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転生騎士の英雄譚  作者: 青空
初めての街
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42 北西区画

そんなこんなで魔法の基礎を教わったあと、俺たちは街の散策に戻ることにした。


朝からいろいろとあったが、流石にそろそろお腹が空いてきたなぁ。


みんなもそう思ったのだろう、満場一致で昼食をとることになった。


しかし、フェイがどうしても連れていきたい場所があるということで、その提案に乗り、俺たちは路馬車を使って北西区画に来た。


さすが路馬車、徒歩とは違いかなりの速さで目的地まで来ることができた。


馬車を降りて、フェイの後ろを歩くことしばし、非常に美味しそうな香りが漂ってきた。


「着いたよ!ウラノスと言ったらやっぱりここでしょ!」


フェイが俺たちのほうを振り返り、テンション高めの声で叫ぶ。


目の前にはさまざまな屋台がズラリと立ち並び、活気に満ちた通りが遠くまで広がっている。


まるで夢で見たお祭りのようだと思った。


だれもかれもが、食べ物や何かを携えて満面の笑顔で練り歩く様子が、なんだかとても眩しく見えた。


俺はきっとこの光景にずっと憧れていたのだと思う。

よく分からないけれど、ちょっとだけキュっとした胸の痛みが俺にそう教えてくれた気がした。


そんなことを考えていたからだろうか、いつの間にかみんなが心配そうな顔で俺を見ていた。


「おーい。大丈夫か~?ジェフ~?」


グレッグが声をかけてくれる。


「ん?んーん!なんでもないよ!」


俺はすぐさま笑顔で答えた。


「ほら!早くいこーよ!」


フェイが待ちきれないといった感じでその場で足踏みをし、俺たちをせかしてくる。


「うん!」


「おう!」


それから俺たちは屋台で売られている串焼きやバゲットに肉の塊を挟んだ豪快な料理、一風変わった麺料理のようなお菓子など実に色々なものを食べまくった。


みんなと食べ歩きをして分かったことだが、グレッグは肉料理全般、ミレーヌさんは激辛料理、フェイは甘~いお菓子がそれぞれ好きなようだ。


俺はなんでも食べる派ですけどね!つまり雑食?


当たり前なのに、それぞれに好みがあるということを知って、ちょっとだけおかしな気持ちになったのは内緒だ。フェイの甘いもの好きには、思わず声を上げて笑ってしまったけれど。


そうしてひとしきり屋台を楽しんだ俺たちは、そのまま雑貨屋や露店が並ぶ通りに来ていた。


色とりどりの美しく輝く石や変わった模様の革を使ったブレスレット、七色に光る羽のような形をした髪飾り、本当に色々な物が並んでいる。これら全て魔物から採れた素材を加工して作られているというから驚きだ。


まあ、値段はお察しの通りというか、ちょっと高めだから気軽に買えそうもないが、いつか帰省する際には、妹のエリーに何か買っていってあげたい。きっと飛び跳ねて喜んでくれるに違いないぞ!


と、可愛い妹のはしゃぐ姿を想像(妄想?)しているところへ、トンッと何かがぶつかる感触を覚えた。


不自然に思ったら案の定、素早い動作で俺の財布を掴もうとしている腕が見えた。


俺はとっさにその腕を掴もうとするが、こちらの動きに気づいたのだろう、そいつはすぐさま腕を引っ込め、すれ違いざまに


「チッ!」


と一つ舌打ちしたあと俺を軽く睨みつけて走っていった。


一瞬だけフードの隙間から見えたのは、黒い髪の毛と黒い瞳のみ。体形や背格好からは少年とも少女ともつかない感じだった。ただ、かなり手慣れているところを見ると、おそらく常習犯だろう。


まあ、あの程度の動きであれば大して脅威には思えなかったし、夢の中で教え込まれていた“スリ”という技と比べるとだいぶ拙い感じであった。大体、相手に衝撃を与えるようでは話にならないし・・・


などと全く変な方向に意識を飛ばしていたら、


「お~い!ジェフ、どうした~?」


またまたグレッグに呼ばれてしまった。


「いい加減おいてくよ~!」


フェイも冗談なのか、本気なのか俺をおいて行こうとする。


いや、あれは本気かもしれない。

待ってくれ、本当に迷子になってしまう!

俺はさっさとみんなを追いかける。


その後もしばらく街中を案内してもらい、日が暮れるころには宿屋『三日月亭』に戻ってきた。


相変わらずフロントの女将さんたちは息ぴったりに出迎えてくれた。受付をしようとしたところ、ここの宿代は通常1泊1万リアらしいのだが、今回は少し狭い角部屋だからと半額の5千リアで泊めてもらえることになった。


なんていい人たちなんだ!


俺は女将さんたちにひたすら感謝しながら受付を完了させた。


部屋に入ってからは、明日の準備を整えた。


剣に防具の手入れ、持ち物確認などなど。


念のためにアンヌさんのお店で回復用の魔法薬もいくつか購入しておいたので、これも持ち物に入れておいた。ちょっとしたケガならこれで治せるらしい。


そうして色々と準備をしたあとは、グレッグたちと1階の食堂で夕食を食べ、お風呂にも入った。


グレッグと背中を流し合ったり、バカ話で笑い合ったのはとても楽しかった。


兄のような友達のような不思議な感覚というのだろうか、正直これが正しい表現なのかは全く判らないが、とにかくすごく心地よかったのは間違いない。父さんと入るお風呂とは少し違う感覚である。


それから俺は部屋に戻り、ベッドに寝っ転がって、今日のことを振り返る。


防具屋に魔法のこと、屋台に露店、長い一日だったなぁ。


明日はどんなことが待っているのだろう。


そんなことを思いながら、俺はゆっくり目を閉じた。


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