57 競い合う二人
俺は早々に諦めて二人がこちらへ来るのを待つ。
なんだかよく分からないが、お互いに押し合いへし合い向かってくるのだ。
そして、我先にと俺のもとへ駆けてきた二人は、開口一番にこう聞いてきた。
「「なあ!今のどっちが優勢だった?俺だよな!!」」
息ぴったりだな!おい。どこの宿屋夫婦だよ。
というか、見てたの最後のほうだけだったからわからんし・・・。
まあ、見るからに拮抗しているようだったから、互角ってところかな。
「え~と、互角?」
しかし、俺の返答が気に入らなかったのか、二人はその場で言い合いをはじめてしまう。
「いやいや、どう見てもこいつ、俺の大剣で吹っ飛ばされてたろ!」
「はぁ?!あれは完全に受け流してたし!お前のほうこそ俺の両手剣についていけてなかったじゃん!反応遅すぎ!」
「あん!手数が多いだけで大したダメージなんてなかったし!敢えて身体で受けるってこともあんだよ!知らねーのか?」
「でも喰らってたのは事実じゃん!それに、敢えて身体で受けるとかばっかじゃねぇの。ダメージ与えた分、俺の優勢勝ちだね!」
「はぁ?!俺の一撃で動けなくなってたのはお前だろ!あの時点で俺の勝ちだわ!」
「いやいやいや、懐に入られた時点でお前の負けだから!真剣だったら終わってっから!」
「お前の貧弱な腕じゃあ、真剣持ってあんなに早く動けませーん。」
「はっ!お前だって真剣だったらあんなに振り回せないくせに!」
「なんだと!」
「んだよ!」
随分と仲が良いみたいだな。
その調子でずっとやっていてくれ。
俺は寮に帰るから。
なんで朝からこんな面倒ごとに付き合わなきゃいけないんだ。訓練場なんてスルーして寮に戻ればよかった・・・。
俺はさっさと踵を返し帰ろうとする。
しかし迷惑なことに、二人はそれを許さない。
勢いよく俺の肩を掴んで離さないのだ。
「「おい待て!こうなったら俺たちと勝負してくれないか!」」
「え!?なんで?」
「「実際に戦ってみたらどっちが強いか分かるだろ?」」
おまけに訳の分からない提案をしてくる始末。
いや、なんでそうなる!勝手にやってろ!
「面倒くさいので、遠慮しておきます!」
ニッコリ笑顔で爽やかなお断り。これぞ処世術(?)
そんな爽やかなお断りをもサラッと無視し、なおも食い下がる二人。
「なあ、いいだろ?」
「頼む!じゃないとこいつが納得しないんだ!」
「あん!納得してないのはお前だけだろ!」
「それはこっちのセリフだ!」
「いいや、俺のセリフだ!」
「なんだと!」
「あん!」
はぁ~。どうしよう。そろそろ食堂も開いている頃合いだしなぁ。
結局困り果てた俺は、サクッと終わらせて帰ることを決意。
「じゃあ、二人まと・・・」
「なら、ボクが相手になろうか?」
二人まとめて相手しようかと言おうとした俺の声に、聞き覚えのある声が重なった。
振り向けば、訓練場の入り口のほうから歩いてくる人影が一つ。
栗色の髪に同色の瞳。しかしいつもと雰囲気が違う。ピリピリしているというか、なんというか、もしかして怒ってる?
「クリス?どうしてここに?」
「ジェフ君がいつまでも食堂に来ないから探しに来ちゃった!」
と思ったが、いつもと変わらない調子で答えるクリス。
それから呆気に取られている二人に向き直り、もう一度。
「ボクが相手になろうかって言ってるんだけど?」
いや、やっぱ怒ってる!こいつはヤバい!
だってさっきから物凄い殺気を二人に叩きつけているんだもの!




