49 結果オーライ?
目が覚めたのは日も傾きかけ、空が茜色に染まった時分だった。
当然、交流会などとうに終わっている時間である。
それでも俺は一縷の望みにかけ、本校舎の教室へと向かった。
頼む!まだやっていてくれ!
しかし結果は、当然、誰もいない。
黒板にはズラリ、新入生の名前が席順とともに書かれている。
俺は誰もいない教室で一人、自分の席に座って溜息をつく。
「はぁ~あ。やっちまった・・・」
ふと窓の外を眺めると、真っ赤な太陽と深い藍色のコントラスト美しかった。こんな時でも窓から見える夕暮れの綺麗さは変わらないから不思議だ。などとそれっぽく(?)たそがれていた時だった。
「・・・タッタッタッタ」
誰かが廊下を走る音が聞こえてくる。
その音は、やがて教室の前で止まると、
「ガラガラッ!」
教室の扉を勢いよく開いた。
「!?」
次の瞬間、何者かが目にも止まらぬ速さで教室に転がり込んできた。その人物は肩で息をしつつ、教室の中を一瞥すると、やがて力をなくしその場にへたり込む。
「はぁはぁ、だれ、も、いな、い・・・」
物凄く落ち込んでいるようだ。鼻をすする音すら聞こえてくる。
おそらく、俺と同じく交流会に参加しそこなったのだろう。流石に見ていられなくなり、声をかけようかと席を立った瞬間。
「はっ!?」
物音に気付いたその人物は、首が飛んでいってしまいそうなくらい勢いよく顔を上げると、教室全体をもう一度眺める。やがてこちらに気が付くと、ぴょんと立ち上がり、驚くべき速度で駆けてくる。
まん丸で瞳の大きな目をキラッキラに輝かせながら、特徴的な栗色のくせっ毛を揺らし、満面の笑みを浮かべて駆けてくるさまは、さながら飼い主を見つけた子犬のようである。
「き、き、きき、キミは!」
喰い気味に言葉を発しつつ、勢いのまま俺に突っ込んでくるそいつをギリギリでかわし、とにかく落ち着かせる。
「と、とりあえず落ち着け!」
俺が大声でそう言うと、少し冷静になったのだろう。そいつは深呼吸を一つしてから話しはじめる。
「すぅ~はぁ~。初めまして!ボクはクリス・マグズウェル!今年からこの予備校に通う新入生だよ!」
「俺も今年から予備校に通う新入生。名前はジェフリー・カーティス。よろしく!」
「うん!よろしくね!あ、ボクのことはクリスって呼んで!」
「ああ、じゃあ俺もジェフって呼んでくれ!」
軽く自己紹介が済んだところで、クリスに一つ聞いてみる。
「そういえば、クリスも交流会に参加できなかった感じ?」
クリスは照れ照れとしつつ遅れた理由を教えてくれる。
「う、うん。気づいたら寮のベッドで寝てて・・・えへへ」
俺と全く一緒!こっちまで恥ずかしくなってくるわ!
と内心焦りつつ、俺は平静を装って応じる。
「あ~。まあ、そういうこともあるよな。」
「ジェフ君も遅れた感じ?」
「ああ、ちょっと道中いろいろあってな・・・」
「へ~。」
変なところで無駄な意地を張る男、ジェフリーです。すみません。
それからお互いに軽く身上話などをしつつ寮に帰ると、すでに食堂で夕食をとっている人たちが数人。特にかたまって話しをするでもなく、黙々と食べているさまは非常にぴりついた雰囲気だった。
それらを刺激しないよう、俺たちはさっさと夕食を食べ、部屋に戻ることにした。
驚いたことに、クリスの部屋は俺の隣であった。ルームメイトとはちょっと違うが、いい友達になれそうだ。
初めてできた同年代の友達とのこれからに胸を躍らせつつ、俺はベッドに入った。
ああ、それから明日はしっかりとクラスの人たちとも交流しないとなぁ・・・スヤァ。




