3 輪廻転生
・・・気づけば俺は駆け出していた。
なぜそんなことをしたのか全くわからないが、気づいたときには身体が勝手にガキを突き飛ばしていた。直後、途轍もない痛みが襲ってきた。
ああ、これは死んだな。
何千回と繰り返してきたことだ。人間が壊れる方法なんていくらでも知っている。
まあ、なんだ。最後くらい人を助けたっていいだろう。俺の人生は無駄じゃなかったって思いたい。あいつには大きなお世話だったかもしれないが。
「・・・っぐ ひっぐ えっぐ」
あ~うるせえ。
ガキが耳元で泣き喚いていやがる。
泣くな!静かに逝かせろ!
「・・・な・・・く・・な・・・わ・・ら・・え」
お前は俺が命をかけて守ってやったんだ。
泣くんじゃねぇ。俯くんじゃねぇ。ただ笑え。
クソッたれな俺が守った最初で最後の“幸せ”を見せてくれ。
「・・・・・・・・・・・ニコッ」
ガキは何かを察したのか涙ながらに笑った。
ああそれでいい。ありがとうな。
俺は生まれて初めて心から笑えた気がした。
輪廻転生というものがあるらしい。生まれ変わったら今度は“幸せ”な人生がいいな。
そう思いながら静かに目を閉じた。
プロローグ終わりです。