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転生騎士の英雄譚  作者: 青空
騎士予備校
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51 見えない壁

午前中の授業は、それほど難しくなかった。


一般的な読み書きに計算、国の歴史など。どれも実家の書物で勉強した内容の復習だ。周りもそれほど苦戦している様子はなく、授業はスムーズに進行した。


まあ、授業開始初日だし、こんなものだろう。これから少しずつ難しくなっていくに違いない。


さて、午後の授業である。まずは剣術の授業だ。


やはり、国中から優秀な人材を集めただけのことはあるようで、全体的に技量が高い。ただ、思った通りというか、今朝俺に一瞥をくれた5人、そしてクリスの技量は頭一つ抜けているようだった。


まあ、負ける気は全くしないけれどね。


そんなことを思いつつ、今度は魔法の授業。


当たり前だが、騎士を目指す人たちはみんな、循環系の魔法適正を持っている。このクラスの人たちも全てそうだった。例外は放出系と循環系の両方の適正がある俺だけ。


だから、授業も必然的に循環系の魔法についてのみとなる。騎士学校入学に必要になる魔法は、身体強化魔法と回復魔法の二つだそうで、これを重点的に鍛えるらしい。


まあ、俺の場合、身体強化はほぼ問題なく使いこなせるようになっている。あとは回復魔法を覚えるだけなので、大丈夫だろう。回復魔法については追々教えてもらえるそうだ。


さて、ここまではいい。きちんと努力した成果があらわれている。


しかし、問題は社交ダンスと礼儀作法だ!


実家で少しだけ教えてもらった社交ダンスなんて、所詮児戯に過ぎなかったのだ。礼儀作法も最低限出来るかなというレベルで、そこまで細かい動きやルールについては覚えていない。


結果、どちらも素人に毛が生えた程度にしかこなせないのだった。なんとも無様である。


ちなみにクリスのほうは、さすがだった。


あいつ、やっぱりいいとこのボンボンだったらしい。実に優雅に振舞うさまは、社交を彩る花の貴公子といった感じだった。解せぬ。


それから意外だったのが、隣の席の彼女。


鋭い目つきにツンと澄ました(かんばせ)は、いかにも意地悪な貴族令嬢然としているのだが、実は平民出身で社交ダンス、礼儀作法ともにクラス最低評価。これには流石に驚いた。


そうして、授業終了後のことである。


なんだかクラスの中にギクシャクとした雰囲気が漂っているのだ。それらの生徒を見て、俺はすぐにこの原因を悟る。


今日の午後に行われた2つの授業、社交ダンスと礼儀作法。原因はこれらによって、浮き彫りとなった()()()()である。


はっきり言ってしまうと、平民と貴族の()だ。


ある程度ちゃんとした貴族家で育った生徒たちにとって、社交ダンスや礼儀作法は生活の一部、出来て当たり前のもの。しかし、平民出身の生徒たちにとっては、全く分からない未知なのだ。


結果として彼らは、自覚してしまった。絶対的な身分差が、そこに存在しているということを。


そして同時に葛藤しているのだ。身分を重視するか、友情を重視するか。


まあ、この予備校もそうだが、学校という教育機関において、身分差を振りかざし他者を虐げる行為は、全面的に禁止されている。それは切磋琢磨、生徒同士の競争によって成長を促すという理念に沿わないからだ。本来、生徒同士は対等であるべきなのである。


しかし、社会的に弱い立場の平民にとって、これは非常に難しい問題となる。学校内でのトラブルであれば教師陣による仲裁が期待できるが、個人的なトラブルが生じた場合、貴族相手に戦うことは無謀でしかない。最悪、命を落とす可能性だってあり得る。


だからこそ、彼らは慎重にならざるを得ない。


俺個人としては、全くくだらないと思うのだが。そう簡単にはいかないよな・・・。


結局ギクシャクとした雰囲気は解消されないまま、それぞれが寮に戻っていく。


俺とクリスは特に気にせず、二人で寮に戻ることにした。


しかし寮に帰る途中、俺はふと忘れ物をしていることに気づく。


「あ!ごめんクリス。教室に忘れ物をしたみたいだ。先に行っててくれ!」


「うん。分かった。じゃあ、またあとで。」


とりあえず、俺はクリスに先に行くように言うと、急いで教室へと戻った。


「え~と、あった!」


俺は忘れた筆記用具を回収し、さっさと寮に戻ろうと教室を出る。


「~~~~♪」


すると、どこかから聞き覚えのある音楽が聞こえてきた。


「ん?」


その音を頼りに歩いていくと、やがてダンスホールのある部屋の前に辿りついた。今日の社交ダンスの授業で使用した教室だ。


どうやら誰かがダンスの練習をしているらしい。俺はなんとなく気になってドアの隙間から中を覗く。


「・・・ん?」


するとそこには・・・


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