48 寮の中
寮の中は、全体的に白を基色としており、壁や床は白一色だった。汚れも一切見られず、仕事に余念がない。そのおかげか、所々に置かれている花瓶に生けられている花々が、より一層美しく映え、一見殺風景な寮内に素晴らしい彩りを与えている。
「今年新しく入校される方々には、こちらの一階フロアをご使用頂きます。二階フロアについては、去年入校された方々がご使用になっておりますので、お間違えのないようにご注意ください。」
どうやら学年(というより年数?)が上がると、二階に移動するらしい。
その上がないのは・・・まあ、二年以内に合格しろっていう圧力ですかねぇ。
というか、そういった見込みのある生徒を集めているのかな・・・。
などと考えながらマリエルさんのあとを付いていくと、ひと際広い空間に出た。10人かけくらいの長テーブルと長イスが8つくらい二列で並んでいる。その奥には厨房と思しきものもあるので、ここは食堂だろう。
「こちら、食堂となります。基本的に寮生の方々の食事はここでとって頂きます。不要の場合は事前にご連絡ください。なお、寝坊とお残しは一切認めません。くれぐれもご注意くださいね?」
後半マリエルさんの笑顔に凄みが増したのは気のせいだろうか?
一瞬殺気のようなものすら感じられたんですけど・・・こっわ!
絶対に寝坊とお残しはしないように気をつけよう!
「それでは大浴場とお部屋をご案内致します。」
大浴場は思ったよりも広く、一気に2、30人くらいは入れそうだった。ど真ん中にドラゴンの石像が鎮座していたのには、流石に少し興奮してしまったよ・・・。
さらにマリエルさんについて行くと、今度は分厚い木製のドアがズラリと並ぶ廊下に到着した。ここが寮生の部屋らしい。それぞれの部屋のドアには見たことのない不思議な模様のドアノブがくっついている。
「それでは、ジェフリー様。こちらのドアノブを一度握ってください。」
「えっと、はい。」
俺は促されるままドアノブを握る。
「ん!?」
すると、一瞬魔力が吸われる感覚があった。
思わずギョッとして、魔力を止めかけた俺にマリエルさんが教えてくれる。
「こちらは一種の魔道具となっておりまして、魔力を登録した人間しか扉の開閉ができないようにする作用があります。一度登録が完了してしまえば、上書きはできませんので、ご安心ください。そして、たった今この部屋はあなたの部屋として登録されました。」
なるほどなるほど。今のは登録に必要な魔力を吸われただけだったのか。そして今後は俺の許可なく出入りはできないと。セキュリティ完璧ですね!
そこからは寮のルールを一通り説明され、マリエルさんの案内は終了した。
「寮の案内は以上です。ご質問などはありますか?」
「いえ、大丈夫です。」
「それでは、ジェフリー様。私はこれにて失礼致します。何か困ったことがありましたら、入り口脇の寮母室へお越しください。それから、午後からは本校舎にて新入生の交流会がありますので、必ずご出席ください。」
マリエルさんは軽く一礼し、これまた美しく優雅な足取りで去っていった。いいところの貴婦人にしか見えない。まあ、お名前から貴族女性であるのは間違いないだろうけれど・・・。
つい見惚れてしまったのは、年頃の男子ということで何卒お許しください!
それはともかく、目の前の部屋である。
ベッドに机にクローゼット、どれも年季は入っているが一級品の素晴らしい調度品だ。部屋いっぱいに広がる木の匂いが、浮足立つ俺を落ち着かせてくれる。
俺は一通り荷物を整理すると、何となく吸い込まれるようにベッドに横たわった。
そして、目を覚ましたのは・・・。




