50 鬼教官あらわる?
お読み頂きありがとうございます!
ブクマ、評価、感想などお気軽にどうぞ。
次の日、今日から授業開始である。
昨日の交流会は、やむなく欠席してしまったが、今日から頑張ろう。
俺は日課を終わらせると、昨日と同じようにクリスと朝食をとり、一緒に教室へ移動した。
教室にはすでにほとんどの生徒が集まっていた。
入って来た俺たちに一切気づかず、談笑を続ける人たちが多い中で、5人。こちらを一瞥し、サッと視線を逸らした生徒がいた。
俺はとりあえず気づかなかったふりをして、自分の席に向かう。残念ながらクリスとは大きく離れてしまった。唯一の友達が・・・。
はぁ~仕方ない。隣の生徒に話しかけてみるとしよう。
なぜこんなに気が重いかって?
実はこの人物、先ほど俺たちを一瞥してきた5人の中の1人なのだが、このクラスでは珍しい女生徒であるのだ。まあ、珍しいとはいっても、生徒数40人のうちの9人が女生徒であるから、それほどでもないのかもしれないが。
まあ、そんなことはどうでもいい、問題はそこじゃない!
今、俺は史上最大のピンチに陥っている。正直に言ってしまおう。
どうやって話しかけたらいいんだ!!
俺は同年代の女の子と話したことがない。俺の周りにいた女の子といえば妹のエリスくらいだった。大体、辺境のさらに辺境にある小さな家に、愛娘を連れてくるような奇特な人間、いるはずがないわけで・・・。
だから当然、どう接していいのかが分からないのだ。う~む。これは困ったぞ。どうする俺!
そんな内心の焦りを隠しつつ隣をチラリ。
ひぃ~!睨んでいる、明らかにこっちを睨んでいる!
そして隣の女の子は、俺を睨みつけたまま一言。
「はやく座ったら?もうすぐ教官が来るわよ。」
物凄く怒られるのではないかと気が気じゃなかったのだが。あれ?もしかして、凄く親切な子だった?
「・・・あ、うん。ありがとう。」
俺は素直にお礼を言った。
「べ、別に!そこに居られると邪魔なだけよ!」
しかし、彼女は一瞬で機嫌を損ね、そっぽを向く。
単に邪魔だっただけのようだ・・・すみません。
席に着くとすぐに、教官らしき男性が教室に入って来た。
片目は眼帯で塞がっており、髪は短い群青色。薄く映えたあご髭が渋いおっさん顔をより際立たせており、がっしりとした体躯はいかにも歴戦の猛者っぽい。
一目見て判る。相当強い。グレイシス辺境伯家のゴッド執事長よりも上だ。まああの人、全盛期はもっと凄かったのだろうけれど。
などと考えていたら、突然野太い声が教室に響き渡った。
「全員起立!」
「おわっっと!」
あまりにも唐突な号令に俺を含め何人かが遅れてしまった。瞬間、教官の怒号が飛び出す。
「遅い!!戦場では一瞬の油断が命取りだ!いいかお前ら!授業中は決して気を抜くな!」
「「「はい!」」」
「よし!それでは授業を始める。が、その前に俺の自己紹介をしておこう。俺の名はウィリアム・ウィールズ。今日からお前らの指導教官だ。今日からウィル教官と呼べ!」
え!?ウィールズ?ってまさか・・・。
俺たちの驚愕を察したのか、ウィル教官が続ける。
「そうそう。気づいた者もいるかもしれないが、寮母のマリエル・ウィールズは俺の妹だ。よーく覚えておけ!」
「「「はい!」」」
こっわ!あんな聖母のような女性の兄貴がこんな鬼教官かよ!
諸君も不埒な行いは厳に慎むように!
決して怒らせてはいけないぞ!
このへんから少しずつ学園要素を入れていこうかと思いますが、この章ではバトルは少なめになりそうです。
本格的なバトル展開はもうしばしお待ちください。(なんとなく予想はついているかもですが・・・)




