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転生騎士の英雄譚  作者: 青空
初めての街
34/210

30 三日月亭

話しに聞いていた通り、『三日月亭』は冒険者ギルドの真向いにあった。入り口には三日月の洒落た看板が下がっているので、ここで間違いないだろう。


やはり立地が良いのか、かなり繁盛しているようで、3階建ての大きな宿であった。


部屋が空いているか心配だな・・・まあとりあえず、中に入ってみよう。


俺は両手で宿の扉を開いて中に入った。


『三日月亭』の中は非常に落ち着いた雰囲気だった。


外観から見てもそうだったが、中もやはり綺麗な木造で、所々に配置されている調度品も渋い木目調が目立ち、いい感じに落ち着いた空間を演出している。


なんだかここだけ時間がゆっくり流れているような錯覚に陥りそうだ。


夢の中で見た旅館(?)みたいな感じである。

流石に温泉はないだろうけど。


ざっと内装を眺めた俺は、さっそくフロントに向かう。


フロントには、これまた落ち着いた雰囲気の老男女(夫婦だろうか)が立っていた。よく見るとこの二人、お爺さんのほうは犬型の、お婆さんのほうは猫型の獣人族のようだ。


会ったことも、ましてや行ったこともないけれど、祖父母の家に行ったらこんな感じかもしれないなぁ、なんて想像してみるとちょっと楽しい気分になる。


少し緊張するけど、温かくて落ち着くみたいな。


まあとりあえず、グレッグたちのことを聞いてみよう。


「あ、あの!僕、ジェフって言います!こちらに『銀の風』っていう冒険者パーティーのみなさんが泊っていると聞いていたんですけど。グレッグさんたちは、まだいらっしゃいますか?」


二人は優しそうな笑顔で頷き、


「よくきたねぇ。(お爺さん)」


「話は聞いているよ。(お婆さん)」


「今呼んでくるから。(お爺さん)」


「奥で寛いでいるといい。(お婆さん)」


この二人、まるで示し合わせたかのように完璧なタイミングで交互に話している。


以心伝心?息ぴったりすぎじゃない?

仲が良さそうでなによりです。


「あ、はい!ありがとうございます!」


促されるままお婆さんのあとを付いて、フロント脇の廊下を奥に進んで行くと、そこは食堂のようだった。一本木を加工した長テーブルが3列あり、どれも両側から座れるタイプの卓である。


同じく、一本木から造られている長イスがあるので、どこにでも座れるスタイルだ。俺は入り口に近いほうのテーブルにつき、待つことにした。


すると、先ほどのお婆さんがお盆にお茶菓子を載せて持ってきた。


「・・・」


無言でテーブルにお茶菓子を置いていく。

食べていいのかな・・・


お婆さんのほうを見ると、笑顔で頷いている。

せっかくだし、ありがたく頂こう!


テーブルに置かれていたのは、これまた宿の雰囲気に合う抹茶と豆菓子だった。


ひと口大で、コロコロと可愛らしい見た目と口に入れたときのカリッとした食感が、食べていてとても楽しい気分にさせてくれる。


さらに、甘い豆菓子の後に抹茶を飲むと、その香り立つ風味が程よく甘さを中和してくれ、全く飽きない、どころかいくらでもイケそうだ。無限ループというやつである。


などと、半ば目的を忘れてお茶菓子を本気で楽しんでいた俺だったが、いつの間にか食堂にやってきていた3人に声をかけられ、ようやく我に返った。


「よう!また会えてうれしいぜ、ジェフ!」


「よくきてくれたわね。」


「やっときたね!待ってたよ!」


「俺もみんなにまた会えてうれしいよ!」


南門で別れてから一日しか経っていないのに、なんだかすごく懐かしい気がするのはなんでだろうか。


別れ方のせいかな・・・街に着いたとたんに馬車に乗せられちゃったし。


まあ、なんにせよ、再会できてよかった。


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