41 初めての魔法
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これからも頑張りますのでよろしくお願いします!
それから訓練を続けること数十回、結局成功率は2割ほどである。
隣には見事なスクラップの山ができてしまった。物凄く申し訳ない気分になる。
そんな俺とは対照的に、アンヌさんは全く気にした様子がない、どころか上機嫌でうんうん頷いている。
「うんうん。なるほどなるほど。やはりキミの場合、魔力が多すぎるせいで、微妙な制御が少しやりにくいみたいだね。まあ、これだけやって2割も成功すれば大したもんだよ。」
そうなのか?隣のスクラップ山を見ると全くよしとは思えないのだけど。
「あの、何かコツみたいなのは・・・」
「残念だが、こればっかりは自分で感覚を掴むしかないね。というわけで、簡単なトレーニング方法を教えよう。さっきも言ったように素振りみたいなものだ。日々の鍛錬が大切だよ。」
アンヌさんはそう言うと両手を前に突き出した。
「今から使う魔法はとても簡単なものだ。手のひらに魔力を集めて、呪文を唱える、これだけ。それじゃあ、お手本を見せよう。【水球】!」
すると、アンヌさんの前方に人の頭くらいの水の塊が現れた。
「これが標準サイズだと考えてくれ。そして、さっきの魔道具に必要なのは・・・【【水球】!」
アンヌさんは一度魔法を消し、再び呪文を唱える。
今度はタマゴくらいの水玉が現れた。
「大体これくらい。とても小さいだろう?と、まあこんな感じで自分の狙った通りの大きさに出来るよう魔力の出力をコントロールする訓練だ。やってごらん。」
俺は見よう見まねで両手を突き出し、魔力を集める。
そして、
「【水球】!・・・わぁ!」
現れたのは馬車が丸ごと入りそうなほど大きな水の塊だった。
俺は初めての魔法に、思わず声を上げて感動してしまった。
「「「「・・・・・」」」」
が、しかし周りは一切の無言である。
あまりの大きさでみんなを驚かせてしまったらしい。
・・・というより、全然制御できてなくて呆れているのかも?
すみません。これでも小さめにしようと制御したつもりだったんです。
と、ここで沈黙を破ったのは、やはりアンヌさんだった。
「アハハハ!やっぱりまだまだ制御はできないみたいだね!まあ、コツコツやっていればできるようになるさ!それにこれだけの魔力、使いこなせれば英雄も夢じゃないさ。」
それからみんなも、称賛(と慰め?)の言葉をくれる。
「はぁ~。ジェフ君、やっぱりあなた、ただ者じゃなかったのね・・・」
「すっげえじゃねぇか!ジェフ!お前ならすぐ制御もできるようになるぜ!きっと。」
「そーそー。どうせ涼しい顔してサラッとやっちゃうよ。ファングボアみたいにさ~。」
若干一名まだ根に持っている人物がいるようだが、まあいいか。
しばらくはこの訓練も朝の日課に加えよう。
「うん!ありがとう!俺、頑張るから!」
そうして、わいわいしている俺たちだったが、ここで唐突にアンヌさんが声を上げた。
「あ!そうだ。」
「どうしたんですか?師匠。」
「ん?ああ、いやね。あれだけの魔力を素早く腕に集めることができるということは、魔力を流すだけであれば問題なくできているということだろう?なら、魔力を身体の中で循環させて発動する身体強化の魔法だったら簡単にできるんじゃないかと思ってね。」
「まあ、あれだけ繰り返しトレーニングしましたからね・・・。」
ミレーヌさんは隣のスクラップ山に目をやる。
つまり、俺の作ったスクラップ山は無駄ではなかったということか!
ちょっと救われた気分です。
「それじゃあ、ジェフ。俺が使ってみせるから、試しにやってみようぜ!」
グレッグはそう言い、少し離れて身体強化の魔法を使った。
「いいか、ジェフ。まず、自分の魔力を全身に流すのをイメージするんだ。それから呪文を唱える。【身体強化】!」
「あれが身体強化の魔法さ。どうだい?」
うん。凄く簡単そうに見える。
俺は一つ深呼吸し、自分の魔力を感じ取る。
腕に流すときの要領で・・・全身に流す!
ようし!それから、
「【身体強化】!」
こ、これは凄いぞ!一瞬で身体が軽くなったような感覚だ!
・・・ただちょっとだけ、アツい。
ほんのすこーしだけ、汗が全身の毛穴から吹き出しているのだ。
まあ、強がらずに言うならば、クッッッソアツいんですけど!
身体中の細胞が活性化し、踊り狂っているようだ。
というか実際にそうなのだろう。
苦悶の表情を浮かべる俺に、アンヌさんが言う。
「あ~言い忘れてたけど、身体強化は体力の消耗が非常に激しいんだ。まあ、今まさに体験しているところだろうけど、全身を活性化させている状態というのは、言わば全力疾走しているようなもの。魔力によってエネルギーを生み出しているから、発動中に筋肉が疲労して動けなくなるということはないが、同時に発生する尋常じゃない熱量が体力を消耗させてしまうんだ。ああ、それと脱水症状には特に注意したほうがいいよ。」
そういうことは先に言ってほしかったです。先生。
汗だくになった俺は、すぐさま身体強化魔法を解除する。
これは使いどころを考える必要がありそうだ。
「まあ、これでジェフも身体強化魔法が無事使えるってことだな!ハハハ!」
ぜぇーはー言っている俺のもとへ、キラッキラの笑顔をした余裕のグレッグが戻ってくる。
年季の違いだろうなぁ、とは思いつつも、爽やかにサムズアップをキメるグレッグが少し憎たらしく思ってしまう。
俺も早く慣れるように頑張ろう!
グレッグには負けられない!
呪文のルビはそれっぽいギリシャ語訳(ぐー〇る先生)です。
あまり気にせずお読みください・・・。




