59 悪い子
そんなこんなで騎士予備校生活にも大分慣れ、あっという間に半年が過ぎた。
最近ではクラスもかなりまとまり、切磋琢磨する日々である。時々ティナやクリスたちと王都内を散歩したり、ちょっとした買い物なんかもするようになった。
しかしそんなある日、俺は重大な危機に直面することになる。
何を隠そう、“金欠”である。
お金がない。実に深刻な問題だ。
もともと実家から持たされたお金は、そのほとんどが予備校の授業料やら寮管理費に消えた。
まあ、辺境の騎士爵家にお金なんかあるはずがないので、あれでも相当無理して持たせてくれた大金だったのだ。だから当然、今後の仕送りなんかには一切期待できそうもない。
今まではジャギーコングや道中で狩った魔物の報酬でなんとか生活できていたのだが、さすがにそろそろお金がない。
寮生活なんだからそんなに使わないだろうって?
いやいやここは王都、大都会である。美味しい食べ物も変わった本もカッコイイ服だってあるのだ。まさにサ・イ・セ・ン・タ・ン!
そんなところに、辺境のさらに辺境から出てきた田舎者が突然放り込まれたらどうなるか。火を見るよりも明らかである。
決して、決して無駄遣いしているわけではないが、自然とお金が減っていくのは避けられない。
それにほら、友達付き合いってあるだろう?
ティナたち平民の女子にすら、
「平民でももう少しまともな服着ているわよ」
なんて言われたら、これはマズいってなるわけで。
全く不本意ではあるが、新しい服くらいは買わないと!
さすがに王都を散策するのに継ぎ接ぎだらけの服を着ていくわけにもいかない。恥ずかしすぎる!
それからやっぱり、訓練の疲れを癒すには、甘いひと時も必要だ。
少し前までは、実家で出される鍛錬後のお菓子が最高のひと時だったが、最近は美味しいものが多すぎる!これを全て食べつくすまでは死んでも死にきれないとさえ思えるほどだ!
などと御託を並べて金欠の言い訳をする悪い子は誰でしょう。
そう、ジェフリー・カーティスです。すみません・・・。
というわけで俺は今、お金を稼ぐために冒険者ギルドへ向かっている。手っ取り早く魔物を倒してお金を稼ごうという魂胆である。
そういえばグレイシス辺境伯と父さんも学生時代にドハマりしたって言っていたなぁ。こういうことだったのだろうか?辺境伯が金欠とは思えないけれど・・・。
ここの冒険者ギルドも王都に来た時以来だから大分懐かしい感じだ。
パイさんはどうしているだろうか。たまには顔を見せなさいって言っていたし、運がよければギルドで会えるかもしれない。この半年間の成長を見てもらいたいな。
そんなことをつらつらと考えながら、冒険者ギルドの扉を開けようとした時だった。
「!?」
冒険者らしきおっさんが中から飛び出してきた。飛び出してきたというより、吹き飛ばされてきたと言うほうが正しいかもしれない。
おっさんは何回か転がったあと往来で蹲っている。
やがて扉の向こうから一人の女性が姿を現した。
「あら、もうお終いなの?歯ごたえのない男ね。ダンスはこれからでしょ?」
見覚えのありすぎるビキニアーマーに、艶っぽい色香を漂わせたお姉さんボイス。華奢な四肢からは想像もできない怪力の持ち主で、冒険者の間では【剛拳】と恐れられる人物。
「あの、パイさん?」
「・・・・・・ジェフ君!?」




