思って、久しぶりに冒険者ギルドに来てみたんです。」
「へっ!?そうなの!!」
途端に嬉しそうな笑顔を見せるパイさん。
随分と喜んでくれているみたいだ。笑顔が眩しい!
とりあえず金欠とは言えないので、腕試しとでも言っておこう。
「あ、はい。王都で半年間、色々と鍛えてきたので、腕試し的な感じで・・・」
すると神妙な顔つきで頷くパイさん。
「あ~うんうん。たしかに、かなり成長したみたいね。あれから魔法も欠かさず練習しているの?」
「はい!身体強化魔法も大分使えるようになりましたし、魔力制御のためにやっている水魔法もかなり上達したかと。」
あれからコツコツ訓練を続けた俺は、数分間しか使えなかった身体強化魔法を三時間程度まで持続させられるようになった。魔力の制御ができるようになってきた証拠だ。
まあ、まだまだ自身の膨大な魔力に引きずられて、効率よく使えている感じではないのだけれど。完璧に制御ができれば、一日は持続可能な気がするのだ。多分だけど。
「ん~それなら・・・これなんてどう?」
パイさんは早速依頼書を一枚持ってきた。
「え~と、ドラゴンテイルですか?」
「そっ!王都の北側に大きな渓谷があるの知ってる?」
「あ、はい。たしか、タタン渓谷でしたっけ?」
「そうそう。そこに生息する魔物がドラゴンテイル。その名の通り、ドラゴンみたいな立派な尻尾があるトカゲなんだけど、その割に身体が小さくて素早いの。鋭い爪と足の筋肉で断崖絶壁も駆け回るヤツ・・・らしいわ。」
なぜ伝聞?
「え~と、パイさんも戦ったことないんですか?」
「もっちろん、あるわけないじゃない!」
そんな笑顔でサムズアップを決めなくても・・・。
「だ、だって私、ウラノスでしか活動してこなかったんだもの。タタン渓谷にだって行ったことないし、当然、ドラゴンテイルなんて見たこともないわよ。」
ちょっといじけた仕草が大人可愛いパイさんである。
まあ、あれだけ狩場が多かったら、わざわざウラノスから王都にまで来ないよな。
「でも、やけに詳しいですね。」
「ん?ああ、そこはほら。事前の情報収集は“冒険者の嗜み” でしょ?この辺の地形とか魔物とか色々と調べたのよ。身の安全のためにもね!」
やっぱり流石だなぁ、パイさんは。こういうところを見習わないといけないよなぁ。金欠だからって、行き当たりばったりで魔物の討伐とか行こうとしたバカはどこのどいつだ!全くけしからん!
「そういえば、入手した情報によると、ドラゴンテイルの尻尾のお肉はとっても美味しいらしいわよ。ギルドのほうでもそこそこの値段で買い取ってもらえるみたい。」
「そ、そうなんですか!ぜひドラゴンテイルの討伐にご一緒させてください!」
「え、ええ。なんだか凄いやる気ね・・・・・(食べ盛りなのかしら。そんなところも可愛いけれど。ウフフ)」
おっと、高額と聞いて思わず前のめりになってしまった。
俺はいつから金の亡者に・・・気をつけよう。
とそんなわけで、俺は久しぶりに再会したパイさんとドラゴンテイルの討伐に向かうことになったのである。




